コラム

2025/11/14 コラム

不同意性交罪の起訴率はどのくらい?不起訴処分になるケースや不起訴になるためにできることを解説!

不同意性交等罪は、刑法の改正により新たに明確化された重大な性犯罪のひとつです。従来の「強制性交等罪」から名称と内容が変更され、被害者の同意の有無をより重視した法体系となりました。

しかし、実際に事件が発生したとしても「起訴」まで至らないケースも多く、なかには不起訴処分となる例も少なくありません。

この記事では、不同意性交等罪の定義や成立要件、実際の起訴率の状況、そして不起訴となる理由やそのために取るべき行動について詳しく解説します。法律的な視点から冷静に理解することで、万が一の際に適切な対応ができるようになります。

【目次】

  1. 不同意性交罪とは?
  2. 不同意性交罪の起訴率はいくら?
  3. 不同意性交罪で不起訴処分になるケースとは?
  4. 不同意性交等罪で逮捕された場合の流れとリスクとは?
  5. 不同意性交等罪で不起訴になるためにできること
  6. 不同意性交罪で逮捕の心配がある方は須賀法律事務所へ

不同意性交罪とは?

不同意性交等罪とは、被害者が同意していない、または抵抗できない状態で性交等を行った場合に成立する犯罪のことです。これまでは「強制性交等罪」として処罰されていましたが、令和5年7月13日の刑法改正により「不同意性交等罪」として新たに規定されました。

この罪が成立するのは、次の2つの条件のいずれかを満たす場合です。

  • 暴行または脅迫
  • 心身の障害
  • アルコールまたは薬物の影響
  • 睡眠その他の意識不明僚
  • 同意しない意思を形成、表明又は全うするいとまの不存在
  • 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖又は驚愕
  • 虐待に起因する心理的反応
  • 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮

また、改正後は性交や肛門性交、口腔性交のほか、身体の一部や物を用いた挿入行為も処罰対象となりました。法律婚・事実婚を問わず、配偶者や恋人の間でも成立する点が重要です。

性交同意年齢も13歳未満から16歳未満に引き上げられました。13歳以上16歳未満の未成年者と性交を行った場合、行為者が5歳以上年上であれば処罰対象になります。改正刑法では、被害者の同意をより重視し、実態に即した処罰範囲へと拡大されています。

不同意性交罪の起訴率はどのくらい?

不同意性交等罪は、社会的にも注目度が高い犯罪ですが、実際の起訴率を見ると決して高くはありません。2023年版の検察統計年報によると、不起訴率はおよそ67%にのぼります。つまり、被疑者として事件化しても、約3分の2は起訴に至っていないのです。

この背景には、被害者の証言や証拠の確保が難しいことが大きく関係しています。性犯罪は密室で行われるケースが多く、客観的な証拠が少ないため、検察が「有罪を立証できる」と判断できるケースは限られてしまうのです。

不同意性交等罪には罰金刑がなく、起訴されれば懲役刑のみが科されるという特徴もあります。そのため、略式裁判は行われず、起訴された場合は必ず公開法廷での正式裁判になります。検察としても、証拠が十分にそろっていないまま起訴するリスクは高く、結果として不起訴率が上がる傾向にあるのです。

こうした統計からもわかるように、不起訴処分となるかどうかは、捜査段階での証拠や被害者・被疑者双方の供述内容に大きく左右されます。実際の判断は非常に慎重に行われており、単に「訴えられた=起訴される」というわけではない点に注意が必要です。

不同意性交罪で不起訴処分になるケースとは?

不同意性交等罪で逮捕や書類送検されたとしても、必ずしも起訴に至るわけではありません。実際には「不起訴処分」として事件が終結するケースも多く存在します。不起訴処分とは、検察官が「公判で有罪を立証できるだけの証拠がない」もしくは「訴追の必要がない」と判断した場合に下す決定のことです。

不起訴にはいくつかの種類があり、代表的なものとして「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」があります。ここでは、不起訴処分として判断される2つのケースについて詳しく見ていきましょう。

嫌疑なし・嫌疑不十分

不同意性交等事件で警察の捜査を受けることになった場合、まず被疑者が犯罪事実を認めるのか、それとも争うのかという点が大きな分岐点となります。被疑者が一貫して否認を貫き、検察官が「不同意性交等罪を犯したとの嫌疑が証拠上認められない」と判断した場合、「嫌疑なし」として不起訴処分となります。

