コラム

2026/01/23 コラム

不同意性交等罪の「後出し」とは?成立可否と誤解されやすい論点

不同意性交等罪に関する議論の中で、「後出し」という言葉が使われることがあります。
この言葉は法律用語ではありませんが、行為の後になってから被害の申告がなされるケースを指して用いられることが多い表現です。

こうした言葉の使われ方が、当事者や周囲の関係者の間に不安や誤解を生じさせている場面も見受けられます。

そこで本記事では、不同意性交等罪においていわゆる「後出し」と呼ばれる状況が、法的にどのように整理されるのかを解説します。どのような要件で犯罪の成否が判断されるのか、なぜ認識のズレが生じやすいのか、また当事者がどのような点に留意すべきかについて、法律の観点から整理していきます。

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【目次】

  1. 不同意性交等罪で言われる「後出し」とは?
  2. 不同意性交等罪は「後出し」でも成立するのかを整理!
  3. なぜ当事者間で「後出し」と感じる認識のズレが生じるのか?
  4. 「後出し」と評価されにくい判断軸を解説!
  5. 「後出し」と感じても避けるべき行動は?
  6. 不同意性交等罪で「後出し」を主張された場合の対応は?
  7. 不同意性交等罪の「後出し」で不安を感じたら須賀法律事務所へ相談

不同意性交等罪で言われる「後出し」とは?

「後出し」という言葉は、あくまで俗称として使われているにすぎず、刑事責任の有無を直接判断する基準にはなりません。実際の捜査や裁判では、被害申告のタイミングではなく、行為当時に同意があったかどうかが中心的な判断要素となります。

そのため、表現の印象だけで事案を捉えると、法律上の判断枠組みと実態との間にズレが生じやすくなります。

事後的に被害申告が行われる経緯

性犯罪の被害申告が事後的に行われるケースは、決して珍しいものではありません。被害者が当時の状況を整理し、自分に何が起きたのかを理解するまでには一定の時間を要することがあります。

特に恐怖や混乱、心理的ショックの中にあった場合、その場で適切な対応を取ることが困難であったという事情も考えられるのです。

また、第三者に相談したり、同様の事例について情報を得たりする中で、自身が受けた行為が法的に問題のあるものだったと認識するに至る場合もあります。

行為直後に警察や支援機関へ相談できる心理状態にない被害者も多く、時間の経過とともに冷静さを取り戻してから申告に至るという流れは自然なものとして理解されています。

「後出し」という言葉には「後からでっち上げた」というニュアンスが含まれがちですが、事後に被害申告が行われたという事実だけで、虚偽であると判断することはできません。申告の内容は個別の状況や証拠に基づいて慎重に検討される必要があります。

法律用語ではない「後出し」という表現

前述のとおり「後出し」という言葉は、法律の条文にも判例にも登場しない俗語であり、正式な法律用語ではありません。

この表現は「後出しジャンケン」や「言ったもん勝ち」といった日常的な言い回しから派生したものであり、法的な議論においては不正確な印象を与える危険性があります。

刑事法の世界では、犯罪の成否は行為時の状況と法的要件によって判断されるものであり、申告のタイミングそのものが犯罪の成立を左右するわけではないのです。

ただし、申告までの期間が長いほど証拠の収集が困難になり、事実認定に影響を及ぼす可能性はあります。しかし、それは「後出しだから無効」という単純な話ではなく、あくまで証拠に基づいた慎重な判断が求められるという意味にすぎません。

不同意性交等罪は「後出し」でも成立するのかを整理!

