
2023年に性犯罪に関する法律が大きく変わったことをご存知でしょうか。 「強制性交等罪」が「不同意性交等罪」に変更されましたが、名前が変わっただけではありません。
法律は難しく感じるかもしれませんが、現代を生きる私たちにとって大切な変化です。性犯罪に関する法律についても、 新しい制度を知ることで、性的同意についての正しい理解が深まり、日常生活でも役立つ知識が身につきます。
この記事では、不同意性交等罪がどのような制度なのか、従来の法律とどこが違うのか、そして今回の改正で生まれた課題について、法律の専門知識がない方にも分かりやすく説明します。 ぜひ最後までお読みください。
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不同意性交等罪とは?刑法改正で新設された性犯罪

性犯罪に関する社会的な認識が大きく変化する中、2023年の刑法改正により「不同意性交等罪」が新たに創設されました。この改正は、性被害の実態により適切に対応するためのものです。
不同意性交等罪は、刑法第177条において規定される犯罪類型であり、被害者の性的自己決定権を保護することを目的としています。2023年6月23日に公布された刑法改正により、従来の強制性交等罪と準強制性交等罪が統合される形で創設されました。
この新しい犯罪類型では、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という統一的な要件が設けられています。
改正の背景には、従来の「暴行」「脅迫」要件では適切に処罰できないケースがあったという問題意識がありました。性犯罪の本質は「自由な意思決定が困難な状態で行われた性的行為」であるという考えから、より明確で判断にばらつきが生じない規定が必要とされたのです。
性交等に該当する具体的な行為の範囲
不同意性交等罪における「性交等」の定義は、従来よりも大幅に拡大されています。刑法第177条によれば、性交等とは以下の行為を指します。
まず、従来から対象とされていた性交(陰茎の膣への挿入)、肛門性交、口腔性交が含まれます。これらは改正前の強制性交等罪でも処罰対象でした。
今回の改正で新たに加わったのは、膣または肛門に陰茎以外の身体の一部(指など)や物を挿入する行為のうち、わいせつなものです。これらの行為は従来、強制わいせつ罪として処罰されていましたが、被害の重大性を考慮して「性交等」に含められることになりました。
この拡大により、性的暴力の実態により適切に対応できるようになりました。例えば、アダルトグッズなどの物を用いた性的暴力も、不同意性交等罪として重い処罰の対象となります。身体への侵襲性の高い行為について、統一的に重い法定刑を科すことで、被害者保護がより充実することになったといえるでしょう。
2023年7月13日から施行された新しい犯罪類型
不同意性交等罪は、2023年7月13日から施行されています。この日付は、法的安定性の観点から極めて重要な意味を持ちます。
施行日以降に行われた行為については、新たな不同意性交等罪が適用されます。一方、施行日より前の行為については、行為時の法律である旧法(強制性交等罪・準強制性交等罪)が適用されることになります。
これは刑法の大原則である「罪刑法定主義」に基づくものです。法律の遡及適用は原則として認められないため、2023年7月12日以前の行為に対して不同意性交等罪を適用することはできません。
ただし、改正法施行前から継続している事件や、時効が完成していない事件については、経過措置により適切な対応がなされます。
旧法(強制性交罪・準強制性交罪)の時効は10年間であったのに対し、不同意性交等罪の時効は15年間となっていますので、例えば、公訴時効期間の延長については、施行時点で時効が完成していない事件にも適用されるため、より長期間にわたっる公訴時効の延長が適用されることになります。
親告罪ではないため被害届なしでも捜査対象となる
不同意性交等罪の重要な特徴として、非親告罪であることが挙げられます。これは被害者の告訴がなくても、検察官が起訴できることを意味します。
実は、この非親告罪化は2017年の刑法改正で既に実現していました。かつての強姦罪は親告罪でしたが、被害者が告訴するか否かの判断を迫られることが精神的負担になっているという指摘を受け、強制性交等罪の創設時に非親告罪とされたのです。
非親告罪であるということは、第三者からの通報や警察の認知によっても捜査が開始される可能性があるということです。例えば、目撃者からの通報、医療機関からの通報、あるいは警察のパトロール中の発見などをきっかけに捜査が始まることもあります。
ただし、非親告罪であっても、検察官は起訴の判断において被害者の意思を丁寧に確認し、心情に適切に配慮するよう努めています。被害者の処罰意思は、起訴・不起訴の判断において重要な要素として考慮されているのが実情です。
