2025/12/25 コラム
不同意性交等罪が示談できない場合の対処法は?詳しい事例もご紹介!

不同意性交等罪で被害者が示談に応じず、不起訴や量刑軽減が難しいのではないかと不安になるのは自然なことです。
しかし「示談できない=即実刑」というわけではありません。証拠の内容や弁護活動の進め方によって、不起訴や量刑の大幅な軽減が実現した例は少なくないのです。
本記事では、示談が成立しない典型的なパターンを整理するとともに、それでも残されている防御手段や不起訴・減刑につながった具体的事例、そして取るべき行動をステップで解説します。諦めず、本記事を参考に専門家への相談を検討してみてください。
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【目次】 |
不同意性交等罪とは?

不同意性交等罪は、被害者の同意を得ずに性行為をする行為を処罰する犯罪です。
2023年の刑法改正により、従来の「強姦罪・準強姦罪」「強制性交等罪・準強制性交等罪」に代わって整理されたもので、性犯罪のうち、とりわけ被害者の性的自由を侵害する行為が対象となります。
この罪が適用されるかどうかは、具体的な行為内容や状況、被害者の意思の有無などが踏まえられます。被害届が出され、捜査が進められれば、起訴・公判に至る可能性も十分あり、刑事手続きの重大性が高い罪に位置付けられています。
たとえ初犯であっても、示談が成立していなければ執行猶予すら得られず、実刑判決が言い渡される可能性が高いのが実情です。
不同意性交等罪については以下の記事でも詳しく解説しています。
▶関連記事:不同意性交等罪の構成要件とは?強制性交等罪との違いやよくある事例について徹底解説!
適応される行為
不同意性交等罪は、被害者の自由意志によらない性交等を処罰するものです。
たとえば、被害者が明確に同意を示さなかった、あるいは拒否していたにもかかわらず性行為を行った場合や、暴行・脅迫を用いた場合などが含まれます。
また、従来の「強姦罪」「強制性交等罪・準強制性交等罪」で扱われていた性行為類似の行為が、新法のもとで「不同意性交等罪」に再編され、より広く「同意のない性行為」が対象となっています。
なお、ただし性犯罪全般の中でも、被害者の意思確認や同意の有無が争点となりやすく、被害者の供述が事件を左右する可能性が高いため、単純な「合意なき性交」だけでなく、同意の有無に関する証拠や状況が非常に重要です。
不同意性交等罪の対象とする内容に関しては、以下記事でも詳しく解説しています。
▶関連記事:不同意性交等罪とは?問題点や強制性交等との違いを解説
不同意性交等罪の罰則
不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑と定められており、執行猶予を得るためには3年以下の刑に減軽される必要があります。つまり、何も対策を講じなければ、初犯であっても実刑判決が下され、刑務所に収監される可能性が高いということです。
弁護士に相談することで、刑量を軽くするための様々な活動が可能になります。まず重要なのが、被害者との示談交渉です。示談が成立し、示談書に「許す」「処罰を求めない」といった宥恕文言(ゆうじょもんごん)が含まれていれば、不起訴処分を獲得できる可能性が大幅に高まります。仮に起訴された場合でも、示談の成立は執行猶予付き判決を得るための材料となります。
弁護士は、計画性がなかったこと、凶器を使用していないこと、短時間の出来事であったことなど、他の事件と比較して悪質性が低いと判断される要素を検察官や裁判官に丁寧に指摘し、より軽い処分を引き出すよう働きかけます。
加えて、再犯防止対策も刑量軽減において大きな役割を果たします。弁護士の指導のもと、性依存症治療のクリニックに通院したり、専門家によるカウンセリングを受けたりすることで、「再犯の可能性が低い」と判断される根拠を作ることができます。
同意の証拠を即座に用意できる
不同意性交等罪において、「性行為に対する同意がなかったこと」の立証責任は検察官にあります。しかし実際の刑事手続きでは、被害者が「同意していなかった」と証言するだけで容疑をかけられるケースが少なくありません。このような状況では、被疑者側が「同意があった」ことを示す証拠を積極的に提出する必要があります。
弁護士に相談することで、同意があったことを証明する証拠を迅速に収集・整理することができます。具体的には、性行為前後のメッセージのやり取り、通話記録、SNSでの会話内容、当日の行動を示すGPSデータや監視カメラ映像、共通の知人の証言などです。
特に重要なのが、証拠の収集タイミングです。時間が経過すればするほど、メッセージが削除されたり、記憶が曖昧になったり、証拠が散逸したりする可能性が高まり、不利になりかねません。弁護士は証拠保全の重要性を理解しているため、相談を受けた直後から迅速に証拠収集活動を開始します。
スマートフォンのデータバックアップ、関係者への聞き取り、監視カメラ映像の保存依頼など、専門的な知識に基づいた証拠保全活動を行うことで、後の手続きを有利に進めることができるのです。
弁護士は単に証拠を集めるだけでなく、それらを法的に意味のある形で整理し、検察官や裁判官に対して説得力のある主張を行います。素人判断では見落としがちな証拠も、弁護士の専門的な視点から発見され、活用されることがあります。
不同意性交等罪の示談ができない典型的なパターンとは?