不同意性交等罪が成立するかどうかは、申告のタイミングではなく、行為時の状況と法的要件を満たしているかによって判断されます。

ここでは、法律上どのような要件が求められるのか、時系列と同意判断の関係について整理していきましょう。

犯罪成立に必要な法的要件

不同意性交等罪が法的に認められるには、刑法177条の2で規定された条件をクリアしなければなりません。

端的に言えば、相手の望まない性的行為が行われ、かつその人が拒絶の意思を持つ・示す・貫くといった行動を取れない状況だったと証明されることが必要です。

この「困難な状態」には、法律上明示的に定めがあるわけではありませんが、立法過程で示された典型的な類型として以下のような状態が挙げられます。

類型 具体的な状態
1. 暴行・脅迫 物理的な力の行使や言葉による威嚇によって意思表示が困難な状態
2. 心身の障害 精神的または身体的な障害により意思形成・表明が困難な状態
3. アルコール・薬物の影響 飲酒や薬物摂取により正常な判断や意思表示ができない状態
4. 睡眠その他の意識不明瞭 睡眠中や意識が朦朧としており意思表示が不可能な状態
5. 不意打ち 予期しない突然の行為により対応できない状態
6. 恐怖・驚愕 強い恐怖心や驚きにより思考・行動が制限される状態
7. 虐待に起因する心理的反応 継続的な虐待により抵抗できない心理状態に置かれている状態
8. 経済的・社会的地位による影響 立場の違いから不利益を恐れて拒否できない状態

 

これらの要件は、行為時の客観的状況と被害者の主観的状態の両面から判断されるものであり、単に「同意がなかった」と主張するだけでは成立しません。検察側は、これらの要件を証拠によって立証する責任を負っており、合理的な疑いを超える程度の証明が求められるのです。

したがって、申告が事後的であっても、行為時にこれらの要件を満たしていたことが証拠によって示されれば、犯罪は成立する可能性があります。逆に、申告が迅速であっても、法的要件を満たさなければ犯罪は成立しないという点も理解しておく必要があります。

時系列と同意判断の考え方

不同意性交等罪における同意の有無は、性交等の行為が実際に行われた時点の状況を基準に判断されるものであり、事後的な感情や認識の変化によって遡って決定されるものではありません。

重要なのは、性交等の行為が行われた時点において、被害者が自由な意思に基づいて同意していたかどうかという点です。

ただし、同意の判断は単純ではなく、当事者間のコミュニケーション、行為前後の状況、関係性、心理状態など、多角的な要素を総合的に考慮する必要があります。

例えば、行為の前後で被害者が明確に拒否の意思を示していたか・行為者がその意思を認識できる状況にあったか・被害者が意思表明できる状態にあったかといった点が検討されます。

また、行為後の当事者間のやり取りも、同意の有無を判断する際の参考資料となることがあるのです。「後出し」という言葉に含まれる「後から気が変わった」というニュアンスは、法的な同意判断の本質を捉えていません。

法的に問題となるのは、行為時に真の同意があったかどうかであり、事後的な心境の変化ではないという点を押さえておきましょう。

なぜ当事者間で「後出し」と感じる認識のズレが生じるのか?

不同意性交等罪をめぐる当事者間の認識の食い違いは、しばしば深刻な誤解と対立を生み出します。一方は「同意があった」と認識し、他方は「同意していなかった」と主張する状況が生じる背景には、複雑な心理的・社会的要因が存在しているケースが多いです。

ここでは、なぜこのような認識のズレが生じるのか、その主要な要因について掘り下げていきます。

当時に意思表示ができなかった背景

被害者が行為の当時に明確な拒否の意思を示せなかった理由は、多岐にわたります。恐怖や驚愕によって声が出せなくなる、体が硬直して動けなくなるといった生理的反応は、危機的状況における人間の自然な反応として知られています。

このような状態は「フリーズ反応」とも呼ばれ、意識的にコントロールできるものではありません。アルコールや薬物の影響で判断力が低下していた場合、適切な意思決定や意思表明が困難になることもあります。

さらに、予期せぬ状況に置かれたことによる混乱や、何が起きているのか理解が追いつかないまま事態が進行してしまうケースも少なくないのです。

「拒否しなかった=同意した」という単純な図式は、人間の心理や生理的反応の複雑さを無視したものであり、法的にも認められていません。

明確な拒否の意思表示がなかったとしても、それが真の同意を意味するわけではないという理解が、認識のズレを埋めるための第一歩となります。

関係性や心理的圧力の影響

当事者間の関係性や立場の違いが、同意の自由を制約する要因となることがあります。上司と部下、教師と学生、先輩と後輩といった上下関係が存在する場合、拒否することによる不利益を恐れて断れないという状況が生じやすいのです。

また、継続的な人間関係を維持したいという心理が働き、その場で強く拒絶することが困難になる場合もあります。

このような心理的圧力は、暴力や脅迫といった直接的な強制がなくても、被害者の意思決定の自由を実質的に奪うことがあるのです。

行為者側は「相手が嫌がっている様子はなかった」と認識していても、被害者側の心の中では全く違うことがあります。「断ったら関係が壊れる」「報復されるかもしれない」という恐怖の中で行為を受け入れざるを得なかったという状況は十分にあり得るでしょう。

こうした関係性の非対称性や心理的圧力の存在を考慮せずに、表面的な言動だけで同意の有無を判断することは適切ではありません。

「後出し」と評価されにくい判断軸を解説!