しかし、実際に「嫌疑なし」となるケースはごく少数です。多くの場合は、何らかの嫌疑が存在して捜査が開始されているため、完全に嫌疑を否定できる事例は限定的です。こうした点から、証拠がある程度存在するものの、起訴できるほど十分ではない場合には「嫌疑不十分」として不起訴処分が下されます

刑事事件では、被疑者が罪を犯したことを証明する責任は捜査機関側にあります。つまり、検察官が「有罪を立証できる」と確信できるだけの証拠がそろっていない限り、起訴には踏み切れません。被害者の供述の一貫性が欠けている、物証が存在しない、客観的証拠が乏しいなどの場合には、「嫌疑不十分」として不起訴となるのです。

起訴猶予

不同意性交等事件で被疑者が犯罪事実を認め、さらに証拠も十分にそろっている場合、原則として検察官は起訴(公判請求)を行います。性犯罪は社会的影響が大きく、再犯防止や被害者保護の観点からも厳正な処罰が求められるためです。

しかし、事件の内容やその後の対応によっては、検察官の裁量により「起訴猶予」として不起訴処分となる場合があります。起訴猶予とは、犯罪の事実は認められるものの、被疑者の反省や示談成立、社会的制裁の有無など、さまざまな情状を考慮して検察官が「今回は起訴しない」と判断する処分のことです。

被害者との間で示談が成立している場合や、被疑者が初犯で再犯の可能性が低いと判断される場合、また事件の内容が比較的軽微である場合など
が該当します。検察官は、刑事処分を下すことでかえって社会復帰を妨げる可能性があると考えたとき、社会的相当性の観点から起訴を見送ることもあるのです。

なお、2023年版の検察統計年報によれば、不同意性交等罪で不起訴となった事件のうち、約30%が起訴猶予によるものとされています。つまり、被疑者が犯罪を認めていても、示談や反省などの事情によって不起訴になるケースが一定数存在するということです。

不同意性交等罪で逮捕された場合の流れとリスクとは?

不同意性交等罪は、警察が積極的に動く犯罪の一つとされています。前述のとおり密室で行われることが多く、供述内容の食い違いや証拠保全の必要性から、早期に身柄を確保して捜査を進める傾向が強いのが特徴です。

一方で、逮捕前に弁護士を依頼して対応することで、在宅捜査に切り替えられるケースもあります。ここでは、逮捕された後の流れと、そこに伴うリスクについて詳しく見ていきましょう。

逮捕された場合の流れ

不同意性交等罪では警察は事件の性質上、被害者の供述や証拠保全のため、早期に身柄を拘束する必要があると判断することが多いです。逮捕の前に弁護士をつけて適切に対応できれば、在宅捜査で済む場合もありますが、何も対処せずにいると、突然自宅や職場に警察が来て身柄を拘束されることもあります。

逮捕されると、不同意性交等罪の場合はすぐに釈放されることは難しく、10日間の「勾留」が認められる可能性が高いです。検察官が勾留延長を請求するケースも多く、最長で20日間ほど拘束されることになります。

もし起訴されてしまった場合、弁護士は「保釈請求」を行い、裁判までの間に釈放を目指します。保釈が認められれば一時的に自宅に戻ることができますが、共犯者がいる場合や犯罪事実を否認している場合などは、保釈が認められにくくなっているのです。

不同意性交等罪は刑法上の重大犯罪とされており、罰金刑がないため、被害者と示談できなければ起訴・公判請求されるのが一般的です。初犯であっても、被害者への弁償や謝罪などの情状がなければ、実刑判決となることもあります。

逮捕された場合のリスク

不同意性交等罪で逮捕された場合、被疑者には次のような重大なリスクが発生します。

  • 裁判・実刑となる可能性が高い
  • 事件報道による社会的信用の失墜
  • 長期の身体拘束による仕事・生活への影響
  • 重い刑罰による長期服役のリスク

不同意性交等罪の起訴率は検察統計上およそ3割とされていますが、逮捕されている事件に限定すると、起訴率はさらに高くなる傾向があります。逮捕された時点で起訴・裁判に発展する可能性はかなり高いということです。

この罪は他の性犯罪と比べて報道されやすい特徴もあります。社会的関心が高いため、事件としてニュースやネットメディアで取り上げられることが多く、逮捕や起訴の段階で氏名や勤務先が報道されるケースもあり、職場や家族、知人に事件が知られ、社会的信用を大きく損なう結果につながりかねません。

不同意性交等罪の捜査では身体拘束期間が長引く傾向があるため、社会人の場合は仕事への影響も非常に大きくなります。勤務先に事件が発覚すれば懲戒解雇の可能性があり、仮に解雇を免れても、20日間前後の拘束期間中は勤務ができず、収入が途絶えるリスクがあります。