不同意性交等罪は、示談による解決が極めて難しい犯罪です。被害者や検察が示談に応じない典型的なケースもあり得るのです。
そこでここからは、不同意性交等罪の示談ができない典型的なパターンを紹介していきます。
精神的・身体的トラウマが大きい
被害者が強い精神的・身体的トラウマを抱えている場合、示談に応じることを拒否するケースは少なくありません。
かつての性的暴行の記憶が鮮明で、加害者との接触自体を拒むことがあります。特に暴行や脅迫を伴ったとされる事案や、性行為後に重大な心身の苦痛が生じた場合、その抵抗感は非常に強く、示談交渉がそもそも成立しない状況に至りやすいようです。
こうしたケースでは、示談交渉だけでは解決が難しいため、弁護人による別のアプローチが検討されることになります。
加害者の反省や救済措置ではなく、証拠の再検証や同意の有無の争点化など、法的防御を中心とした戦略が必要になる傾向があります。
被害者が連絡先の開示を拒否している
被害者が加害者に対して連絡先の開示を拒否していると、そもそも示談を申し出る手段が断たれてしまいます。示談交渉には、相手との連絡や対話が不可欠ですから、このような拒絶があると示談は成立困難になります。
このような状況では、弁護士による強引な接触は却って逆効果となり得るため、慎重かつ別の方針での防御戦略を検討する必要があります。
被害者側弁護士が「示談せず起訴」を指示している
被害者側が弁護士を立てており、その弁護士が「示談ではなく起訴を望む」と強く主張しているケースでは、示談交渉が物理的に困難となります。
特に、複数の被害者がいたり、過去に類似の訴えがあったりする場合、被害者側弁護士は示談を選ばず裁判を前提とすることが少なくありません。
こうしたとき、示談交渉を粘り強く行っても被害者側の意思が固ければ、現実的な解決には至らない可能性があります。
お金より社会的制裁を望んでいる
被害者側が、金銭的な和解ではなく、加害者への厳罰や社会的制裁を望んでいる場合もあります。
このような心理状況では、たとえ示談金を提示しても、それが拒まれることがあります。
特に、事件が大きく報道される可能性や、被害者の将来的な安全確保を重視する場合には、示談よりも刑事裁判による判断を求めることがあります。
家族が示談を拒否している
被害者が未成年であったり、家族が関与する結果となる場合、家族が示談を拒否することもあります。
家族にとって示談金や和解よりも、将来にわたる安全や社会正義の確保を優先するケースがあるためです。このような場合、被害者本人だけでなく、家族の心理や価値観が示談の成否を左右しますから、交渉は非常に困難になります。
これらの典型パターンに当てはまると、示談そのものが現実的に難しく、示談交渉だけに頼る防御戦略では不十分となる可能性が高くなります。
このまま示談ができないと…

もし示談が成立せず、被害者の処罰感情も強いまま起訴されれば、重い刑罰や前科、社会的制裁といったリスクが高まります。
まず、先に述べたように、法定刑が5年以上の懲役であるため、執行猶予が付かなければ実刑となる可能性が高いです。起訴されれば公開法廷での裁判となり、有罪率の高さから前科がつく可能性は非常に高いです。これにより、就職・転職、資格取得、社会復帰などに長期的な影響が生じかねません。
さらに、示談が成立せず被害者の処罰感情が残っていたり、事件の内容が悪質だったりすると、仮に示談後の量刑審理であっても酌量減軽が認められず実刑となる可能性があります。
このような重大リスクを避けるためには、示談が難しいとわかっていても、別の防御手段を躊躇せずに検討する必要があります。
不同意性交等罪の示談ができない状況を解決するには?