不同意性交等罪と強制性交等罪の主な違い

2023年7月13日、刑法改正により従来の「強制性交等罪」は「不同意性交等罪」へと名称・内容が変更されました。改正の核心は、被害者の「同意のない性交等は犯罪」というメッセージを明確にし、従来の暴行・脅迫要件では立証困難だった事案への対応強化にあります。
新法では、性犯罪の本質を「自由な意思決定が困難な状態で行われた性的行為」と捉え直し、処罰範囲の適正化を図りました。とりわけ被害者保護の観点から、立証のハードルを下げ、より実態に即した処罰が可能となったのです。
暴行・脅迫がなくても処罰対象となる点が最大の変更
旧法である強制性交等罪では、13歳以上の被害者に対しては「暴行又は脅迫」が必須要件とされており、これが立証の大きな壁となっていました。被害者が「反抗を著しく困難ならしめる程度」の暴行・脅迫を受けたことを証明する必要があったのです。
新法の不同意性交等罪では、この要件が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という統一的要件に変更されました。暴行・脅迫は8つの類型の一つとして位置づけられ、それ以外の状況でも処罰対象となる可能性があります。
これにより、従来は「暴行・脅迫の立証が困難」として不起訴となっていた事案でも、より的確な処罰が期待できるようになりました。ただし、処罰範囲の判断は個別事案により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。
同意困難な8つの状況が新たに明文化された
新法では、「同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態」の原因として、以下の8つの類型が法文に明確に列挙されました。
- 暴行・脅迫
- 心身の障害
- アルコール・薬物の影響
- 睡眠等の意識不明瞭状態
- 同意判断の時間的余裕がない状況
- 恐怖・驚愕状態
- 虐待による心理的反応
- 経済的・社会的地位による影響力
従来の法律では、これらの状況は判例や解釈によって個別に判断されており、裁判官の経験則によって結論が左右される傾向がありました。明文化により、これまでよりも適用範囲が広がったことと合わせて、どのような状況が処罰対象となるかの予測可能性が大幅に向上したといえます。
ただし、8つの類型に該当しない場合でも「その他これらに類する行為又は事由」により不同意性交等罪が成立する可能性があり、個別事案での慎重な検討が必要とされています。一般的な解説の範囲を超える具体的な判断については、弁護士にご相談ください。
性的同意年齢が13歳から16歳に引き上げられた
性的同意年齢の定義について、改正前は13歳未満の者との性交等が一律に処罰対象でしたが、新法では16歳未満へと年齢要件が引き上げられました。
これは13歳以上16歳未満の中学生くらいの年代について、「行為の性的意味を認識する能力」は備わっているものの、「相手との関係でその行為が自分に与える影響を自律的に考え対処する能力」が十分でないと判断されたためです。
また、13歳以上16歳未満の者に対しては、刑罰の謙抑性の観点から5歳以上の年齢差がある場合に限って処罰されます。これは、絶対に対等な関係があり得ないといえる年長者による行為を一律に処罰するという考え方に基づいています。
ただし、13歳以上16歳未満の方と年齢差が5歳未満である年長者との関係が常に対等だという意味ではありません。例えば、18歳の成年と14歳の中学生の間で性的行為が行われた場合でも、それが、「社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させ」たり、「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させ」たりして、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせ、あるいはそのような状態にあることに乗じて、性的行為をしたものであれば、不同意性交等罪として処罰対象となり得ます。
この改正により、従来は各都道府県の青少年健全育成条例違反として処理されていた事案も、より重い不同意性交等罪として処罰される可能性があります。
不同意性交等罪における問題点と実務上の課題

刑法改正により不同意性交等罪が施行された一方で、法運用上の課題が指摘されています。改正により処罰範囲が拡大され被害者保護が強化されたものの、構成要件の解釈や立証の困難性、冤罪リスクなどの実務的問題が残存しているのが現状です。
とりわけ、8つの類型には主観的要件が含まれており、事案によって解釈・適用にばらつきが生じる可能性が懸念されています。