なお、この罪の法定刑は「5年以上20年以下の懲役」という非常に重いものであり、罰金刑は設けられていません。したがって、逮捕後に示談が成立しなかった場合や、被疑者に有利な事情が認められない場合には、初犯であっても実刑判決を受ける可能性が高まります。

不同意性交等罪で不起訴になるためにできること

不同意性交等罪は、成立すれば非常に重い刑罰が科される重大犯罪です。そのため、もし関与の疑いを持たれた場合や、捜査を受ける可能性がある場合には、できる限り早い段階で不起訴を目指した行動を取ることが重要です。

特に、事件が明るみに出る前に自ら行動を起こす「自首」や、弁護士への早期依頼は、検察官の判断に大きな影響を与える可能性があります。ここでは、不起訴にするためにできる2つのことについて解説します。

自首をする

不同意性交等罪の不起訴を目指すうえで、有効な選択肢のひとつが「自首」です。自首とは、捜査機関に発覚する前に、自ら犯罪事実を申告して出頭することです。自首を行うことで、事件への反省や誠意ある姿勢を示すことができ、検察官が量刑や起訴の可否を判断する際に有利に働くことがあります。

警察がまだ事件を把握していない段階で自首をすれば、「自発的に罪を認めた」として情状が大きく考慮されます。その結果、検察官が「社会的制裁をすでに受けている」「更生の見込みが高い」と判断すれば、起訴猶予や不起訴処分となる可能性があるのです。

自首は被害者との示談交渉のきっかけになることもあります。被害者に対して早期に謝罪や賠償の意志を伝えれば、示談が成立する可能性が高まり、これが検察の判断に影響を与える場合も少なくありません。

ただし、自首を行う際には、感情的に行動するのではなく、必ず弁護士と相談したうえで行うことが大切です。弁護士が同行することで、手続きの不備を防ぎつつ、供述内容が不利に扱われないよう慎重に対応できます。

自首は不起訴を得るための有効な方法のひとつですが、そのタイミングや方法を誤ると逆効果になることもあります。必ず専門家の助言を受けながら、最適な手続きを選択するようにしましょう。

弁護士に依頼する

不同意性交等罪で不起訴を目指すためには、できるだけ早い段階で弁護士に依頼することが極めて重要です。弁護士が介入することで、警察や検察の捜査に対して適切な対応ができるようになり、逮捕や勾留を回避できる可能性が高まります。

実際、被疑者が女性から「酔って意識がない状態で性交された」と被害申告されたケースで、弁護士が早期に関与し、事件当日の状況を丁寧に聴き取って整理した事例があります。その結果、女性が性交時に会話をしていたことや、その後も被疑者と親しく連絡を取っていたことなど、被害申告と矛盾する事実が複数判明しました。弁護士は取調べ前に被疑者へ説明内容を指導し、的確に供述できるよう準備したことで、最終的に検察官が嫌疑不十分として不起訴処分を下したのです。

このように、弁護士が早期に証拠や供述の整理を行うことで、誤解や一方的な見方に基づく起訴を防げる可能性があります。性行為自体は認めていても「暴行や脅迫はなかった」と争うケースの場合は、弁護士が現場調査を行い、被疑者の主張を裏付ける客観的な証拠を集めることが重要です。事実、強制性交等被疑事件でも、弁護士が示談成立まで粘り強く交渉を行い、検察官が起訴を見送った例もあります。

弁護士の早期介入は「逮捕・勾留を避ける」「有利な証拠を整理する」「示談を成立させる」という3つの面で極めて効果的です。不同意性交等罪のように重い刑罰が定められた事件では、初動対応の遅れが結果を大きく左右するため、できる限り早く弁護士に依頼することが不起訴を勝ち取るための第一歩となります。

不同意性交罪で逮捕の心配がある方は須賀法律事務所へ

不同意性交等罪で逮捕の可能性がある場合、早期に弁護士に相談することが非常に重要です。

「もっと早く相談していれば身柄拘束や起訴処分を避けることができた」という悲劇を避けるために、須賀法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が逮捕前の対応から取調べへの立ち合い、示談交渉や証拠収集までトータルでサポートします。

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この記事の執筆者

須賀 翔紀(弁護士)の写真

須賀 翔紀(弁護士)

須賀事務所 代表弁護士。刑事弁護・犯罪被害者支援を専門とし、これまでに500件以上を担当。

監修

須賀法律事務所

初出掲載:2025年11月14日
最終更新日:2025年11月14日

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