コラム

2026/07/13 コラム

SNSでの誹謗中傷で刑事告訴された場合の対処法|名誉毀損・侮辱罪の弁護

SNSでの誹謗中傷で刑事告訴された場合の対処法|名誉毀損・侮辱罪の弁護

X(旧Twitter)やInstagram、匿名掲示板などでの発言が、ある日突然、警察沙汰になる。スマートフォンの普及により、誰もが簡単に情報を発信できるようになった現代において、ネット上の誹謗中傷トラブルは急増しています。「少し感情的になって書き込んだだけ」「みんなも同じようなことを言っていた」という軽い気持ちが、取り返しのつかない事態を招くことがあります。

ある日突然、警察から呼び出しの電話がかかってきた、あるいは自宅に家宅捜索(ガサ入れ)が入った。このような事態に直面したとき、パニックにならず適切な対応をとることが、今後の人生を守るために不可欠です。この記事では、SNSでの誹謗中傷によって刑事告訴された加害者側の視点から、成立しうる犯罪、捜査の流れ、そして被害を最小限に抑えるための対応策を解説します。

誹謗中傷で成立する主な犯罪

ネット上の書き込みによって成立する可能性が高い犯罪は、主に「名誉毀損罪」と「侮辱罪」の2つです。

名誉毀損罪(刑法230条)

「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します。ここでいう「事実」とは、真実かどうかは問いません。「〇〇は不倫している」「〇〇は会社の金を横領した」など、具体的な事柄を挙げて他人の社会的評価を下げる行為が該当します。法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金です。

侮辱罪(刑法231条)

「事実を摘示しないで、公然と人を侮辱した」場合に成立します。「バカ」「ブス」「死ね」といった、具体的な事実を伴わない抽象的な罵倒がこれに当たります。かつては非常に軽い刑罰しかありませんでしたが、ネット上の誹謗中傷が社会問題化したことを受け、2022年に厳罰化されました。現在の法定刑は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となっています。

刑事告訴と警察の捜査プロセス

名誉毀損罪も侮辱罪も「親告罪」と呼ばれ、被害者からの告訴がなければ検察官は起訴することができません。つまり、警察が動いているということは、すでに被害者があなたを特定し、強い処罰感情を持って告訴状を提出したことを意味します。

通常、ネット上の誹謗中傷事件は以下のような流れで進みます。

  1. 発信者情報開示請求: 被害者がプロバイダに対して手続きを行い、書き込んだ人物(あなた)の氏名や住所を特定します。
  2. 刑事告訴: 特定された情報をもとに、被害者が警察に告訴状を提出します。
  3. 警察からの接触: 警察から電話で任意同行を求められるか、悪質な場合は突然自宅に捜索差押え(家宅捜索)に入り、スマートフォンやパソコンを押収されることがあります。
  4. 取り調べ: 警察署で事情聴取を受け、供述調書が作成されます。逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断されれば「在宅事件」として扱われますが、悪質な場合は逮捕されることもあります。
  5. 検察庁への送致: 警察での捜査が終わると、事件の記録が検察官に送られます(書類送検)。
  6. 起訴・不起訴の決定: 検察官が、裁判にかける(起訴)か、処罰を見送る(不起訴)かを決定します。

警察から連絡が来たときにやってはいけないこと

警察からの突然の連絡に動揺し、誤った行動をとってしまうと、状況はさらに悪化します。以下の行動は絶対に避けてください。

1. 証拠を隠滅する(投稿の削除・アカウントの消去)
警察から連絡が来た時点で、すでに被害者側は投稿のスクリーンショットやURLなどの証拠を保全しています。慌てて投稿を削除したりアカウントを消したりする行為は、「証拠隠滅を図った」とみなされ、逮捕のリスクを急激に高めるだけです。

2. 警察の呼び出しを無視する
任意の呼び出しであっても、無視し続けると「逃亡の恐れがある」と判断され、逮捕状が請求される可能性があります。日程の都合が合わない場合は、必ず正当な理由を伝えて日程調整を行ってください。

3. 被害者に直接コンタクトをとる
謝罪したい一心で、SNSのDMなどで被害者に直接連絡をとることは危険です。被害者にとっては恐怖であり、「脅迫された」「示談を強要された」と受け取られかねません。

最善の解決策は「示談」による告訴取り消し

前述の通り、名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪です。したがって、検察官が起訴・不起訴の判断を下す前に、被害者と示談を成立させ、告訴を取り消してもらえれば、確実に「不起訴処分」となり、前科がつくことはありません。