また、性犯罪の特性上、密室で行われることが多いため客観的証拠の収集が困難であり、被害者の供述に依存する部分が大きいことも課題となっています。個別の事案については弁護士にご相談ください。
同意の有無を客観的に証明することの困難性
不同意性交等罪の最大の課題は、同意の有無を客観的に証明することの困難性にあります。性行為は通常、ホテルや住居、カラオケボックスなどの密室で行われるため、監視カメラの映像や目撃者の証言といった直接的な証拠を得ることが極めて困難な特性があります。
このため、捜査機関は被害者の供述を裏付ける間接証拠の収集に力を注がざるを得ません。一般的に活用される証拠としては、事件前後の防犯カメラ映像、LINE等のメッセージのやり取り、医師の診断書や被害者の精神状態を示すもの、第三者の証言などが挙げられます。しかし、これらの証拠だけでは同意の有無を明確に立証できない場合が少なくありません。
供述の信用性判断も重要な要素となりますが、密室での出来事である以上、当事者の主張が対立した際の真偽の判断は困難を極めます。被害者の供述内容に一貫性があるか、客観的事実と整合するかなどが検討されますが、最終的な判断は個別事案の総合的な評価に委ねられることになります。
冤罪リスクと被害者保護のバランスという課題
不同意性交等罪では、従来の暴行・脅迫要件が緩和されたことで処罰範囲が拡大しましたが、その結果として冤罪リスクの増大が指摘されています。とりわけ「アルコールの影響」や「社会的地位による影響力」などの類型では、どの程度の状況で構成要件を満たすかが不明確であり、事案によって判断が分かれる可能性があります。
一方で、被害者保護の観点からは、従来処罰困難だった事案への対応強化は重要な意義を持ちます。地位・関係性を利用した性犯罪や、恐怖により身体が硬直する「フリーズ状態」での被害など、実際の被害実態に即した処罰が可能となったためです。しかし、この両者のバランスをどう取るかは法運用上の重要な課題となっています。
こうしたジレンマを踏まえ、捜査・公判実務では慎重な運用が求められています。検察官は起訴の判断において、被害者の供述を裏付ける客観的証拠の存在を重視し、合理的疑いを超える立証が可能かを慎重に検討することになります。そのため個別事案の具体的な判断については、必ず弁護士にご相談ください。
夫婦間やカップル間でも成立する可能性がある点
改正法では「婚姻関係の有無にかかわらず」との文言が明記され、配偶者間でも不同意性交等罪が成立することが明確化されました。
従来の強制性交等罪においても法理論上は成立し得るとされていましたが、実務上は「夫婦間の問題」として被害届が受理されないケースが多かったため、この点を確認的に明示したものです。
恋人関係や婚約者間についても同様で、親密な関係にあるからといって性行為への同意が常に推定されるわけではありません。体調不良で拒否しているにもかかわらず強要した場合や、酩酊状態に乗じて性行為に及んだ場合などは処罰対象となり得ます。重要なのは、関係性ではなく個別具体的な状況における同意の有無です。
ただし、継続的な関係における同意の判断は複雑な側面があります。夫婦間での性交渉は自然な営みとされ、長期間の拒絶は場合によって離婚原因ともなり得るため、同意の立証は一般的なケースより困難とされています。
不同意性交等罪が成立する3つの構成要件を詳しく解説

「不同意性交等罪」が創設された刑法改正は、性犯罪に対する処罰の実効性を高めることを目的としており、同意のない性行為に対する法的対応がより明確化されています。
不同意性交等罪は、被害者が性的行為に同意できない状況や同意する能力がない状況において性交等を行った場合に成立する重大な犯罪です。法定刑は5年以上の有期拘禁刑と定められており、執行猶予が困難な重罪として位置づけられています。
不同意性交等罪の構成要件は、大きく3つの類型に分類されます。
- 同意困難な状態にある被害者への性交等
- わいせつ行為ではないと誤信させる・人違いによる性交等
- 16歳未満の者との性交等
これらの構成要件は相互に独立しており、いずれか一つでも該当すれば犯罪が成立する可能性があります。法改正により処罰範囲が明確化され、従来は曖昧だった事案についても適切な処罰が可能となりました。
同意困難な状態にある被害者への性交等(8つの類型)
不同意性交等罪における最も重要な構成要件が、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にある場合の性交等です。この状態を引き起こす原因として、法律では先に述べた8つの具体的な類型が例示されています。
