2026/08/30 コラム
「違法行為を告発したい」と思ったら|刑事告訴・告発の方法と弁護士に依頼するメリット

2026年6月、東京・吉原の老舗ソープランドが摘発されました。売春防止法違反の疑いで、経営者らが逮捕された事件です。
報道によると、この事件では元従業員の女性が刑事告発を行っていました。女性は弁護士に依頼し、刑事告発状を作成して警察に提出したとされています。
その後、警察による捜査が進められ、店舗の摘発に至りました。この事件をきっかけに、「個人による刑事告発」にも注目が集まっています。
ニュースを見て、次のように考えた方もいるのではないでしょうか。
「自分も違法行為を告発したい」
「勤務先や取引先の不正を警察に知らせたい」
「自分は被害者ではないが、犯罪と思われる行為を知っている」
「警察に相談したが、なかなか動いてもらえない」
犯罪の被害者本人でなくても、刑事告発ができます。
刑事告発とは、犯罪の事実を捜査機関に申告し、処罰を求める手続です。一定の場合を除き、被害者以外の第三者でも行うことができます。
ただし、警察に違法行為を伝えれば、必ず捜査や逮捕につながるわけではありません。
刑事告発をする際は、まず事実関係を整理することが重要です。そのうえで、どのような犯罪が成立する可能性があるのかを検討します。
犯罪の事実を裏付ける証拠も重要です。告発を検討している段階から、証拠を適切に収集・整理しておく必要があります。
また、「告訴」「告発」「被害届」は、それぞれ異なる手続です。誰が行えるのか、どのような効果があるのかにも違いがあります。
この記事では、刑事告訴と刑事告発の違いをわかりやすく解説します。あわせて、告発の方法や注意点、弁護士に依頼するメリットについても紹介します。
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【目次】 |
告訴・告発・被害届は何が違う?

犯罪について警察に伝える方法として、「告訴」「告発」「被害届」があります。
似た言葉ですが、それぞれ意味が異なります。特に違うのは、誰が行うのかという点です。
告訴とは
告訴とは、犯罪の被害者などが捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める手続です。
刑事訴訟法230条は、「犯罪により害を被った者は、告訴をすることができる」と定めています。
たとえば、詐欺の被害に遭った本人が、警察に事実を伝えて処罰を求める場合などが典型です。
被害者本人だけでなく、一定の場合には法定代理人などにも告訴権が認められています。
告発とは
一方、告発は必ずしも被害者本人が行うものではありません。
刑事訴訟法239条1項は、犯罪があると思料するときは「何人でも」告発できると定めています。
つまり、自分自身が犯罪の直接の被害者でなくても、告発できます。
たとえば、勤務先で行われている不正を知った場合が考えられます。
また、第三者として犯罪と思われる行為を把握した場合も対象になり得ます。
ただし、単に「怪しいと思う」というだけでは十分とは限りません。
どのような犯罪が行われたのかを整理する必要があります。さらに、その事実を裏付ける資料の有無も重要になります。
なお、公務員については特別な規定があります。職務上、犯罪があると思料した場合は、告発しなければならないとされています。これは刑事訴訟法239条2項に定められています。
被害届とは
被害届は、犯罪による被害があったことを警察に届け出るものです。
告訴との大きな違いは、犯人の処罰を求める意思表示を含むかどうかです。
警察庁の犯罪被害者向け資料でも、被害届は被害の発生を届け出るものと説明されています。一方、告訴では処罰を求める意思を示します。
なお、警察は被害の届出について、明白な虚偽などの場合を除き、迅速・確実な受理に努めるとしています。
そのため、
「犯罪の被害に遭ったことを警察に知らせたい」
という場合は被害届が選択肢になります。
これに対して、
「犯罪として正式に処罰を求めたい」
という場合は、告訴を検討することになります。
また、自分自身が被害者ではない場合は、告発を検討することになります。
自分が被害者でなくても告発できる?
被害者本人でなくても告発は可能です。
そのため、
「勤務先で違法行為が行われている」
「取引先の不正を知っている」
「犯罪と思われる行為について資料を持っている」
といった場合も、告発を検討できます。
告発は、書面または口頭で行うことができます。提出先は検察官または司法警察員です。
ですが実務上は、犯罪事実を整理した「告発状」を作成する方法が一般的です。
告発状では、単に「違法だと思う」と主張するだけではありません。
犯罪が起きた時期や場所、関係者、具体的な行為などを整理します。どのような犯罪が成立すると考えるのかも検討する必要があります。
証拠となる資料がある場合は、それも整理して提出します。
告発すれば必ず警察が動くわけではない

