2025/06/30 コラム
誹謗中傷されたらどうする?親告罪の期限・証拠の集め方・削除依頼の方法を解説
SNSや掲示板で、名前を出されて悪口を書かれたり、心ないコメントを浴びせられたり…
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
一見ただの「悪口」や「意見」のように見える投稿でも、内容によっては名誉毀損罪や侮辱罪といった立派な犯罪に該当する可能性があります。
実際に、ネット上の誹謗中傷で逮捕・起訴される事例も増えてきています。
とはいえ、被害を受けた直後はどうしてよいか分からず、「泣き寝入り」してしまう人が多いのも事実。
でも安心してください。法的に正しく対応すれば、自分の名誉や心を守る方法はあります。
本記事では、
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誹謗中傷が犯罪になる条件
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親告罪として告訴できる期限
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スマホでできる証拠の集め方
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投稿の削除依頼の方法
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相談できる公的窓口や弁護士の活用法
などを、被害者の立場に立ってわかりやすく解説していきます。
「これって誹謗中傷かも?」と少しでも不安を感じたら、まずはこの記事を読んで、冷静に一歩踏み出す準備をしましょう。
誹謗中傷ってどんな行為?当てはまる主な犯罪と民事責任
「誹謗中傷」と一口に言っても、実は内容によって複数の犯罪や民事責任に当てはまる可能性があります。
以下に、よく問題になる主な例をまとめました。
🔹 名誉毀損罪(刑法230条)
事実かどうかにかかわらず、人の社会的評価を下げるような発言をした場合に成立する犯罪です。
たとえば:
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「あいつは不倫してるらしい」とSNSに書く
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「〇〇は前科者だ」と暴露する
など、たとえ本当のことでも公然と書けば名誉毀損になる点が重要です。
🔹 侮辱罪(刑法231条)
具体的な事実を示さなくても、「バカ」「無能」「死ね」などの人格攻撃や罵倒表現で人の名誉を傷つけた場合に成立します。
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X(旧Twitter)で「ゴミ人間」「社会の害悪」と投稿
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YouTubeのコメント欄で悪質なあおり発言
なども対象です。
※2022年の法改正で、懲役刑が導入されるなど厳罰化されました。
🔹 その他の関係する犯罪
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脅迫罪:怖がらせる目的で「殺すぞ」「会社に言うぞ」と言うなど
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信用毀損罪:虚偽情報で相手の信用を損なう行為(例:お店の評判を落とすデマ)
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プライバシー侵害:住所・電話番号など個人情報を勝手に晒す行為(いわゆる「特定」)
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名誉権・肖像権侵害:本人の許可なく写真を晒す、誤解を招く編集画像を投稿する等
🔹 民事責任:損害賠償請求ができる
これらの誹謗中傷行為は、民法上の「不法行為」にも該当します。
つまり、被害者は加害者に対して慰謝料や損害賠償を請求することができます。
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精神的苦痛に対する慰謝料
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名誉回復のための投稿削除・謝罪広告
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弁護士費用などの実費
などが請求対象になり得ます。
親告罪とは?被害者の告訴が必要な犯罪
親告罪(しんこくざい)とは、被害者が「告訴」しなければ、加害者が処罰されない犯罪のことです。
刑事事件の中には、警察が自ら捜査して起訴できるもの(非親告罪)と、被害者の意思がなければ動けないものがあり、後者が親告罪にあたります。
なぜ「告訴」が必要?
親告罪の多くは、名誉やプライバシーなど、極めて個人的な権利が関係するものです。
被害者の意思を尊重し、国が勝手に処罰しないために、「処罰するかどうかは被害者が決める」仕組みになっています。
主な誹謗中傷関連の親告罪
犯罪名 | 内容 | 親告罪か |
---|---|---|
名誉毀損罪 | 事実を示して名誉を傷つける | ✅ 親告罪 |
侮辱罪 | 事実を示さずに侮辱する言動 | ✅ 親告罪 |
信用毀損罪(文書による) | 経済的信用を損なう投稿など | ✅ 親告罪 |
脅迫罪 | 害を加えると告げる威嚇 | ❌ 非親告罪 |
プライバシー・肖像権・名誉権の侵害 | 個人情報の公開・画像流用など | ❌ 民事中心 |
※肖像権や名誉権の侵害は、主に民事で損害賠償請求されます。
親告罪にある「6か月ルール」
親告罪には厳しい期限があります。
加害者を知った日から6か月以内に告訴しないと、告訴できなくなるというルールです(刑事訴訟法235条)。
例:SNSの中傷アカウントの「中の人」が誰か分かった日がスタート地点。そこから6か月が勝負です。
「公訴時効」にも注意が必要
親告罪は「告訴」が条件ですが、告訴したからといって必ず起訴されるとは限りません。
もうひとつの期限が 公訴時効 です。
公訴時効とは?
