コラム

2025/11/12 コラム

不同意性交罪の慰謝料の相場はいくら?金額を左右する5つの要因や支払えない場合の対応方法を解説

不同意性交罪は、近年の性犯罪をめぐる議論の中で、避けて通れない重要なテーマとなっています。被害者の声を受けて制度が見直されるなど、社会の意識変化を象徴する法律でもあるためです。

今回の記事では、「不同意性交罪」における慰謝料(示談金を含む金銭補償)の相場がどれくらいか、どのような要因で金額が変わるか、またもし支払えない場合にはどう対応すればよいかを、わかりやすく整理して説明します。

金額や交渉の実際、法的なリスクなどを冷静に理解できるよう、専門論点にも触れつつ、具体的なイメージを持てるように解説します。

【目次】

  1. 不同意性交罪とは?
  2. 不同意性交罪の慰謝料の相場はいくら?
  3. 不同意性交罪の示談金が高くなる要因
  4. 不同意性交罪の慰謝料が決まる示談とは?
  5. 不同意性交罪の示談が成立するとどうなる?メリットを解説
  6. 不同意性交罪の示談を成立させるための3つのポイント
  7. 不同意性交等の弁護士費用の相場は?
  8. 不同意性交罪で逮捕の心配がある方は須賀法律事務所へ

不同意性交罪とは?

性的な関係を持つ際には、相手の明確な同意が必要です。しかし、「不同意性交罪(旧称:強制性交等罪などを含む)」とは、相手の自由意思を尊重せず、同意を得ないまま性交を行うことを処罰対象とする刑事罪です。具体的な例としては、以下が該当します。

    • 暴行・脅迫を用いて行われる性交行為
  • 相手が心神喪失や抗拒不能状態であることを利用して行われる性交行為
  • 相手が明確に拒否する意思を示しているにもかかわらず行われる性交行為
  • 酩酊などで正確な判断力を欠いている状況を利用して行われる性交行為

法定刑としては、5年以上の拘禁刑が原則になります。性的自己決定権という重大な法益を侵害するものと評価され、刑法では重い処罰が科され得えることに加え、被害者に対して肉体的・精神的な被害をもたらす可能性が高いため、社会的にも非常に深刻な事案となるのです。

刑事手続上は、被害届・告訴がなされ、捜査・起訴・審理が行われることになりますが、示談交渉が成立するかどうか、被害者の処罰感情、加害者の反省態度などが量刑判断にも影響を与えます。被害者から慰謝料や損害賠償を求められるケースもあれば、示談金という形での解決を目指すこともあるのです。

不同意性交罪の慰謝料の相場はいくら?

慰謝料や示談金の金額は、事案ごとに大きく変動するため、正確な数字を断言することはできませんが、実務上の目安として、不同意性交等事件における示談金(慰謝料を含む補償全体)の目安としては、100万円〜300万円程度であると言われています。

より重篤な被害や悪質な行為を含むケースでは、100万円〜500万円程度とする見解もあり、一部では50万円〜300万円程度とするもの、強姦事案で50〜300万円とするものも見られます。これまでのケースでは100〜300万円というレンジがまず目に付きますが、上述のような範囲でしか判断できないのは、被害の程度や交渉力、当事者間の事情が非常に影響を与えるからです。

「示談金」と「慰謝料」はしばしば混同されますが、刑事性犯罪の示談においては、被害者が受けた被害すべて(精神的苦痛、治療費、その他損害など)を一括して「示談金」と呼ぶことが多いです。その中に慰謝料(精神的苦痛への賠償)や治療実費・通院交通費などが含まれます。

ただし、被害者が重大な後遺障害を負った、PTSDを発症して長期治療を要する、被害者が未成年、加害者が高収入・高社会的地位という事情がある場合などは、示談金が500万円を超える可能性も排除できません。一般的には民事裁判で認められる額が上限となりますが、300万円ほどはかかると思っておいた方が良いでしょう。

不同意性交罪の慰謝料額を左右する5つの要因

不同意性交罪がどういった罪で、相場として慰謝料がどの程度になるのかが分かったところで、実際に慰謝料を左右する要素はどんなものがあるかを知ることも非常に大切です。

以下の5つの要因が、慰謝料(示談金)額に強く影響を与えるとされます。それぞれについて、具体的に見ていきましょう。

①犯行内容や計画性の有無

犯行が突発的なものか、綿密な計画に基づくものか、手口が巧妙だったかどうか、複数回実行されたかどうかなどの要素は、加害者側の責任性を強め、慰謝料額を引き上げる要因となります。