ここまでお伝えしてきたように、不同意性交等罪が成立するかどうかは、当事者の主張だけで決まるものではなく、客観的な証拠や当時の状況との整合性が重視されます。

ここからは、同意の有無を検討する際に着目される具体的な要素と、証拠同士の整合性がどのように判断されるのか解説します。

明確な同意が確認できる要素

法的に有効な同意と認められるためには、被害者が自由な意思に基づいて積極的に行為を受け入れたことが確認できる必要があります。単に拒否しなかったというだけでなく、言葉や行動によって明確に同意の意思を示していたかどうかが問われるのです。

具体的には、行為の前後における当事者間のコミュニケーション内容、被害者の言動や態度、その後の関係性の継続状況などが総合的に考慮されます。

行為前に性的な内容を含むメッセージのやり取りがあった・行為後も親密な関係が続いていた、といった事実は同意の存在を示唆する材料となり得ます。ただし、これらの要素があったとしても、それだけで必ず同意があったと判断されるわけではありません。

行為時の具体的な状況、被害者が置かれていた心理的状態、関係性の性質などを総合的に評価することが求められます。一貫性も判断要素であり、行為前後の言動に大きな矛盾がないかどうかが検討されるのです。

客観的証拠の整合性

不同意性交等罪の成否を判断する上で、客観的な証拠の存在とその整合性は極めて重要な意味を持ちます。メッセージアプリ(LINEなど)、SNSでのやり取り、通話記録、位置情報、防犯カメラの映像、第三者の証言など、様々な証拠が検討の対象となります。

これらの証拠が当事者双方の主張とどの程度整合しているか、矛盾点はないかという観点から慎重に分析されるのです。

例えば、被害者が「恐怖で何も言えなかった」と主張しているにもかかわらず、行為直後に友人的なメッセージを送っていたような場合、その説明と証拠の間に矛盾が生じることになります。

一方で、行為者が「完全に合意の上だった」と主張していても、被害者が直後に第三者へ助けを求めるメッセージを送っていれば、その主張の信憑性は疑われることになるでしょう。

重要なのは、個々の証拠を断片的に見るのではなく、全体として整合性のある事実関係が構築できるかどうかという点です。証拠の評価においては、時系列の整理と各証拠の相互関係の検討が不可欠となります。

「後出し」と感じても避けるべき行動は?

不同意性交等罪で「後出し」だと感じたとしても、感情的な対応や不適切な行動は状況を悪化させる危険性があります。冷静さを失った行動は、法的にも不利な立場に自分を追い込む結果となりかねません。

ここでは、当事者が避けるべき具体的な行動について説明します。

感情的な否定や一方的な発信

被害申告を受けた際に、感情的に強く否定したり、SNSなどで一方的な主張を発信したりする行為は極めてリスクが高い対応です。こうした行動は、相手への圧力や証拠隠滅の意図があったと解釈される可能性があり、むしろ不利な状況を作り出してしまいます。

特にSNSでの投稿は、不特定多数の目に触れることで名誉毀損やプライバシー侵害の問題を引き起こす危険性があるのです。

また、被害者に対して直接連絡を取り、説得や謝罪を試みる行為も慎重であるべきでしょう。相手が恐怖や不安を感じている状態で接触を図ることは、ストーカー規制法や脅迫罪に該当する可能性さえあります。

強い否定表現や攻撃的な言葉遣いは、事態を冷静に解決する道を閉ざし、かえって自分の立場を悪くする結果を招きかねません。

どれほど理不尽に感じたとしても、一方的な情報発信や感情的な対応は控え、専門家の助言を得ながら適切な対応を取りましょう

証拠となり得るデータの削除

メッセージアプリ(LINEなど)、メールの履歴、写真、通話記録など、事実関係を示す可能性のあるデータを削除する行為は絶対に避けるべきです。こうした行動は証拠隠滅とみなされ、刑事事件において極めて不利な評価を受けることになります。