犯罪から一定の期間が過ぎると、たとえ加害者が判明しても起訴できなくなる制度です。
主な誹謗中傷関連罪の公訴時効
犯罪名 | 主な行為 | 公訴時効 |
---|---|---|
名誉毀損罪 | SNSで事実に基づく中傷 | 3年 |
侮辱罪 | 悪口・罵倒など | 1年 |
脅迫罪 | 「殺すぞ」などの威嚇 | 3年 |
信用毀損罪 | 虚偽の悪評で取引を妨害 | 3年 |
※起算点は「行為が行われた日」です。被害者が気づいた日ではありません。
告訴+時効の管理が重要
誹謗中傷の被害にあったら、
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犯人を早く特定する
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6か月以内に告訴する
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公訴時効が来る前に起訴してもらう
この3つのステップを意識しておく必要があります。
特に侮辱罪は公訴時効が1年と短く、動き出しが遅れるとそれだけで起訴のチャンスを失ってしまいます。
誹謗中傷投稿の対処法①|「削除」を目指す
🔸 SNSや掲示板の「通報機能」を使う
Twitter(X)やInstagram、YouTubeなどには、誹謗中傷や嫌がらせを報告する「通報機能」があります。
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問題の投稿を表示
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「報告」「通報」ボタンをタップ
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「嫌がらせ」「名誉毀損」「プライバシー侵害」など該当項目を選ぶ
ガイドライン違反と判断されれば、投稿削除やアカウント凍結が行われることもあります。
🔸 プロバイダ責任制限法に基づく「正式な削除請求」
匿名掲示板や運営者が分かりにくいサイトでは、プロバイダ責任制限法に基づいた削除請求が有効です。
これは、権利侵害を受けた被害者が、投稿を管理するプロバイダに直接削除を求める制度です。
削除請求の基本手順
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投稿のURL
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侵害された権利とその理由
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本人確認書類(免許証など)
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削除依頼書(任意の書式でもOK)
多くのプロバイダは、メールやフォームで対応してくれます。
🔸 削除を急ぎたいときの相談先一覧
即時対応が必要なときは、専門窓口や弁護士の力を借りるのが有効です。
窓口名 | 役割・対応内容 |
---|---|
違法・有害情報相談センター | 違法情報に関する助言・対応指導 |
誹謗中傷ホットライン | プロバイダへの削除申請などを支援 |
セーフライン | 違法情報の迅速な削除対応を実施 |
これらの相談先は、特に削除対応に特化しており、個人で行うよりスムーズに処理が進むこともあります。
🔸 弁護士による削除依頼も有効
「自分でやるのが不安」「対応が遅い」と感じる場合は、弁護士への依頼もおすすめです。
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削除依頼書の作成・送付(内容証明)
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法的根拠に基づいた削除請求
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投稿者の特定・損害賠償請求への布石にも
早い段階で法的手段に移行することで、被害の拡大を防げる可能性も高まります。
削除依頼は、被害を最小限に抑えるための最初の一歩です。
迷ったときは、上記のような相談機関や弁護士のサポートを活用して、確実かつ迅速に動きましょう。
誹謗中傷投稿の対処法②精神的・経済的な被害には「損害賠償請求」
SNSや掲示板などのネット上で誹謗中傷を受けた場合、民事上の損害賠償請求によって、精神的・経済的ダメージに対する補償を求めることができます。
「たかが書き込み」で済ませてはいけません。
被害者が受けた傷は法的にも“損害”として認められるのです。
💥 誹謗中傷で請求できる損害とは?