たとえば、被害者を複数回呼び出して同意を得ずに性交を行った、場所や時間を選んで周到に計画されたもの、被害者を薬で眠らせて意識不明の状態を利用したケースなどは、極めて悪質と判断されやすく、示談金を高額化させる事情となります。犯行と示談交渉の間に虚偽説明や証拠隠滅があれば、被害者側および検察・裁判所からの評価が一層厳しくなるでしょう。

これに対して、計画性が薄く、加害者が後になって動揺して交渉を申し入れたなどの事情があれば、ある程度交渉余地が残ることもあります。ただし、それでも性行為無同意という根本の侵害性が消えるわけではありません。

暴行・脅迫の有無・強度、被害者の抵抗の可能性を抑えた手段などもこの要因に含まれ、これらが重いほど示談金額は跳ね上がる方向に働きます。

②被害者の年齢

被害者が若年者(たとえば未成年者)である場合、身体的・精神的ダメージを大きく受ける可能性が高く、社会的保護の観点からも慰謝料が高額化しやすいです。特に未成年者であった場合には、この傾向が顕著にあります。

被害者が13歳未満、あるいは16歳未満で加害者との年齢差が大きい場合は、被害者保護の観点が強く働き、その点が交渉・裁判の場で重視されます。年齢が若いほど将来への影響、人格形成への損害といった主張が提出されやすく、慰謝料を引き上げる根拠になりえるのです。

被害者年齢という要素は加害者の責任をより厳しく問う材料とされ、示談金額の増額要因になることが多いです。年齢が離れている、被害者が若年であればあるほど、不同意性交にかかわる慰謝料の額は大きくなると思っておいた方が良いでしょう。

③身体的被害の有無と程度

性交行為そのものに伴う肉体的損傷(性器の傷害・炎症・出血など)や併発する傷害(打撲・打撃など)がある場合、それらの治療費や後遺障害リスク、日常生活への影響などを考慮して慰謝料額が上振れします。

例として、出血を伴い、将来的に性機能低下リスクがあると医師が認めるようなケースでは、高額化の根拠になりえます。被害者が長期入院・通院治療を余儀なくされる場合、その治療費や通院交通費、付添者負担なども示談金に含めて請求されることとなるのです。

こうした例から、実質的な慰謝料部分だけでなく実費補償の観点からも金額が大きくなることがあります。逆に、肉体的な傷害が比較的軽微であった、治療期間が短かったなどであれば、金額抑制の材料になり得ますが、精神的苦痛を無視できるという意味ではありません。

④被害者の精神的苦痛の度合い

被害者が受けた精神的ショックやトラウマ、PTSD発症、うつ状態、不眠障害などの診断がついているかどうか、その程度・継続性・治療必要性などが、慰謝料額を大きく左右します。

もし医師の診断書・カウンセリング記録・通院履歴があり、長期間治療が必要であると認められるならば、被害者側交渉としては高額慰謝料を主張しやすくなります。一方、被害者が明確な診断や治療記録を残していない場合は、加害者側が争点にして慰謝料を抑えようとする材料になる可能性も高いです。

被害者の職業喪失、社会生活制限、心理的な回復不能性(後遺的精神的ダメージ)などを主張できる条件があれば、これも慰謝料を大きく押し上げる根拠になり得ます。精神的苦痛というのは金銭換算が難しいため、交渉や裁判では「どれだけ証拠を揃えられるか」が勝負になることが多いです。

⑤加害者の経済状況や社会的立場

加害者側の収入・資産・社会的地位(例えば公務員・企業役員・著名人など)も、慰謝料交渉・算定において参照されることがあります。特に、加害者が高い収入を得ている場合、被害者側が「同等の補償を得られるべき」として高額請求を主張する材料になることがあります。

加害者に反省や謝罪の姿勢があるかどうか、前科の有無、交渉段階で誠意を示すかどうかも実務上影響を与える要素です。誠意ある対応をとれば、やや減額の余地が与えられることもあります。

逆に、加害者が資力を主張して支払不能を理由に慰謝料を減らしたいと主張する場合、被害者側が「それは責任逃れだ」として反論材料にすることもあるでしょう。

不同意性交罪の慰謝料が決まる示談とは?