「同意しない意思を形成することが困難な状態」とは、性的行為をするかどうかを考えたり決めたりする能力が不足している状態を指します。「表明することが困難な状態」は、嫌だという意思はあっても外部に表すことが難しい状態です。「全うすることが困難な状態」は、拒否の意思を表明できても、その意思通りにならない状態を意味しています。
これらの類型に該当する場合、被害者の同意があったように見えても、真の同意とは認められず、不同意性交等罪が成立する可能性があります。複数の類型が重なる場合もあり、個別の事案ごとに慎重な判断が必要とされます。
アルコールや薬物の影響下での行為
アルコールや薬物による影響は、不同意性交等罪の重要な構成要件の一つです。「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること」により、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態になった場合に適用されます。
アルコールや薬物の「摂取」とは、飲酒や薬物の投与・服用を指し、意図的に摂取させた場合だけでなく、その影響がある状態に乗じた場合も含まれます。重要なのは、どの程度の摂取量で同意困難な状態になるかという判断基準です。
自ら摂取した場合と他者に摂取させられた場合では、法的な評価が異なる可能性があります。他者に無理やり摂取させた場合は悪質性が高く、より重く処罰される傾向にあります。一方、自ら摂取した場合でも、その影響で正常な判断能力を失っている状態を利用した性交等は処罰対象となります。
地位関係を利用した場合の該当性
経済的・社会的地位に基づく影響力を利用した性交等も、不同意性交等罪の構成要件として明確に規定されています。8つの類型の内、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」が該当します。
具体的な地位関係としては、上司と部下、教師と生徒、祖父母と孫、医師と患者、監督と選手など、権力や影響力に格差がある関係が挙げられます。これらの関係では、立場の弱い側が拒否した場合に不利益を被ることを恐れ、真の同意ができない状況が生じやすくなります。
地位利用の該当性は、関係の性質、権力の格差の程度、具体的な影響力の行使、被害者が感じた不利益への懸念などを総合的に判断します。直接的な脅迫がなくても、地位関係から生じる心理的圧迫によって同意が困難な状態であれば、犯罪が成立する可能性があります。
一般的な判断基準として、経済的関係では雇用関係、取引関係、金銭貸借関係などが、社会的関係では家族関係、師弟関係、指導関係などが考慮されます。重要なのは、被害者が地位関係による不利益を現実的に憂慮していたかどうかという点です。
わいせつ行為ではないと誤信させる・人違いによる性交等
不同意性交等罪の第二の構成要件として、「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて」性交等を行った場合が規定されています。
わいせつ行為ではないとの誤信を生じさせる典型例には、医療行為と偽って身体に触れる行為、マッサージと称して性的部位に接触する行為、宗教的儀式であると説明して性的行為を行う行為などがあります。被害者の性的無知や専門知識の不足を利用した悪質な手口が該当します。
人違いによる性交等とは、暗闇や消灯状態を利用して恋人や配偶者になりすまして性行為を行う場合、睡眠中の被害者が配偶者と誤認している状態を利用する場合、意図的に身元を偽って性的関係を持つ場合などが該当します。
これらの欺罔・錯誤による同意は、真の同意とは認められません。被害者が事実を知っていれば同意しなかったであろう状況での性交等は、被害者の性的自己決定権を侵害する行為として処罰されます。重要なのは、被害者の錯誤が性的行為の本質的部分に関わるものかどうかという点です。
16歳未満の者との性交等(5歳以上の年齢差がある場合)
性交同意年齢の引き上げにより、16歳未満の者との性交等は原則として不同意性交等罪が成立します。ただし、13歳以上16歳未満の場合は、行為者が5歳以上年長である場合に限定されています。
13歳未満の者との性交等は、年齢差に関係なく一律に処罰されます。これは、13歳未満の子どもには「行為の性的意味を認識する能力」が十分に備わっていないと考えられるためです。そのため、どのような状況であっても真の同意は不可能とされています。
13歳以上16歳未満の者については、「行為の相手との関係で、その行為が自分に与える影響について自律的に考えて理解し、その結果に基づいて相手に対処する能力」が十分でないとされています。5歳以上の年齢差要件は、絶対に対等な関係があり得ないといえる場合を一律に処罰対象とするためです。
年齢確認の重要性も強調されています。相手が年齢を偽っていた場合でも、年齢確認を怠った場合は責任を問われる可能性があります。特にSNSなどで知り合った相手については、公的な証明による年齢確認が重要です。