不同意性交等罪で示談が不可能でも、諦める必要はありません。示談に代わる有効な解決策を取ることが大切なのです。
不同意性交等罪の示談ができない状況を解決するにはどうしたらいいのでしょうか?
様々な方法があるので、紹介していきます。
弁護士へ相談する
まず最も重要なのは、専門性のある刑事弁護に詳しい弁護士へ相談することです。弁護士への相談はハードルが高いと感じる方が一定数いるようですが、実は早期に相談することでその後の展開が大きく変わる可能性があります。
例えば、示談を断られた場合でも、証拠や事実関係を整理し、起訴を回避するための戦略を立ててもらうことで、不起訴や量刑軽減の可能性が残されます。
特に、捜査段階で弁護人を立て、証拠や調書の内容を精査して誤認や供述の矛盾を徹底的に調べることが、示談なしで事件を終結させる鍵になるのです。
謝罪文を書く
被害者との示談が難しい場合でも、謝罪文を用意することで被害者側や検察官に対して反省の姿勢を示す方法があります。
謝罪の意思や後悔をきちんと伝えることで、起訴猶予や量刑の減軽につながる可能性があります。
ただし、謝罪文だけでは十分とは言えず、他の証拠や情状とあわせて総合的に判断される点に注意が必要です。書き方などは、ネットなどで紹介しているサイトもあるので、参考にしてみてください。
不同意性交等罪の謝罪に関しては以下の記事でも詳しく解説しています。
▶関連記事:不同意性交等罪の疑いをかけられたら弁護士にすぐ相談すべき?相談することで得られるメリットについても徹底解説!
家族に協力してもらう
家族による支援も重要な防御手段となります。
たとえば、身元引受人としての保証や、今後の生活態度の改善を示すことで、検察官・裁判所に対して責任感や再発防止の意思を示すことができます。家族が穏やかに・かつ誠実さをもって関与することで、被害者側や関係者との交渉余地を含めた道が開けることがあります。
家族は唯一の自分の理解者でもあることを忘れないようにしましょう。
専門機関にサポートしてもらう
示談交渉や謝罪文の作成、被害者側とのやり取りに精神的な負担を感じる場合には、専門機関や支援団体、相談窓口の利用を検討することがおすすめです。
初めてのことばかりで精神を病んでしまう人も多いようです。
そんなときに精神的なケアや適切なコミュニケーション支援を受けることで、被害者との関係を改善する糸口が見つかることもあります。
加えて、こうしたサポートを通じて、自身の反省や更生の姿勢を示す材料とすることで、検察官・裁判所に有利な情状を作ることが可能です。
不起訴や減刑を叶えるための対処法!

不起訴や減刑を目指すのならば、相応の対処が重要になってきます。
ここからは、その対処法をいくつか紹介します。不同意性交等罪の不起訴や減刑、起訴率については以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
▶関連記事:不同意性交罪の起訴率はどのくらい?不起訴処分になるケースや不起訴になるためにできることを解説!
証拠を収集する
示談が成立しない場合、証拠が何より重要な意味を持ちます。
たとえば、やり取りの履歴、日時・場所の記録、防犯カメラ映像、関係を示す第三者の証言など、可能な限り客観的な証拠を集めることで、同意の有無や事実関係を争う余地が出てきます。
こうした証拠収集は、警察・検察の調べに備えるうえで非常に重要で、後の不起訴や無罪の可能性に直結します。
上申書を作成する
被告人側の情状や反省、再発防止の意思、被害者や社会への償いの方法などを明記した上申書を用意することも有効です。
これは、検察官や裁判所に対して、単なる言い訳ではなく、本気で更生を目指している態度を示す手段となります。
こうした書面は、起訴猶予や量刑の減軽を求める際の重要な資料となり得ます。特に謝罪文とあわせることで、反省と再発防止への意思を伝えることができます。
戦術的な黙秘を行う
捜査段階でむやみに自白してしまうことは、後の裁判で不利になる可能性があります。
とくに証拠に疑問や矛盾がある場合、戦術的に黙秘したり慎重に対応することで、検察判断に影響を与えられることがあります。
このような方針をとる場合は、経験豊富な弁護士の助言のもと慎重に行動することが重要です。
示談ができない状況から不起訴になった事例!