仮に自分に有利な内容が含まれていたとしても、削除行為そのものが「隠したい何かがあった」という疑いを生み、信用性を大きく損なう結果となるのです。

また、相手方が同じデータのバックアップを持っている可能性もあり、削除したつもりでも証拠として提出されることがあります。その場合、削除したという事実だけが残り、「都合の悪い証拠を消そうとした」という印象を与えてしまうでしょう。

証拠の保全は、自分を守るためにも相手の主張を検証するためにも必要不可欠です。不安や恐怖から削除したくなる気持ちは理解できますが、データはそのまま保存し、専門家の判断を仰ぐことが賢明な対応となります。

不同意性交等罪で「後出し」を主張された場合の対応は?

不同意性交等罪で被害申告がなされた場合、適切な初動対応が事態の行方を大きく左右します。感情に流されず、法的に正しい手順を踏むことが自分を守ることにつながるのです。ここでは、申告を受けた際に取るべき具体的な対応について解説します。

事実関係の整理

まず最初に行うべきは、冷静に事実関係を整理することです。いつ、どこで、何があったのか、どのようなやり取りがあったのかを時系列に沿って可能な限り詳細に書き出す作業が必要となります。

この際、自分の記憶と客観的な記録(メッセージ、写真、位置情報など)を明確に区別することが重要です。記憶は時間の経過とともに変化したり、感情によって歪められたりする可能性があるため、客観的な証拠に基づいて事実を確認する姿勢が求められます。

また、当時の自分の認識や相手の様子についても、できるだけ具体的に記録しておくことが望ましいでしょう。ただし、この段階で自分に都合の良いように事実を歪めたり、創作したりすることは絶対に避けなければなりません。

虚偽の説明は後に大きな不利益をもたらすことになるため、誠実に事実を整理する姿勢が何よりも大切です。

専門家への早期相談

事実関係の整理ができたら、できるだけ早い段階で弁護士などの専門家に相談することが不可欠です。不同意性交等罪は複雑な法的判断を要する事案であり、自己判断で対応することは極めて危険といえます。

弁護士は、収集した証拠や事実関係を法的な観点から分析し、取るべき対応や注意すべき点について適切な助言を提供してくれるでしょう。警察や検察からの事情聴取に対してどのように対応すべきか、どのような権利があるのかについても説明を受けることができます。

早期に専門家の関与を得ることで、不適切な対応によって状況を悪化させるリスクを最小限に抑えることが可能となるのです。刑事事件に発展する可能性がある場合、初動対応の適切さが最終的な結果に大きな影響を与えることを認識しておく必要があります。

費用や時間を惜しんで自己判断で進めることは、結果的により大きな代償を払うことになりかねません。

不同意性交等罪の「後出し」で不安を感じたら須賀法律事務所へ相談

不同意性交等罪における「後出し」という表現は法律用語ではなく、事後的な被害申告を指す俗語です。犯罪の成否は申告のタイミングではなく、行為時の状況と法的要件によって判断されます。

もしも申告を受けた際は感情的な対応や証拠削除を避け、事実関係を整理した上で専門家へ早期に相談することが重要となります。

須賀法律事務所は刑事事件に精通した弁護士が在籍し、不同意性交等罪に関する豊富な経験と専門知識を持つ法律事務所です。24時間365日対応可能な相談窓口を設けており、緊急性の高い案件にも迅速に対応いたします。

受任契約までオンラインや電話、郵送等やり取りで完結できる体制も整えており、解決まで最短で動きます。不同意性交等罪で不安を感じている方は、一人で抱え込まず、まずは須賀法律事務所へご相談ください。

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この記事の執筆者

須賀 翔紀(弁護士)の写真

須賀 翔紀(弁護士)

須賀事務所 代表弁護士。刑事弁護・犯罪被害者支援を専門とし、これまでに500件以上を担当。

監修

須賀法律事務所

初出掲載:2026年1月23日
最終更新日:2026年1月23日

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