不同意性交等罪の法定刑は5年以上の拘禁刑という重罰

不同意性交等罪はなぜこれほど重い刑罰が科せられるのでしょうか。不同意性交等罪は、従来の懲役刑から拘禁刑へと刑種が変更され、法定刑は5年以上20年以下とされました。法定刑の期間としては改正前の強制性交等罪と同じですが、強姦罪時代の3年以上20年以下から大幅に引き上げられました。
拘禁刑は2025年6月に施行された新しい刑罰で、従来の懲役と禁錮を一本化し、受刑者の改善更生のために必要な作業や指導を柔軟に実施できる仕組みとなっています。
量刑判断では、犯行の手口や悪質性、被害の重大性、被害者との示談の有無、犯人の反省の程度などが総合的に考慮されます。
執行猶予がつかない理由と実刑の可能性
不同意性交等罪が実刑になりやすいのには明確な理由があります。執行猶予が認められるのは「3年以下の拘禁刑」に限られているためです。不同意性交等罪の法定刑は5年以上であるため、原則として執行猶予をつけることができません。
ただし、例外的に刑の減軽が認められた場合には、執行猶予の可能性が生まれます。酌量減軽により法定刑が2年6ヶ月以上10年以下に減軽されれば、3年以下の判決であれば執行猶予がつく可能性があります。
しかし、法務省のデータによると、不同意性交等罪(旧強制性交等罪・準強制性交等罪)で執行猶予が付く割合は約20%にとどまっています。減軽された事件に限定すると70%以上で執行猶予が認められているものの、減軽されること自体が困難です。
参照:法務省「平成29年刑法改正後の規定の施行状況についての調査結果」
公訴時効が15年に延長された背景と意味
性犯罪の公訴時効延長には深刻な社会問題への対応という背景があります。不同意性交等罪の公訴時効は、従来の10年から15年へと5年延長されました。
法務省の説明によれば、性犯罪は「恥ずかしいことだという感情や自分が悪いという感情により被害申告が難しい」「被害者の周りの人たちも被害に気付きにくい」という特性があり、他の犯罪と比べて被害が表に出にくいとされています。
この延長により、刑事訴追が事実上可能になる前に公訴時効が完成してしまう不当な事態を回避し、適切な訴追の可能性を確保することが目的とされました。さらに、被害者が18歳未満の場合には、犯罪終了時から被害者が18歳になる日までの期間が加算されます。
公訴時効は犯罪行為が終了した時点から起算されます。例えば、12歳の被害者の場合、15年の公訴時効期間に18歳になるまでの6年が加算され、被害者が33歳に達する日まで時効が完成しないことになります。この改正は2023年6月23日に施行され、施行時点で時効が完成していない事件については延長された時効期間が適用されています。
不同意性交等罪で逮捕された場合の刑事手続きの流れ

不同意性交等罪で逮捕されると、どのような手続きが待っているのでしょうか。逮捕から判決確定まで、被疑者・被告人には長期間にわたる刑事手続きが課せられます。
逮捕されると最長で23日間の身柄拘束を受け、その間に起訴・不起訴が決定されるのです。起訴率は約3割とされていますが、逮捕事件では起訴される可能性がより高くなります。手続きの全体像を理解しておくことで、適切な対応が可能になるでしょう。
逮捕から48時間以内の警察段階での取り調べ
不同意性交等罪で逮捕されると、警察は48時間以内に被疑者を釈放するか検察官に送致するかを決定しなければなりません。この48時間は警察段階の取り調べ期間となります。
逮捕された被疑者には黙秘権が保障されており、取り調べで不利な供述を強要されることはありません。また、弁護人選任権も認められており、逮捕直後から弁護士に接見を依頼することができます。弁護士は被疑者にとって唯一面会可能な外部の人間であり、取り調べ対応のアドバイスを受けることが重要です。
この初動48時間での対応が、その後の勾留請求や起訴・不起訴の判断に大きく影響することもあります。供述調書の作成に際しては、事実と異なる内容に署名しないよう注意が必要です。弁護士を通じて家族への連絡や勤務先への対応も検討できるため、早期の弁護人選任が推奨されます。
検察官による勾留請求と起訴・不起訴の判断基準
警察から送致された事件について、検察官は24時間以内(逮捕から72時間以内)に勾留請求するか釈放するかを判断します。勾留が認められると原則10日間、延長された場合は最大20日間の身柄拘束が続きます。
勾留の要件は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、証拠隠滅や逃亡のおそれがあることです。不同意性交等罪の場合、重大な犯罪であることから勾留される可能性が高いとされています。
起訴・不起訴の判断は、証拠の十分性だけでなく、被疑者の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、犯罪後の情況などを総合的に考慮して行われます。