しかし、誹謗中傷の被害者は加害者に対して強い怒りや恐怖を抱いており、当事者同士での話し合いは極めて困難です。多くの場合、被害者は加害者本人からの連絡を拒絶します。

ここで弁護士の介入が不可欠となります。弁護士であれば、被害者の心情に配慮しながら冷静に交渉を進めることができます。適正な示談金を提示し、二度と書き込みを行わないことや接触しないこと(接触禁止条項)を約束する示談書を作成することで、被害者の納得を得て告訴取り消しへと導くことが可能です。

訹謗中傷事件の示談金相場と交渉のポイント

ネット上の訹謗中傷事件における示談金の相場は、書き込みの内容や拡散の程度、被害者の社会的地位などによって大きく異なります。一般的な目安として、一般人に対する単発の書き込みであれば数万円から30万円程度、繰り返しの書き込みや悪質なデマの拡散を伴う場合は30万円から100万円以上、芸能人や企業に対する書き込みで営業損害が発生している場合はさらに高額になる可能性があります。

示談交渉において重要なのは、金銭的な解決だけでなく、今後の再発防止策を具体的に示すことです。「当該投稿の削除」「当該アカウントの削除」「今後一切被害者に関する書き込みをしないことの誓約」などを示談書に盛り込むことで、被害者の納得を得やすくなります。

「正当な批判」と「訹謗中傷」の境界線

「自分の書き込みは事実だから問題ないはずだ」と考える方もいます。確かに、名誉毄損罪には「公共の利害に関する場合の特例」(刑法230条の2)という免責規定が存在します。これは、「公共の利害に関する事実」であり、「専ら公益を図る目的」であり、「真実であることの証明」ができた場合にのみ、罰しないとするものです。

しかし、この免責規定が適用されるハードルは非常に高いです。「公共の利害に関する事実」とは、政治家の汚職や企業の不正など、社会全体に影響を与える事柄に限られます。個人のプライベートな事柄(不倫、家庭内のトラブルなど)を暴露する行為は、たとえそれが事実であっても、「公共の利害」とは認められず、名誉毄損罪が成立する可能性が高いです。

また、価値判断(「あいつはクズだ」「無能」など)は「事実の摘示」ではなく「意見・論評」に過ぎないため、名誉毄損罪ではなく侥辱罪の問題となりますが、いずれにせよ刾事罰の対象であることに変わりはありません。「事実だから書いてもいい」という認識は、法的には通用しないことを理解しておく必要があります。

プロバイダからの意見照会書が届いた場合

被害者が発信者情報開示請求を行った場合、あなたが利用しているプロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届くことがあります。これは、「あなたの個人情報を被害者に開示してよいか」を尋ねる書類です。

この意見照会書を無視したり、自己判断で回答したりすることは危険です。「開示に同意」と回答すれば、あなたの氏名・住所が被害者に伝わり、直接損害賠償請求が届くことになります。「不同意」と回答しても、裁判所の命令により開示される可能性はあります。どちらの回答が有利かはケースバイケースであり、弁護士に相談した上で判断すべきです。

意見照会書が届いた時点で弁護士に依頼すれば、その後の示談交渉や刑事告訴への対応を一貫して任せることができ、最も有利な結果を導きやすくなります。

早期相談が未来を守る

ネット上の誹謗中傷事件は、デジタルタトゥーとして被害者を苦しめ続けるだけでなく、加害者の人生にも取り返しのつかない傷跡を残す可能性があります。前科がつけば、就職や結婚、現在の仕事に重大な影響を及ぼします。

「警察から連絡が来た」「プロバイダから意見照会書が届いた」という段階であれば、まだ間に合います。一人で抱え込まず、一刻も早くネット犯罪や刑事事件に精通した弁護士にご相談ください。迅速な対応が、あなたの未来を守る唯一の道です。

【この記事の監修者】

弁護士 須賀翔紀

須賀法律事務所 代表弁護士。ネット上の誹謗中傷・名誉毀損事件において、加害者側の弁護活動に注力。被害者との迅速な示談交渉を通じて、告訴取り消し・不起訴処分の獲得実績を多数有する。

刑事事件でお困りですか?

24時間受付 全国対応
今すぐLINEで相談予約

弁護士が確認次第、ご連絡いたします

© 須賀法律事務所

全国対応|地域別の刑事事件相談ページ

LINEで相談予約24時間受付・全国対応