2023/07/31 コラム
履歴書に嘘の情報を書くと罪に問われる?経歴詐称になる可能性が高い内容や嘘がバレたときの対処法を解説!
「本当は高卒なのに大卒と書いてしまった」「嘘の職歴を書いてしまった」
就職活動や転職活動において、履歴書は自分をアピールする重要な書類です。しかし、少しでも良く見せたいという気持ちから、学歴や職歴、資格などに嘘を書いてしまう人も少なくありません。「この程度なら大丈夫だろう」と軽い気持ちで記載した虚偽の情報が、後に大きなトラブルに発展する可能性があることをご存知でしょうか。
履歴書の嘘は単なるマナー違反では済まず、場合によっては法的な問題に発展したり、内定取り消しや懲戒解雇といった深刻な結果を招くことがあります。本記事では、履歴書に嘘を書くことのリスクや対処法について詳しく解説します。
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履歴書に嘘の情報を書くと罪に問われるのか
履歴書は、採用担当者が応募者の経歴やスキルを判断するための重要な資料です。ですが、企業に提出するだけの履歴書に嘘を書いたところで、罪に問われることになるのでしょうか?
そこでまずは、履歴書で嘘を書いた場合の罪の有無や、嘘と見なされやすい内容、発覚する理由、そしてもしバレてしまった場合の適切な対処法について解説していきます。
文書偽造の罪や詐欺罪・軽犯罪法違反などに問われる可能性がある
学歴や経歴を偽って会社に入社した場合、文書偽造の罪や詐欺罪、軽犯罪法違反などに問われる可能性があります。
履歴書に虚偽の情報を記載するだけでは、私文書偽造罪にはあたりません。
履歴書の名前を他の人の名前にしたり、卒業証明書や資格証明書を偽造して自分の名前に変更するなどが私文書偽造に該当します。
金銭目的で経歴を詐称し、通常では発生しなかった対価を受け取っていた場合には詐欺罪に該当します。
具体的には、高卒なのに大卒と偽り、高い給与を受け取っていた場合や、実際には保有していない資格を取得していると偽り、資格手当を受け取っていた場合が対象となります。
ちなみに、大卒なのに高卒だと偽った場合も経歴詐称に該当します。
詐欺罪とは
金銭目的で経歴を詐称し、通常では発生しなかった対価を受け取っていた場合は詐欺罪にあたります。
医師や弁護士など、高度な資格を所有していることが契約の条件になっていて、資格手当や契約料など、その資格に対して報酬金が支払われていた場合には詐欺罪が成立する可能性があります。
私文書偽造・公文書偽造とは
・私文書偽造(刑法第159条)
履歴書の名前を他の人の名前にしたり、卒業証明書や資格証明書を偽造して自分の名前に変更するなどが
私文書偽造に該当します。
第三者が名義人となる書類を、偽造した場合に私文書偽造の罪に問われる可能性があります。
・公文書偽造(刑法第155条)
公的機関や公務員が作成する文書が公文書にあたります。
健康保険証や運転免許証などの公的な文書を偽装した場合には公文書偽造の罪に問われる可能性があります。
刑事罰に問われるよりは民事責任に問われることが多い
履歴書に嘘の情報を記入することは、私文書偽造罪などで刑事罰に問われるよりかは民事責任に問われることが多いです。
軽犯罪法違反・・・修士号・博士号などの学位、医師、弁護士など、法令で定められた称号を偽って相手を騙した場合
詐欺罪・・・金銭目的で経歴を詐称し、かつその詐称により通常では発生しなかった対価を受け取っていた場合に対象となる犯罪です。
かつその詐称により通常では発生しなかった対価を受け取っていた場合に対象となる犯罪です。
ただし、詐称して入社したのち支払われる賃金は、労働の対価だとされ、経歴を詐称したことで発生した労務以外の対価を線引きする難しさがあると言われています。過去の事例では、医師免許を持っていると偽って採用され、給料を受け取っていたことで詐欺罪が成立したケースもあります。
履歴書に嘘の情報を書くと内定取り消しや解雇になるか
履歴書に嘘があった場合、懲戒処分の対象となり、内定取り消しや解雇になる可能性はあります。
また、経歴詐称が原因で会社に何らかの損害を与えた場合には損害賠償請求されることもありえます。
履歴書の嘘が経歴詐称になる可能性が高い内容
履歴書において特に経歴詐称とみなされやすいのは、学歴や職歴、資格に関する嘘です。まず学歴については、
- 在籍していない学校を卒業したと書く
- 実際には中退しているのに卒業と記載