不同意性交等罪の不起訴率は約60%とされており、被害者との示談成立が不起訴処分獲得の重要な要素となります。一方、起訴されれば執行猶予の獲得は困難であり、実刑判決を受ける可能性が高くなります。
参照:2023年版検察統計年報「罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員」
刑事裁判での争点となる同意の立証責任
不同意性交等罪の刑事裁判では、「同意の不存在」が重要な争点となります。刑事事件における立証責任は検察官側が負うため、検察官が合理的な疑いを入れない程度まで同意がなかったことを立証する必要があります。
検察官が性行為に対する不同意の立証責任を負うからといって、被疑者・被告人側が何もしなくていいというわけではありません。性行為に対して相手方の同意があったことを証明できる証拠を用意すれば、刑事手続きを有利に進めやすくなるでしょう。
被告人側は密室の出来事であることも多く、自分の無実の立証が困難な場合も少なくありませんが、裁判では「疑わしきは被告人の利益に」の原則が適用されます。同意の有無は当事者の内心の問題であるため、客観的証拠による立証が重要となります。
検察官は被害者の供述を中心に、防犯カメラの映像、メールやSNSのやり取り、第三者の目撃証言などの客観的証拠を収集して立証を行います。
不同意性交等罪の容疑をかけられた際の対処法

不同意性交等罪の容疑をかけられた場合、初期対応が極めて重要となります。不同意性交等罪は5年以上の拘禁刑という重い刑罰が定められており、逮捕・勾留される可能性が非常に高いのが現状です。
早期の適切な対応により、在宅捜査への移行や不起訴処分の獲得など、有利な結果を得られる可能性があります。一方で、対応を誤ると長期の身柄拘束や実刑判決といった深刻な結果を招く恐れがあるでしょう。
不同意性交等罪の容疑がかけられた場合の4つのデメリット
不同意性交等罪の容疑がかけられると、様々な支障が生じます。考えられる4つのデメリットについて説明します。
逮捕されることで一定期間身柄が拘束される
不同意性交等罪の容疑がかけられると、逮捕・勾留されることで強制的に一定期間身柄が拘束されてしまいます。その期間は社会生活から完全に隔離されることになります。
仮に不起訴処分を引き出したとしても、公訴提起判断までの数週間は身柄拘束され、通常の生活を送ることはできなくなります。留置所生活により、心身への過度なストレスも生じかねません。
刑事事件を起こした事実が学校や会社にバレるリスクがある
長期間身柄が拘束されることにより、その間は学校や会社に出ることができません。無断欠席や無断欠勤により、刑事事件を起こしたことが学校や会社にバレる可能性が高くなります。
もし不同意性交等罪で逮捕された事実が発覚すると、何等かの処分を下されることもあります。たとえば、通学している学校の校則の内容次第では、退学、停学、訓告などの処分の対象となるでしょう。
また、勤務先の就業規則の懲戒規程に抵触することで、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇といった懲戒処分が下される可能性も高くなります。
これらの処分が下されると、以後の人生設計や生活そのものに大きな悪影響を与えることになります。
有罪になると前科がつく
起訴され裁判で有罪になると、刑事罰が科されるだけではなく、前科によるデメリットが生じます。前科がつくことで、以後の社会生活に次のような支障が生じるでしょう。
- 就職活動・転職活動が成功しにくくなる
(前科を隠して就職した場合、発覚すると経歴詐称を理由に懲戒処分が下されることもある) - 希望する資格取得が困難になる
- 配偶者から離婚を求められると拒否できず、慰謝料、親権、面会交流権などの離婚条件も不利になる
(前科は法廷離婚事由に該当するため) - ビザ・パスポートが発給されず、海外旅行や海外出張に制限が加えられる可能性がある
- 前科がある状態で再犯に及ぶと、重い刑事処分が下される可能性が高い
実名報道されるリスクがある
刑事事件でも、以下のような要素がある場合、報道機関に実名報道される可能性が高くなります。
- 社会的関心の高いトピックに関する刑事事件
- 被害が甚大な刑事事件
- 被疑者が逮捕された刑事事件
- 被疑者が著名人の場合
最近は性犯罪に対する社会的関心が高くなっていますので、不同意性交等罪で逮捕された場合、実名報道される可能性も高くなります。その結果、家族や周囲の方に事実が発覚してしまいます。
また一番怖いのは、個人情報が特定されることで、SNSにより拡散されるリスクです。インターネット上では性犯罪を起こした事実が残りますので、以後の人生に大きな影を落とす結果となります。