示談とは、刑事事件や民事紛争において、当事者間で話し合って合意を取り付け、訴訟(刑事処分・裁判)を回避・軽減または穏便に解決する手段です。不同意性交罪の文脈では、被害者と加害者が、加害者側から金銭・条件などを提示して被害者の処罰感情を和らげ、被害届(告訴)取り下げや検察・裁判手続きへの影響をもたらすような合意を目指すものとなります。

示談交渉が成立すれば、加害者が被害者に示談金・慰謝料・治療費などを支払い、被害者も告訴取り下げや処罰感情の軽減、示談書への署名などを行うことになります。示談書には、示談金の支払方法・支払期限・接触禁止条項・守秘義務などが盛り込まれることが一般的です。

示談はあくまでも「当事者合意」による解決であるため、被害者側が同意しなければ成立しません。また、示談が成立したとしても、それ自体が必ず不起訴や無罪を保証するものではありませんが、検察・裁判所の判断に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

実務上、示談交渉を行うには、被害者との接触方法、代理人(弁護士)が間に入るかどうか、示談条件の整理、交渉日程調整、証拠提示(被害状況や加害者の事情)などが関わります。交渉がまとまれば、示談書を作成し、両者署名押印して初めて契約的効力を持ちます。

示談にはメリット・リスクがあり、メリットとしては、刑事処分を軽減できる可能性、被害者感情を和らげる可能性、迅速に解決できる可能性などがあります。反面、リスクとしては、被害者が後から同意を取り消す・示談後も訴訟を起こすという可能性、示談交渉そのものが被害者に二次被害をもたらすことなども考慮する必要があることを覚えておきましょう。

不同意性交等罪の慰謝料を支払えない場合の対応方法

示談金・慰謝料を支払う義務が生じたとしても、加害者側が一括で支払えないケースは珍しくありません。こうした場合、どのような対応が望ましいのでしょうか。

ここからは、不同意性交等罪で慰謝料を支払うことができないとなった場合に取ることができる対応方法をご紹介します。

支払い能力に応じた減額・和解条件の見直しを申し入れる

加害者が資力に乏しいなど支払い能力が限定されている場合には、被害者側に対して、示談金の減額を求めたり、和解条件(支払い期限、分割条件、利息設定など)の見直しを申し入れることが可能です。

ただし、被害者側が増額を強く希望する場合、被害者の理解を得る交渉が必要です。支払い能力を証明する資料(収入証明・家計収支表など)を準備し、誠実に事情を説明することが信頼を得る第一歩です。

示談交渉の段階で減額案を複数提示して「こちらなら支払える」というラインを示し、被害者側との妥協案を探ることも、場合によっては可能でしょう。

分割払いや支払い計画の再協議を行う

一括払いが困難な場合、被害者側に対して分割払い案を提案し、支払いスケジュールを調整することも一般的な方法です。月額払いや年次払い、ボーナス月払いなど、加害者の収入変動に応じた計画を示すことで、被害者側からの理解を得やすくなります。

場合によっては、利息や保証金を加えることで譲歩を示し、分割払いを認めてもらうことが交渉上有利となるケースもあります。ただし、被害者側にとって支払能力・履行性の保証が重要なので、支払いが確実になるような条件(担保、保証人、支払い停止条項など)を設定することが望ましいです。

また、分割払いの途中で支払い不能になった場合の扱い(残債一括請求、遅延利息、残額免除の可否など)を予め示談書に定めておくことが必須です。

弁護士に相談する

慰謝料や示談交渉の法律面・実務面は非常に複雑です。被害者側・加害者側のいずれであっても、示談経験の豊富な刑事事件・性犯罪案件に強い弁護士に相談・代理を依頼することが最も確実な方法です。

被害者との交渉の取り継ぎ、示談条件案の作成、交渉戦略、証拠整理、心理的配慮、示談書作成などを代行してもらえ、刑事事件処理上、示談成立が起訴猶予や執行猶予の判断要素となることも多いため、弁護士を入れることで示談の影響力を高めることができます。

これらに加えて、被害者対応(意向確認、二次被害防止配慮など)や示談後の履行管理も、弁護士が関与することでリスクを下げられます。被害を受けた後は、警察への相談と合わせて弁護士に頼ることも必須といえるでしょう。

不同意性交罪で逮捕の心配がある方は須賀法律事務所へ

このように、不同意性交罪の慰謝料は、100~300万円が一般的な目安とされることが多いものの、事案の悪質性、被害者年齢・被害程度・精神的苦痛、加害者の立場・資力などによって大きく変動します。示談交渉を有利に進めたい場合には、支払能力に応じた減額交渉・分割案提示をすること、そして専門弁護士の関与が非常に重要です。

もし、不同意性交罪で逮捕の可能性を懸念している方や示談を検討中の方は、須賀法律事務所にご相談ください。刑事事件に特化し、性犯罪にも専門知識と強みを持つ法律事務所です。示談交渉による解決を目指すだけでなく、被害者対応・証拠整理・法的主張構成などトータルで支援します。

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この記事の執筆者

須賀 翔紀(弁護士)の写真

須賀 翔紀(弁護士)

須賀事務所 代表弁護士。刑事弁護・犯罪被害者支援を専門とし、これまでに500件以上を担当。

監修

須賀法律事務所

初出掲載:2025年11月12日
最終更新日:2025年11月12日

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