といったケースが典型的な嘘です。採用後に嘘が発覚した場合、信頼関係が崩れるだけでなく、経歴詐称として法的な問題に発展する可能性もあります。
次に職歴に噓を書くのも深刻な問題に発展する恐れがあります。
- 短期間で辞めた会社に在籍していなかったとして隠す
- 勤務期間を実際よりも長く書き、能力や経験を誤解させる
- 在籍したことが無い企業に勤務したことにする
この中でも、在籍したことがない企業に勤務したと偽るのは明らかに経歴詐称です。これらは採用後に業務能力が伴わないことにより疑われ、最終的に調査で発覚することが多くあるようです。
さらに資格や免許に関しても、嘘の記載をすることは危険です。持っていない資格を記載すれば当然ながら虚偽とされますし、業務に必須の資格であれば無資格での勤務となってしまい重大な問題となります。運転免許や専門資格などは証明書の提出を求められることが多いため、発覚するまでの時間も早いでしょう。
このように、学歴・職歴・資格は採用判断に直結するため、嘘を書けば経歴詐称となる可能性が極めて高いのです。
履歴書に書かないと嘘になる可能性が高い内容
履歴書には、必ずしもすべての情報を書かなければならないという決まりはありません。しかし、業務内容や採用基準に直結する事項を隠してしまうと、「嘘をついた」と見なされてしまう場合があります。
この章では、履歴書に書かないと「嘘になる可能性が高い」代表的な内容について解説していきます。
犯罪歴
履歴書において犯罪歴は必ずしも記載義務があるわけではありません。しかし、応募する職種によっては犯罪歴を隠すことで重大なトラブルになる可能性があります。
たとえば、金融業界や教育現場など、高い倫理性や信用が求められる職場では、過去の犯罪歴が業務遂行に直結するケースがあります。この場合、採用時に「犯罪歴はありますか」と明確に問われているのに虚偽の申告をした場合には、後に発覚すれば経歴詐称とみなされ、懲戒解雇の対象になる可能性が高いでしょう。
法律的に「書かなかったから即犯罪」というわけではありませんが、正直に伝える必要性が高い場面があるのは事実です。面接や書類で直接問われた場合には、虚偽を避けて正直に答えることが信頼につながるといえるでしょう。
既往歴・持病
病歴や持病についても、全てを履歴書に記載する義務があるわけではありません。しかし、業務内容に支障をきたす可能性が高い場合や、安全上重要な業務を担う職種では、持病を隠すことで重大な問題に発展することがあります。
たとえば、重い持病を抱えているにもかかわらず、長時間労働や肉体的に厳しい業務を行う職場に応募した場合、後に健康上の理由で業務が遂行できなくなると、虚偽申告として扱われる場合があります。 特に医療現場や運輸業など、安全性が重視される職種では正直に申告すべき情報です。逆に、業務に支障のない程度であれば必ずしも記載義務はなく、面接で問われなければ隠しても問題はありません。大切なのは「業務に直結するかどうか」であり、これを判断基準とすることが求められます。
履歴書のウソがバレる3つの理由
履歴書に嘘を書いたとしても、「これくらいならバレないだろう」と思ってしまう人は少なくありません。しかし実際には、嘘は高い確率で発覚します。
一見ごまかせると思った小さな嘘でも、時間の経過や調査によって露見することが多いのです。この章では、履歴書の嘘が発覚する具体的な理由を3つに分けて解説していきます。
①面接での内容とかみ合わなくなるから
履歴書に嘘を書いてしまうと、面接時のやり取りで矛盾が生じやすくなります。面接官は応募者の人柄や能力を見極めるために、履歴書をもとに具体的な質問を行います。その際、実際には在籍していない企業での経験を記載していた場合、業務内容や成果に関する質問には当然答えることができません。
また、勤務期間を実際よりも長く記載していた場合には、時系列や他の職歴との整合性に不自然さが出てしまいます。こうした違和感は、採用担当者にとって「嘘をついているのではないか」という疑念を抱かせる要因となります。
面接官はこれまで数多くの応募者と接してきているので、回答の内容や話の流れに不自然さがあれば敏感に気づきます。応募者が緊張してうまく話せない場合と、虚偽を隠そうとしている場合は、受け答えの具体性や一貫性に大きな差が出るためです。
つまり、履歴書の内容に事実と異なる点があれば、面接中のちょっとした質問で容易に矛盾が出てしまうのです。
②学校やバイト先に事実確認する場合があるから