被害者との示談交渉を早期に開始する重要性
被害者との示談成立は、不同意性交等罪の処分に大きな影響を与える要素です。検察官は起訴・不起訴の判断において被害者の意向を重視する傾向があり、示談が成立していれば不起訴処分となる可能性が高くなります。
示談交渉は必ず弁護士を通じて行う必要があります。被害者は加害者との直接接触を拒む場合が多く、警察や検察も被害者の心情に配慮して加害者に連絡先を教えません。弁護士であれば捜査機関を介して被害者の連絡先を教えてもらえる可能性があります。
一般的な示談金は100万円から300万円程度とされていますが、事案の内容や被害者の被害感情により大きく変動します。示談交渉では金銭的な解決だけでなく、被害者への謝罪と反省の気持ちを誠実に伝えることが重要でしょう。
自首による刑の減軽を検討すべきケース
自首が成立すると、刑法第42条により刑の任意的減軽が可能となります。これは裁判官の裁量で刑を軽くできるという制度で、不同意性交等罪の重い法定刑を考えると重視すべきものと言えます。
自首が成立するには、捜査機関が事件や犯人を特定する前に、自発的に罪を申告し、処分に服する意思を示すことが必要です。すでに警察が容疑者を特定している段階での出頭は、単なる「出頭」となり自首の効果は得られません。
自首を検討すべきケースとして、捜査が本格化する前の段階や、事件の発覚前に良心の呵責を感じている場合などが挙げられます。ただし、自首により逮捕されるリスクもあるため、事前に弁護士と相談し、自首のタイミングや方法を慎重に検討することが重要です。
弁護士への相談が必須である理由と選び方
不同意性交等罪は法律の専門知識を要する複雑な犯罪類型であり、適切な弁護活動なしに有利な結果を得ることは困難です。早期の弁護士相談により、取り調べ対応から示談交渉、保釈請求まで包括的なサポートを受けることができます。
刑事事件に強い弁護士を選ぶ際は、性犯罪事件の実績と経験を重視しましょう。被害者の心情に配慮しながら示談交渉を進める技術や、不同意性交等罪の構成要件を熟知していることが重要です。初回相談で事件の見通しや弁護方針を明確に説明してくれる弁護士を選ぶべきでしょう。
国選弁護人と私選弁護人の違いも理解しておく必要があります。国選弁護人は費用負担が軽い一方、勾留後でなければ選任されず、弁護士を選ぶこともできません。私選弁護人は逮捕前から選任でき、専門性の高い弁護士に依頼できる利点があります。重大な事案では私選弁護人の選任を検討することをお勧めいたします。
不同意性交等罪の容疑をかけられたときに弁護士に相談する4つのメリット
不同意性交等罪の容疑をかけられたときには、できるだけ早いタイミングで刑事事件を得意とする弁護士に相談・依頼を行うようにしましょう。その理由は以下の4点です。
示談交渉を進めてくれる
刑事事件を起こしたときには、できるだけ早いタイミングで被害者との間で示談交渉を開始し、和解契約を締結するのが重要です。
- 警察に発覚する前に示談成立→刑事事件化自体を回避できる
- 示談成立によって、逮捕された場合でも不起訴処分獲得の可能性が高まる
- 検察官に起訴処分を下された場合でも、示談成立によって執行猶予付き判決獲得の可能性が高まる
加害者本人やその家族が被害者との間で直接示談交渉をおこなうことも可能です。ただし、不同意性交等罪などの性犯罪では、加害者が直接、被害者と交渉するのは非常に難しいです。
連絡先を入手すること自体難しく、被害者心理からすれば、恐怖を覚えることも少なくないでしょう。そのため示談交渉は弁護士に代理してもらうのが適切です。
怒りや不安を覚えている被害者も、弁護士相手なら冷静に話し合いに応じてくれる可能性が高くなります。その結果、素早い示談成立も可能になり、相場どおりの示談条件での合意形成も期待できます。
客観的証拠を整えてくれる
不同意性交等罪などの性犯罪では「性行為に対して同意がなかったこと」の立証責任は検察官が負います。しかし実際には、被害者側からの「性行為に同意をしていなかった」という証言だけ、不同意性交等罪の容疑をかけられるケースが少なくありません。
このような「いったもん勝ち」にならないためには、客観的証拠を示して「性行為に同意があった(不同意ではなかった)旨を主張していく必要があります。
執行猶予付き判決獲得を目指してくれる
不同意性交等罪などの容疑で起訴された場合には、刑事裁判で執行猶予付き判決獲得を目指すことになります。
執行猶予付き判決を獲得するには、「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」という要件を満たさなければいけません。しかし不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」です。