示談が成立しない場合でも、弁護活動によって不起訴処分を獲得できるケースは存在します。
ここでは、特に難易度の高い性犯罪や強制わいせつ事件において、示談なしで不起訴を勝ち取った事例を具体的に紹介します。
車内強姦を否認し、不起訴になったケース
本事例は、知人女性に対する車内での強制性交容疑という、非常に重い内容で訴えられた事案です。
被疑者は一貫して、女性との性行為が合意に基づくものであり、強姦の事実は存在しないと無実を主張し続けました。このため、加害者であることを前提とする示談交渉は最初から拒否し、示談が成立する見込みは全くありませんでした。
弁護士の重要な役割は、被疑者の主張が真実であることを証明するために、強力な証拠を提示することです。
弁護活動として、被疑者と被害者との関係性を示す過去のメッセージのやり取り(LINEやメール)を徹底的に収集しました。これらのメッセージからは、両者の間に親密な関係があったこと、そして性行為をめぐる具体的な状況が、被害者の供述と矛盾する形で浮かび上がってきたのです。
さらに、事件後の被害者の行動や、被害申告までの時系列的な不自然さなどを詳細に分析し、被害者の供述の信用性に疑問を呈するよう検察官に強く働きかけました。その結果、検察は被害者の供述のみでは強制性交の事実を立証するに足る証拠が不十分であると判断し、最終的に不起訴処分(嫌疑不十分)を勝ち取ることができました。
示談なしの厳しい状況でも、一貫した否認と客観的な裏付け証拠によって、無罪の推定を貫けた成功事例といえます。
物的証拠と時系列整理で矛盾をつき、不起訴になったケース
こちらの事例は、強制わいせつ致傷という重い容疑で被疑者が逮捕された事案です。
被害者は「背後から羽交い締めにされてわいせつな行為を受け、その際に負傷した」と具体的に供述していますが、被疑者はこの行為を完全に否認しました。被害者側が事件化を強く望んでいたため、示談交渉の余地はほとんどなく、弁護士は示談を目的とせず、無実を証明することに注力しました。
弁護活動の核となったのは、被害者供述の客観的な矛盾点の洗い出しです。弁護士は、警察が開示した被害者や目撃者の供述調書、現場検証を行った実況見分調書などの全証拠資料を緻密に分析しました。
特に、被害者が供述する犯行の場所、時間帯、そして負傷した状況について、実況見分調書に記載されている現場の状況や、防犯カメラの映像などと具体的な時系列で照合しました。その結果、被害者の供述には、物理的・時間的な矛盾点が複数存在することが明らかになったのです。
また、負傷の程度も軽微であることを示し致傷罪の成立に疑問を投げかけるなど、弁護士は矛盾点をまとめ、被害者供述には信用できない部分が多いことを論理的に主張しました。
結果、検察は被害者の証言のみに依拠して有罪を立証するのは困難であると判断し、結果として不起訴処分(嫌疑不十分)となっています。客観的な物的証拠と論理的な時系列整理が、示談なしで無実を証明する上で極めて効果的であった事例といえるでしょう。
不同意性交等罪で示談できないことにお悩みなら「須賀法律事務所」へ!

もしあなたが示談に応じてもらえず、不起訴や量刑軽減の可能性を諦めかけているのであれば、性犯罪への弁護実績も豊富な「須賀法律事務所」に一度相談してみてください。
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専門家に相談することで、示談ができなくとも、不起訴や執行猶予、あるいは量刑の大幅な軽減につながる可能性があります。どうか諦めず、一度法律相談の扉を叩いてみてください。