ここで注意したいのが、告発と捜査の関係です。
告発状を提出したからといって、すぐに逮捕や家宅捜索が行われるわけではありません。
また、告発した人が希望する形で捜査が進むとは限りません。
一方で、正式に告訴・告発が受理された場合には、法律上の手続が発生します。
司法警察員が告訴・告発を受けた場合、関連する書類や証拠物を速やかに検察官へ送付しなければなりません。刑事訴訟法242条がそのように定めています。
法務省も、告訴・告発事件については、警察が一応の捜査を終えた後、意見を付して書類や証拠物を検察官へ送付すると説明しています。
その後、検察官は証拠を確認します。
必要に応じて、被疑者や関係者から事情を聴きます。追加の捜査が行われることもあります。
最終的に、検察官が起訴するか不起訴にするかを判断します。
つまり、「告発状を出せば必ず摘発される」という制度ではありません。
告発は、犯罪の存在を捜査機関に正式に伝える手段の一つです。
そこから実際にどのような捜査が行われるかは、犯罪事実や証拠の内容などによって異なります。
告発では犯罪事実と証拠の整理が重要
告発を検討するときは、まず事実関係を整理することが重要です。
特に、次のような点を明確にしておく必要があります。
- いつ犯罪が行われたのか
- どこで行われたのか
- 誰が関与したのか
- 具体的に何をしたのか
- どの犯罪が成立すると考えるのか
- その事実を裏付ける証拠があるか
たとえば、メールやメッセージ、契約書、録音、写真などが証拠になる場合があります。
一方で、どの資料が法的に意味を持つかは事件によって異なります。
また、告発しようとする人が考えている犯罪と、実際に成立する犯罪が異なることもあります。
警察庁も、告訴・告発については内容を聴取して検討し、受理・不受理を判断する体制を整えるよう各警察に求めています。
そのため、告発状を提出する前に事実と証拠を整理しておくことが重要です。
告発するときに注意したいこと
刑事告発は、犯罪の事実を捜査機関に申告するための制度です。
自分が被害者でなくても、犯罪があると思料する場合には告発できます。これは刑事訴訟法239条1項に定められています。
ただし、刑事告発は相手を攻撃するための制度ではありません。
告発する際は、客観的な事実や証拠に基づいて行うことが重要です。
虚偽の事実による告発は犯罪になる可能性がある
相手を処罰させる目的で、事実ではない内容を告発してはいけません。
刑法172条では、人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴や告発などをした場合について「虚偽告訴等罪」を定めています。
虚偽告訴等罪の法定刑は、3か月以上10年以下の拘禁刑です。
もっとも、告発した結果として相手が不起訴になった場合や、犯罪の成立が認められなかった場合に、直ちに虚偽告訴等罪になるわけではありません。
同罪が問題となるのは、客観的な事実に反する内容を申告した場合です。
そのため、告発を検討するときは、推測と確認できている事実を区別する必要があります。
「犯罪に違いない」と決めつけるのではなく、手元にある資料から確認できる事実を整理することが大切です。
SNSなどで相手を犯罪者扱いしない
告発を検討している場合、SNSなどで情報を発信する際にも注意が必要です。
事実確認が十分ではない段階で、個人や企業を名指しして犯罪者扱いすると、別の法的問題が生じる可能性があります。
たとえば、公然と事実を摘示して他人の名誉を毀損した場合には、刑法230条の名誉毀損罪が問題となることがあります。
もっとも、公共の利害に関する事実について、公益を図る目的で行われた場合には、一定の要件のもとで処罰されないことがあります。
そのため、「事実を書いたのであれば何を公表しても問題ない」とは限りません。
告発と、SNSなどを通じて情報を広く公開することは別の行為です。
違法行為について問題提起したい場合でも、まずは警察や検察などの適切な機関へ情報を提供することを検討しましょう。
刑事告発と私的制裁は別のもの
刑事告発の目的は、告発者自身が相手に制裁を加えることではありません。
告発を受けた後、犯罪が成立するかを捜査するのは警察や検察です。
また、起訴するかどうかを判断するのは検察官です。有罪・無罪や刑罰については、最終的に裁判所が判断します。
告発者が相手の犯罪成立を決めるわけではありません。
そのため、告発をする際には、相手への個人的な感情と犯罪事実を切り分けることが重要です。
「相手を社会的に制裁したい」という発想ではなく、確認できる事実や証拠を捜査機関に伝えるという姿勢が大切です。
刑事告発を弁護士に依頼するメリット

