2026/10/13 コラム
傷害罪と暴行罪はどう違う?被害届を出した場合に起こること
傷害事件に関するニュースを見て、「傷害罪と暴行罪は何が違うの?」「被害届を出すと相手はどうなるの?」と気になった方もいるのではないでしょうか。
人を殴る、押す、物を投げつけるといった行為は、状況によって傷害罪または暴行罪に該当する可能性があります。両者の大きな違いは、相手に「けがや健康への影響が生じたか」どうかです。
また、被害届を出した場合には、警察による事情聴取や証拠の確認が行われることがあります。一方で、被害届を出したからといって、必ず相手が逮捕・起訴されるわけではありません。
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【目次】 |
傷害罪と暴行罪の違いは「けが・健康への影響」の有無

傷害罪と暴行罪は、どちらも人に対して暴力を振るった場面で問題になり得る犯罪です。両者を分ける主なポイントは、行為によって相手にけがや健康への影響が生じたかどうかにあります。
同じように相手を押した・叩いたケースでも、結果次第で罪名が変わることがあります。
・傷害罪とは
傷害罪は、人の身体を傷害した場合に成立する可能性がある犯罪です(刑法204条)。法定刑は、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
ここでいう「傷害」は、骨折や出血など、目に見えるけがだけを指すわけではありません。たとえば、殴られたことで痛み、腫れ、打撲、捻挫などが生じた場合にも、傷害罪が問題となることがあります。
また、精神面への影響であっても、医師の診断を要する精神疾患など、身体の生理的機能に支障が生じたと認められる場合には、傷害に当たり得ます。もっとも、単に怖い思いをした、腹が立ったというだけで、直ちに傷害罪が成立するわけではありません。
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傷害罪に当たるかどうかは、個別に判断されます。判断は、診断書の内容・症状の程度・暴力の態様・行為と症状との関係を踏まえて行われます。
・暴行罪とは
暴行罪は、人の身体に対して不法な有形力を加えたものの、傷害の結果が認められない場合に問題となる犯罪です(刑法208条)。法定刑は、2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料です。
たとえば、相手を突き飛ばす、胸ぐらをつかむ、平手でたたくといった行為は、けががなくても暴行罪に該当する可能性があります。
ただし、当初は軽い行為に見えても、後に痛みや打撲が生じることがあります。 その場合、暴行罪ではなく傷害罪が適用されることがあります。
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傷害・暴行の被害に遭ったとき、被害届を出すとどうなる?

傷害や暴行の被害に遭った場合、被害届を出すことで、警察に被害の事実を伝え、対応を相談できます。ただし、被害届を出したことのみを理由に、必ず相手が逮捕・起訴されるわけではありません。
傷害事件では、まず受診記録や診断書を確保する
殴られた、突き飛ばされて転倒したなど、けがや痛みがある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
診断書や診療記録は、けがの内容や受診時点での症状を示す資料になり得ます。外見上目立つ傷がなくても、痛み、腫れ、しびれなどが続くときは、無理をせず受診しましょう。
なお、診断書があれば直ちに傷害罪が成立するわけではありません。行為の内容と症状との関係を含め、具体的な事情に応じて判断されます。
被害の状況を示す資料を残しておく
警察へ相談するか迷っている段階でも、後から状況を説明できるよう、資料を保存しておくとよいでしょう。
- けが、現場、破損した物や衣服などの写真
- 受診記録・診断書
- 事件前後のLINE・DM・通話履歴・録音
- 防犯カメラがありそうな場所と時間のメモ
- 目撃者の氏名や連絡先
- 日時、場所、相手の行為、症状、その後のやり取りを記したメモ
特に、防犯カメラの映像は保存期間が短い場合があります。場所や日時をできる限り正確に記録しておくことが重要です。
被害届を出した後は、事情や資料の確認が行われることがある
被害届を出した後、警察から被害の経緯について説明を求められたり、診断書や写真、メッセージ履歴などの提出を求められたりすることがあります。必要に応じて、相手方や目撃者からも話を聞き、捜査が進められます。
その後の捜査や処分は、けがの程度、証拠の内容、当事者双方の説明などを踏まえて判断されます。被害届が受理された後も、個別の事情によって対応や進み方は異なります。
被害届が受理されない・受理後に進展が見えない場合
警察への相談や被害届の提出を検討していても、受理されない、または受理後の状況が分からず不安になることがあります。このような場合の対応や、告訴を検討する場面については、こちらの記事をご覧ください。
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被害届を出さなかったら、傷害事件はどうなる?

