コラム

2023/09/12 コラム

盗撮罪とは?新設された撮影罪と迷惑防止条例の違いや処罰される6つのケースを解説

盗撮のイラスト(カメラ)盗撮はどのような罪になるのか?

2023年7月13日、「性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)」が施行され、盗撮行為などに全国一律の罰則が適用されるようになりました。従来は迷惑防止条例で対応していましたが、スマホの普及で盗撮が増加したため新法が必要とされました。

本記事では、撮影罪の概要や違法となるケース、罰則についてわかりやすく解説します。

盗撮罪とは

盗撮は何罪になる?犯罪名と刑罰を詳しく解説

これまで都道府県ごとにバラバラだった処罰が全国統一され、法定刑も大幅に引き上げられました。

あなたの知らない間に変わった盗撮に関する法律、その重要ポイントを解説します。

盗撮とは

被写体となる人物の同意を得ず、撮影を行うことを 盗撮 といいます。

電車内や駅などで女性のスカートの中を撮影する行為などが該当します。

盗撮で罪に問われるか

今までは盗撮そのものを罰する法律はなく、軽犯罪法違反や各都道府県が定める迷惑防止条例違反などの罪に問われていました。

しかし、7月13日の法改正により撮影罪」が新設されました。

新設された撮影罪とは

盗撮は犯罪行為! 盗撮によって成立する罪や罰則、時効とは?|刑事事件に強いベリーベスト法律事務所

全国的な盗撮事件の増加を受け、新たに制定された「撮影罪」。

従来の条例による取り締まりの限界を超え、厳罰化と法の網の目を密にした新制度となります。

撮影罪とは

正当な理由なく、ひそかに性的な部位・下着などを撮影した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる新しい法律です。

盗撮画像を提供したり保管することも処罰対象となります。

撮影罪と迷惑防止条例の違い

撮影罪と迷惑防止条例の主な違い

  • 罪名:撮影罪は「撮影罪」、迷惑防止条例は「条例違反」
  • 適用地域:撮影罪は全国一律、迷惑防止条例は各都道府県ごと
  • 法定刑::撮影罪は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、迷惑防止条例は1年以下の懲役または100万円以下の罰金(東京都の非常習の場合)
  • 対象行為:撮影罪は撮影だけでなく、提供・保管・記録も処罰、迷惑防止条例は主に撮影行為を対象

従来の各都道府県による迷惑防止条例では地域差があり、撮影場所が特定できない場合に処罰が難しいという課題がありましたが、撮影罪の新設により全国で統一的な取り締まりが可能になります。
なお、拘禁刑は2025年施行予定の改正刑法で導入される刑罰で、それまでは懲役として扱われます。

撮影罪が新設された理由

撮影罪が新設された背景には二つの目的があります。

一つは盗撮行為の厳罰化です。
スマートフォンの普及により盗撮件数は増加し、2021年には5,000件を超える検挙がありました。
社会情勢の変化を受け、違法撮影への厳しい処罰が求められていました。

もう一つは条例による取り締まりの限界への対応です。
2012年9月、国内線機内で女性客室乗務員のスカート内を撮影した男性が、撮影場所の都道府県が特定できないため不起訴となった事例がありました。
高速移動中の犯行で、適用すべき条例が判断できなかったのです。

このような法の抜け穴を埋めるため、全国一律で盗撮を処罰できる撮影罪が新設されました。

撮影罪で処罰される6つのケース

新設された「撮影罪」では、どのような行為が処罰の対象になるのでしょうか?

知らずに犯罪者になってしまう可能性もある6つのケースを、わかりやすく解説します。

①正当な理由なく人の性的姿態等を隠れて撮影

正当な理由なく、人の性的姿態等をひそかに撮影する行為は「撮影罪」で処罰される可能性があります。
典型的な例としては、電車や駅構内で女性のスカートの中や胸の部分を気づかれないように撮影する行為が挙げられます。
このような盗撮行為は新設された撮影罪の対象となります。

②16歳未満の被害者の性的姿態等を撮影

撮影される人が16歳未満の場合は、たとえ本人の同意があったとしても撮影罪に問われる可能性があります。
特に13歳以上15歳以下の人の性的姿態等を撮影した場合は、撮影者と被撮影者の年齢差が5歳以上あると処罰対象となります。
この「5歳差要件」は、同級生同士など近い年齢の交際相手間で同意のうえで撮影するケースを除外するための規定です。
また、13歳未満の人の性的姿態等を撮影した場合は、年齢差に関係なく撮影罪が成立します。

③自分の意思で撮影に同意できない状態の被害者を撮影

相手が「自分の意思で撮影に同意できない状態」で性的姿態等を撮影した場合も、撮影罪で処罰される可能性があります。
この「同意できない状態」とは、刑法176条1項各号に定められた行為や事由によって、相手の同意を得ていないケースを指します。

具体的には、以下のような状況が該当します。

  • 暴行・脅迫を用いる
  • 心身の障害を生じさせる
  • アルコールや薬物を摂取させる
  • 睡眠など意識が不明瞭な状態にさせる
  • 同意しない意思を形成・表明するいとまを与えない
  • 予想と異なる事態に直面させて恐怖させる
  • 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
  • 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力を利用する

ただし、撮影される人が自身の意思で同意している場合など、正当な理由があれば性的姿態等を撮影しても処罰されることはありません。

④わいせつなものではないと被害者に信じ込ませて撮影

被害者を騙して性的姿態等を撮影する行為も撮影罪の対象となります。
例えば「この格好はわいせつではない」と被害者を誤解させて撮影したり、「自分だけが見る」と偽って性的な映像や画像を撮影したりした場合も、法律違反となる可能性があります。

⑤未遂であっても処罰される

以上の①~④で説明した盗撮行為のケースについては、実際に撮影が成功しなかった場合でも、「未遂」として処罰の対象となります。
つまり、撮影しようとして失敗した場合や、撮影途中で発覚した場合なども撮影罪が適用される可能性があります。

⑥撮影罪を犯して撮影された画像を提供・保管

「性的姿態撮影等処罰法」では、不法に撮影された性的画像の扱いも規制対象となります。
具体的には、盗撮行為そのものだけでなく、違法に撮影された画像を他人に渡したり、渡すために所持したりする行為も処罰されます。

撮影罪で事件化してしまったら

盗撮で実刑になる?初犯でも懲役刑はあり得るのか【弁護士が解説】

撮影罪で逮捕されたり、警察からの連絡があった場合には速やかに弁護士に相談しましょう。

刑事事件はスピードが重要になります。

一刻も早く被害者と示談交渉を行うなど、弁護士に依頼し適切な弁護活動をしてもらうことが大切です。

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