刑事告発は、必ず弁護士に依頼しなければならない手続ではありません。
本人が告発状を作成し、警察や検察に提出することも可能です。
しかし、告発状を提出したからといって、必ず受理されるとは限りません。
告発の内容が不明確であったり、犯罪事実が十分に特定されていなかったりすると、内容の確認や補足を求められることがあります。
刑事告発では、どの犯罪が成立する可能性があるのかを法的に検討することが重要です。そのうえで、犯罪事実を具体的に整理し、証拠との関係を分かりやすく示す必要があります。
弁護士に依頼することで、事実関係や証拠を法的な観点から整理できます。また、捜査機関に告発の内容が伝わりやすい告発状を作成できます。
そのため、本人だけで手続を進める場合と比べて、告発状の受理に向けた適切な準備を行えることは大きなメリットです。
もっとも、弁護士が作成した告発状であっても、必ず受理されることを保証するものではありません。
刑事告発を弁護士に依頼することには、ほかにも次のようなメリットがあります。
犯罪に該当する可能性を法的に検討できる
「違法だと思う行為」と「刑事犯罪として処罰される行為」は、必ずしも同じではありません。
不適切な行為であっても、刑罰法規の要件を満たさなければ犯罪は成立しません。
反対に、相談者が気付いていなかった犯罪が問題となる場合もあります。
弁護士に相談することで、具体的な事実関係をもとに、どのような犯罪が成立する可能性があるのかを検討できます。
告発すること自体が適切なのかを事前に検討できる点もメリットです。
告発に必要な証拠を整理できる
刑事告発では、犯罪事実を裏付ける資料が重要になります。
メールやメッセージ、写真、録音、契約書など、さまざまな資料が証拠となる可能性があります。
しかし、手元にある資料のすべてが同じ重要性を持つわけではありません。
弁護士に依頼すれば、犯罪事実との関係を踏まえて証拠を整理できます。
どのような資料が不足しているのかについても、検討することができます。
告発状の作成を依頼できる
告発状では、犯罪事実を具体的かつ分かりやすく記載する必要があります。
単に「この人が違法なことをしているので捜査してください」と記載するだけでは、十分とはいえません。
いつ、どこで、誰が、どのような行為をしたのかを整理します。
さらに、どの法律に違反する可能性があるのか、どの証拠が事実を裏付けるのかについても検討します。
弁護士に依頼することで、事実関係と法的な問題点を整理した告発状を作成できます。
捜査機関への提出や説明を任せられる
告発状は、作成して終わりではありません。
警察や検察に提出する際には、告発の内容について説明を求められることがあります。
場合によっては、資料の追加提出などが必要になることもあります。
弁護士に依頼すれば、告発状の作成だけでなく、捜査機関への提出や説明についてもサポートを受けられます。
違法行為の告発を検討している方は弁護士にご相談ください
「犯罪ではないかと思う行為を知っている」
「自分は被害者ではないが、告発できるのか知りたい」
「警察に相談したものの、どのように進めればよいか分からない」
このような場合は、刑事告発を行う前に弁護士へ相談することも選択肢の一つです。
刑事告発では、まず事実関係を整理する必要があります。
そのうえで、犯罪が成立する可能性や証拠の内容を検討し、告発状を作成していきます。
当事務所では、刑事告発に関するご相談を受け付けています。
「このような内容でも告発できるのか」という段階でも、まずはご相談ください。
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【記事監修】

弁護士 須賀翔紀
須賀法律事務所 代表弁護士。刑事事件を中心に、幅広い法律分野の相談・依頼に対応。専門的な知識と経験を活かし、迅速かつ正確な対応と、依頼者に寄り添った丁寧なコミュニケーションを重視している。オンラインで相談から依頼まで完結できる体制を整え、全国からの相談・依頼にも柔軟に対応している。


