刑事事件の流れ
逮捕
「逮捕」とは、犯人の逃亡や証拠隠滅を防ぐため、強制的に拘束することです。誰もができる「現行犯逮捕」のほか、捜査機関の請求を受けて裁判所が発付する逮捕状によって逮捕する「通常逮捕」があります。通常逮捕は捜査機関しかできません。そもそも逮捕・勾留されずに捜査が進められる場合もあり、そのような事件は「在宅事件」と呼ばれます。
逮捕されると警察官による取調べが行われ、供述調書が作成されます。身柄が検察庁へ送られるまで、最大で48時間は警察官の取調べを受けます。この段階で被疑者と接見(面会)するのは家族でさえ難しいのですが、私選弁護人であれば接見が可能です。
その後は取調べのうえ、警察官の判断によって釈放されることもありますが、引き続き捜査される場合は「送致」されます。
送致
警察から検察へ「送致」されたら、検察官の取調べが行われて供述調書が作成されます。送致されてから検察官が勾留請求するまでの時間は最大で24時間です。その間に、検察官の勾留請求を受けて裁判官が勾留を決定します。
ここまでの72時間が一つの山です。これを超えて勾留されると最大で20日間拘束されてしまうため、社会生活に大きな影響が出るでしょう。早い段階で私選弁護人と接触することが望ましいです。
その後は取調べのうえ、検察官または勾留請求を受けた裁判官の判断によって釈放されることもありますが、引き続き捜査される場合は「勾留」されます。
勾留
検察官が裁判官に対して10日間の勾留請求を行ったあと、必要な捜査が終わらない場合はさらに最長10日間の勾留延長が請求できます。そのため送致された日から最大で20日間勾留されるでしょう。検察官はこの間に起訴・不起訴の判断を行います。勾留中は、検察官の判断によって釈放されることもあります。
この段階は、国選弁護人が選任されるタイミングでもあります。私選弁護人に依頼しない場合は、この段階まで弁護人がつきません。
なお、刑事事件では罪を犯した疑いがある人のことを捜査中は「被疑者」と呼びますが、起訴後は「被告人」と呼びます。
起訴・不起訴
起訴
日本の刑事裁判では起訴されると99.9%有罪となるため、「起訴されないこと」が一つの大きなポイントです。早い段階で弁護人のアドバイスを受ける必要があります。
起訴後は「公判請求」または「略式起訴」となります。公判請求は通常の裁判を求める請求です。重大犯罪の場合は、裁判員裁判になることもあります。一方の略式起訴では、書面だけの簡易な審理が行われます。簡易裁判所の管轄事件で、罰金または科料が見込まれる事件について選択されます。
なお、起訴後は保釈請求ができます。認められると、一定金額の保釈金を裁判所に納めることで、釈放されます。
不起訴
不起訴処分になれば釈放されます。前科がつくことなく、事件は終了します。
なお、ここまでが警察・検察による捜査段階、以降が裁判所による公判段階となります。
裁判
通常裁判または簡易裁判(略式手続)となります。簡易裁判所の管轄事件などは、簡易裁判になる可能性があるでしょう。一方で、通常裁判の場合は起訴後1〜2か月で裁判が開かれたのち、終了するまで1年以上かかることもあります。長期戦を覚悟しなければなりません。
裁判の流れは、大まかに分けると「冒頭手続」→「証拠調べ」→「弁論手続」の順番に進みます。
冒頭手続の内容は以下の通りです。
- 人定質問:裁判長が被告人に対し、人違いではないことを確認
- 起訴状朗読:検察官が起訴状を朗読
- 黙秘権の告知:裁判長が被告人に対して黙秘権の説明
- 罪状認否:起訴状で読み上げられた事実に対する陳述(被告人→弁護人の順番)
証拠調べでは、検察側の冒頭陳述が行われたのち、検察側・弁護側双方の立証活動が行われます。証人尋問や被告人質問もこの段階です。
弁論手続では、検察側の論告・求刑、弁護側の最終弁論、被告人の最終意見陳述などが行われます。
判決
裁判官から判決と判決理由が述べられ、ここで無罪・有罪が決まります。控訴しない場合、これで刑事裁判は終了です。一方で控訴する場合は、控訴手続をして高等裁判所で第二審が行われます。日本の裁判制度は三審制のため、控訴したあとの判決に不服な場合は、さらに上告することもできます。
なお、無罪になった場合は前科がつきませんが、有罪になった場合は前科がつきます。また有罪になった場合、執行猶予がつけば一定の期間は刑の執行が猶予されますが、実刑であればすぐに刑に服さなければなりません。