つまり、酌量減軽や自首減軽などの法的措置を尽くして、5年以上→3年以下を確保しなければ、執行猶予付き判決を獲得できないということです。
執行猶予が付くかどうかは、示談の成立、再犯のリスク、反省態度など諸般の事情が総合的に考慮されます。刑事裁判が得意な弁護士であれば、執行猶予付き判決の判断を引き出すための経験も豊富です。
性依存症などの疾患のケアに向けたサポートを期待できる
性犯罪の容疑者の中には、性依存症などの精神疾患を抱えている方も少なくありません。その場合、根本的な性依存症などの問題を解決しなければ、不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得できたとしても、再犯に及んで重い刑事処分を科される可能性もあります。
性犯罪に強い弁護士であれば、精神疾患ケアを行うカウンセラーやNPO法人、医療機関などにも強いパイプを有している先もあります。そのような機関からの支援を受けることで、精神疾患を完治し、本当の意味での社会復帰・更生を目指すことが可能になります。
不同意性交等罪を防ぐために知っておくべき注意点

2023年7月に施行された不同意性交等罪では、性行為における同意の重要性が法的に明確化されました。現代社会では、相手の意思を尊重しない行為が犯罪として処罰される可能性があります。
日常生活において犯罪に該当しないためには、相手との関係性や状況を慎重に判断し、適切な行動を心がけることが重要です。
特に、相手が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にある場合は、性的行為を控える必要があります。これらの予防的知識を身につけることで、不要なトラブルを避けることができるでしょう。
明確な同意を得るための具体的な確認方法
性的行為における同意確認は、言語的・非言語的な両方の方法で行うことが推奨されています。まず言語的確認として、「今日はどう?」「大丈夫?」といった直接的な問いかけや、相手の気持ちを尊重する姿勢を示すことが大切です。
非言語的な確認では、相手の表情、身体の緊張、反応の変化を注意深く観察します。ただし、ボディランゲージは誤解を招く可能性があるため、明確な言語によるコミュニケーションを最優先とすべきです。
重要なのは、同意は一度得られても途中で撤回される可能性があることを理解することです。また、恋人や夫婦であっても、毎回の行為について相手の意思を確認することが求められます。相手が拒否した場合は、理由を問い詰めたり、圧力をかけたりせず、その意思を尊重することが基本原則となります。
飲酒を伴う場面での性的行為のリスクと対策
アルコールの影響により判断能力が低下した状態での性的行為は、不同意性交等罪に該当する可能性があります。不同意性交等罪の構成要件である8つの類型でも「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること」が、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態の原因として明示されています。
泥酔者との性的行為は特に危険性が高く、相手が意識を失っていたり、正常な判断ができない状態での行為は犯罪行為とみなされます。飲酒時の適切な判断基準として、相手が自分の意思を明確に表現できる状態かどうかを慎重に見極める必要があります。
対策として、飲酒を伴う場面では特に慎重になり、相手の状態を客観的に判断することが重要です。少しでも相手の同意に疑問がある場合は、行為を控えることが賢明です。なお、アルコールの影響度は個人差があるため、一律の基準はありませんが、安全を最優先に考える姿勢が求められます。
SNSやマッチングアプリでの出会いにおける留意事項
SNSやマッチングアプリでの出会いには特有のリスクが存在します。最も重要なのは年齢確認であり、相手が16歳未満の場合、性的同意年齢の適用外であることから、不同意性交等罪が成立する可能性が高くなります。また、13歳以上16歳未満の場合でも、5歳以上年上の相手との性的行為は不同意性交等罪の対象となります。
初対面での性的関係には慎重になる必要があります。相手の素性や背景を十分に確認せずに性的関係を持つことは、美人局や詐欺の被害に遭うリスクを高めます。また、デジタル証拠が残ることを認識し、メッセージのやり取りは慎重に行うべきです。
対策として、身分証明書による年齢確認を徹底し、初回は公共の場で会うことを心がけましょう。性的関係に至る前に、相手との信頼関係を十分に築くことが重要です。また、やり取りの記録は証拠として残る可能性があることを念頭に置き、適切なコミュニケーションを心がける必要があります。
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