① 精神的苦痛に対する「慰謝料」
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侮辱や名誉毀損によって日常生活に支障をきたした
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怖くて外出できなくなった、眠れない日が続いた
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周囲の目が気になり学校や職場に行けなくなった
こうした**「心の損害」**も立派な慰謝料請求の対象になります。
② 経済的損害
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誹謗中傷が原因で仕事を辞めざるを得なかった
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引っ越しや医療費など、身を守るための出費があった
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被害に対して名誉回復を図るため広告や広報活動が必要になった
など、経済的な実費も損害賠償の対象となります。
📌 損害賠償請求の流れ(実務的ステップ)
ステップ1:証拠の収集
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誹謗中傷の画面をスクリーンショットで保存(日時・URL付き)
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被害状況(通院記録・出費の領収書・日記など)を記録
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投稿が続いている場合は更新記録も保存
ステップ2:加害者の特定
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投稿者が匿名の場合は、発信者情報開示請求によって、IPアドレスや契約者情報を調べる必要があります。
※プロバイダ責任制限法に基づき、裁判所を通じて手続きすることが一般的です。
ステップ3:内容証明郵便で請求
加害者が判明したら、損害額とその理由を明記した請求書を内容証明郵便で送ります。
この時点で支払いに応じるケースもあります。
ステップ4:裁判で損害を請求(訴訟)
内容証明を無視された、誠意がない、損害額に争いがある――
そんな場合には**民事訴訟(損害賠償請求訴訟)での解決を目指します。
👨⚖️ 弁護士に依頼するメリット
誹謗中傷の被害は、精神的にも大きな負担です。
証拠の収集や手続きは一人では困難なことも多いため、弁護士に依頼するメリットは大きいです。
✔ 適切な損害額を見積もってくれる
どこまでが損害か?いくら請求できるか?を法的根拠に基づいて判断してくれます。
✔ 証拠整理・書類作成・交渉もお任せ
内容証明の作成、相手方とのやりとり、開示請求・訴訟手続きまで、一括対応。
✔ 精神的負担を大幅に軽減
被害者が直接加害者と連絡を取る必要がなくなり、安心して回復に専念できます。
🛑 損害賠償請求の注意点
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相手が未成年の場合、親権者(親)に請求することになります
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相手に支払い能力がない場合、分割払いや和解交渉になることも
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判決が出ても支払わない場合は、強制執行(差押え)で回収を図る手段もあります
誹謗中傷投稿の対処法③刑事告訴
SNSや掲示板での誹謗中傷行為は、名誉毀損罪や侮辱罪など、れっきとした「犯罪」に該当するケースがあります。
被害者として泣き寝入りせず、刑事告訴を検討することは正当な権利です。
✅ 告訴とは何か?
「告訴」とは、被害者が警察や検察に対して「犯罪があったので処罰してほしい」と申告する行為です。
とくに名誉毀損罪や侮辱罪のような親告罪は、告訴がなければ加害者を処罰することができません。
📌 告訴の基本的な流れ
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警察署または検察庁に「告訴状」を提出
窓口での相談から始めることも可能ですが、正式に動いてもらうには告訴状の提出が必要です。 -
証拠や被害の実態を準備する
・中傷された投稿のスクリーンショット
・投稿日時やアカウント名
・精神的・社会的被害の説明(例:体調不良、仕事の支障など)
・加害者の氏名・住所(可能な範囲で) -
警察や検察が「受理」すれば捜査開始
→ その後、証拠をもとに加害者を取り調べ、起訴するか否かを検察が判断します。
👨⚖️ 告訴状の作成は弁護士に相談を!
実は、「告訴状」は誰でも自由に書いて提出できるものではある一方で、内容次第では“受理されない”ことも多いのが現実です。
とくに警察は、「犯罪と認められる内容であるか」「被害が具体的かどうか」を厳しくチェックします。
弁護士に依頼すれば:
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法的に有効な形で告訴状を作成
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証拠の整理・要点の明文化をサポート
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警察や検察への対応も同行・代行が可能
被害者にとって心理的負担も大きい手続きだからこそ、プロに頼ってしっかり進めることが、実効性ある告訴への近道です。
「ごめん」では済まない時代。泣き寝入りせず、今できる行動を
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誹謗中傷は、ただの“悪口”ではなく、人生を揺るがす深刻な問題です。
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心の傷を広げないためにも、証拠の保存と「6か月以内の告訴判断」が重要なカギ。
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投稿の削除や損害賠償、加害者の特定には、専門家(弁護士)の力を借りるのが確実です。
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一人で抱え込まず、正しい手順で冷静に対処することで被害は最小限に抑えられます。
今、動けば未来は変えられます。
ためらわず、一歩を踏み出しましょう。