被害届を出すかどうかは、被害に遭った方が置かれた状況や気持ちによって異なります。相手と関わりたくない、今は警察への相談をためらっている、被害届を出すほどでもないと感じることもあるでしょう。
もっとも、被害届を出さない場合にも、知っておきたい点があります。
被害届を出さなくても、事件化や処罰の可能性がなくなるとは限らない
傷害罪と暴行罪は、いずれも原則として親告罪ではありません。親告罪とは、被害者などによる告訴がなければ起訴できない犯罪のことです。
そのため、被害届を出していないことや、被害者が処罰を望まないと伝えていることだけで、捜査や刑事手続が必ず終了するわけではありません。たとえば、周囲からの通報、防犯カメラ映像、目撃者の話などをきっかけに、警察が事件を把握することもあります。
なお、報道で取り上げられるような事件では、被害届の有無にかかわらず、警察が通報、目撃者の証言、防犯カメラ映像などを通じて犯罪の疑いを把握していることがあります。特に、けがが重い場合や、公共の場で起きた事件、複数の人が関係する事件などでは、被害者が被害届を出していないことだけで捜査が行われなくなるとはいえません。
また、報道されたこと自体が、相手の処罰を決めるものでもありません。捜査機関は、報道内容ではなく、関係者の供述や客観的な証拠を踏まえて事実関係を判断します。
被害者の意向や示談は、処分を判断する際の事情になり得る
被害者がどのような意向を持っているか、被害がどの程度回復されているかは、事件の処分や裁判で考慮される事情になり得ます。
具体的には、次のような事情が検討されます。
- 被害届が提出されているか
- 被害者が処罰を望んでいるか
- 治療費などの被害弁償が行われたか
- 示談が成立しているか
- けがの程度や事件の態様
- 加害者とされる人の前科・前歴や反省の状況
検察官は、犯罪の軽重、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪後の状況などを考慮し、起訴しないことが相当と判断すれば不起訴処分にできます(刑事訴訟法248条)。
ただし、示談が成立したからといって必ず不起訴になるわけではありません。また、被害届を出さなければ必ず事件にならない、ともいえません。
被害届を出さない場合も、記録や資料は残しておく
今は被害届を出さないと決めた場合でも、後から警察や弁護士へ相談する可能性があります。受診記録や診断書、けがの写真、相手とのやり取りなどは、できる限り保存しておきましょう。
相手から謝罪や示談の申し入れがあった場合も、その場で急いで結論を出す必要はありません。内容に不安があるときや、直接のやり取りが負担になるときは、弁護士への相談を検討しましょう。
傷害罪の加害者とされる側が早めに検討すべき対応

傷害・暴行事件では、早い段階での対応が、その後の手続や被害者との関係に影響することがあります。もっとも、事実関係に争いがある場合や、相手方と接触してよいか分からない場合は、自己判断で行動しないことが大切です。
相手方へ繰り返し直接連絡しない
謝罪や被害弁償の意向があっても、何度も電話やメッセージを送ったり、自宅・勤務先を訪ねたりすることは避けるべきです。被害者にとっては、謝罪ではなく圧力や恐怖と受け止められるおそれがあります。
接触禁止の条件がある場合や、DV・ストーカーなどの事情がある場合には、特に慎重な対応が必要です。相手方への連絡や示談の申し入れは、弁護士を通じて行うことが適切なケースもあります。
示談では、被害の回復と被害者の意思を大切にする
示談を検討する場合は、被害者の意思を尊重しながら進める必要があります。金額だけでなく、治療費、通院交通費、休業による損害など、具体的な被害内容を踏まえて検討することが重要です。
また、示談書には、支払内容、連絡方法、清算の範囲などを明確に定める必要があります。内容によっては、後の民事上の請求や刑事手続にも影響し得るため、安易に作成・署名しないようにしましょう。
事実関係と客観的な資料を整理する
相手方の主張と認識が異なる場合でも、SNSで事件について発信したり、関係者と口裏を合わせたりすることは避けるべきです。
当時のやり取り、現場の状況、目撃者の有無、防犯カメラ映像の可能性など、客観的な資料を整理しましょう。飲酒などで記憶が曖昧な場合も、推測で説明を作るのではなく、分かる事実と分からない点を区別して対応することが大切です。
傷害・暴行トラブルは早い段階で弁護士に相談を
傷害・暴行トラブルでは、被害を受けた側と、加害者とされる側のいずれにとっても、初期対応が重要になります。けがの程度、当事者の説明、証拠の内容、相手方との関係などによって、必要な対応は異なります。
被害者の方は、被害届を出すかどうか、診断書や写真などをどのように残すか、相手方から示談を求められた場合にどう対応するかについて、迷うことがあるでしょう。弁護士に相談することで、被害状況を整理し、相手方との直接のやり取りを避けながら対応を検討できる場合があります。
加害者とされる方も、早めに弁護士へ相談することが大切です。
取調べの対応、被害弁償・示談の進め方、刑事手続について、状況に応じて詳しくご案内します。
「自分で謝罪すれば解決できる」と考え、相手方の自宅や勤務先を訪ねたり、繰り返し連絡したりすると、相手方に強い不安や圧力を与えてしまうことがあります。実際に、謝罪のために直接会いに行ったところ、そのやり取りを録音・記録され、かえって対応が難しくなった後に相談へ来られるケースもあります。
謝罪や被害弁償の意思があっても、相手方への連絡方法や示談条件を誤ると、トラブルが大きくなるおそれがあります。早い段階で弁護士に相談すれば、事実関係を整理したうえで、相手方の意向に配慮した適切な連絡方法や対応を検討できます。
傷害罪・暴行罪に当たるか、被害届が出された場合にどのような対応が必要かは、個別の事情によって変わります。不安があるときは、刑事事件に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
【記事監修】

弁護士 須賀翔紀
須賀法律事務所 代表弁護士。刑事事件を中心に、幅広い法律分野の相談・依頼に対応。相談者の不安や悩みに丁寧に耳を傾け、状況に応じた解決策を提案。専門的な内容も分かりやすく説明し、迅速かつ誠実な対応を重視。オンラインでの相談・依頼にも対応し、全国からの相談を受付している。