採用企業は、応募者の経歴を確認するために学校や前職、アルバイト先へ問い合わせを行う場合があります。特に正社員としての採用や責任の大きな職種では、在籍確認を必須としていることも少なくありません。最近では新卒採用でも大学に直接問い合わせて確認を取る企業も増えており、より厳格なチェックが行われているようです。
学歴に虚偽があれば、大学や高校に問い合わせるだけで簡単に発覚しますし、職歴に関してもある程度の調査で嘘はすぐに明らかになります。アルバイト経験に関しても、応募者の職歴や人柄を確認するために連絡が入る場合があり、過去の勤務実態が調べられるのです。
こうした調査は企業にとって特別なことではなく、むしろ「信頼できる人材を採用するための当然の確認作業」といえます。そのため、嘘をついても長くは隠し通せず、事実確認の過程で露見してしまうリスクが非常に高いのです。
③証明書の提示を求められる場合があるから
履歴書に学歴や資格を記載した場合、証明書類の提示を求められるケースは多くあります。たとえば、大学卒業であれば「卒業証明書」や「成績証明書」、資格保持者であれば「合格証書」や「免許証」の提出を求められるのが一般的です。
特に運転免許証や国家資格など業務遂行に必須の資格は、採用手続きの中で必ず確認されます。したがって、資格や学歴に関する虚偽は、書類の段階で即座に発覚してしまうでしょう。
もし証明書を出せなければ、虚偽記載を疑われ、そのまま採用選考から外される可能性が高いです。つまり、証拠となる公的書類が存在する情報について嘘をつくことは、ほぼ必ず発覚すると考えるべきです。
履歴書の嘘がバレたときの対処法
履歴書に嘘を書いてしまった場合、それが発覚すると非常に大きな問題につながります。企業は応募者に対して「信頼できるかどうか」を重視しているため、嘘が明らかになれば内定の取り消しや解雇といった厳しい対応を受けることもあるでしょう。
しかし、嘘をついてしまった事実は消せない以上、バレてしまったときにどう行動するかが今後を左右します。ここでは、嘘が発覚したタイミングを「内定前」と「内定後」に分け、それぞれの場面で取るべき適切な対処法を解説します。
内定前にバレた場合
内定前に嘘が発覚した場合、多くのケースではその時点で不採用となります。企業にとって「誠実さに欠ける応募者」を採用するリスクは非常に大きいため、選考を継続する可能性は低いです。
ただし、発覚した時点で誠実に謝罪し、虚偽記載の理由を率直に説明することで、場合によっては理解を得られることもあります。たとえば「短期離職を良く見せたかった」など、動機が重大なものではなく、かつすぐに訂正できる内容であれば情状が考慮される可能性があります。
重要なのは言い訳をせず、非を認めたうえで「今後は正直に伝える」という姿勢を見せることです。採用担当者に誠意が伝われば、完全に信頼を失うことなく再挑戦のチャンスを得られる場合もあるでしょう。
内定後にバレた場合
内定後に嘘が発覚すると、状況はさらに厳しくなります。企業は内定を取り消す権利を持っており、学歴や資格の虚偽が見つかれば即座に取り消されるのが一般的です。さらに、入社後に発覚した場合には「経歴詐称」として懲戒解雇となる可能性も高いです。
これは就業規則にも定められており、正当な理由とされやすいため争っても不利になるケースがほとんどです。特に資格が必要な業務で無資格だった場合には、会社にも損害を与えかねないため、社会的信用を大きく失ってしまいます。
したがって、もし嘘をついてしまったなら、発覚する前に自ら訂正して謝罪するのが最も誠実な対応です。企業側も「正直に申告してきた」という点を評価する場合があり、解雇や取り消しを免れる可能性がわずかに残されます。嘘をつき続けるのではなく、誠実に向き合うことこそが最善の対処法といえるでしょう。
履歴書の嘘に関するご相談は須賀法律事務所へ
履歴書に虚偽の記載をしてしまい、不安を抱えている方は少なくありません。虚偽の内容が発覚すれば、経歴詐称とみなされ、内定取り消しや懲戒解雇につながる可能性があります。また、場合によっては法的な問題へと発展するリスクもあります。
そうした不安を一人で抱え込む前に、法律に関する専門家へ相談することが大切です。専門家の力を借りることで、リスクを最小限に抑え、安心して次の一歩を踏み出すことができるでしょう。
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