2025/07/04 コラム
【風営法改正で看板が真っ黒に】ホストクラブで何が禁止された?2025年の新ルールを解説!
「え、歌舞伎町のホストクラブの看板が真っ黒!?」
最近、そんな異変に気づいた方も多いのではないでしょうか。
これまで煌びやかに飾られていたホストの顔写真や、「No.1」「億プレイヤー」などのキャッチコピーが、軒並み黒く塗りつぶされているのです。
この“黒塗り現象”の原因は、2025年の風営法改正による広告規制の強化。
ホスト業界では常識だった「ランキング表記」や「神」「推せ」などの言葉も、誇大広告や誤認を招く表現とされ、使用がNGになりました。
たとえば、こんな表現が禁止対象に:
-
「No.1ホスト在籍」
-
「〇億円プレイヤー」
-
「伝説」「唯一無二」「神」
-
「全力で推せ」などのファン煽り系文言
ホストクラブにとって、看板はまさに“店の顔”。
その看板が突然黒く塗られるというのは、業界にとって大きな衝撃です。
この改正で何が変わったのか、次のセクションから詳しく見ていきましょう。
そもそも風営法とは?
「風営法」とは、正式には
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といいます。
ホストクラブやキャバクラ、ガールズバー、スナックなど、接待を伴う飲食店や深夜営業の店舗を対象に、営業方法や広告などに一定のルールを設ける法律です。
この法律の目的は、
「善良な風俗の保持」と「清浄な風俗環境の確保」。
つまり、風俗営業によって地域の治安や秩序が乱されることを防ぎ、健全な社会環境を維持することが狙いです。
2025年の風営法改正では、特にホストクラブを中心とする接待業界における深刻なトラブルの多発が、大きな社会問題として注目されました。
中でも代表的なのが、以下の2つです。
売掛金トラブルの急増
ホストクラブでは、客が当日支払わずに後日まとめて支払う「売掛(つけ払い)」が一般的に行われています。
しかし、過剰な営業トークや色恋営業を背景に、現実離れした高額請求が発生し、支払い能力を超えた債務を負わされる女性が続出しました。
-
月数十万~数百万円にのぼる請求
-
支払いのために借金・風俗勤務を余儀なくされる
-
未成年への売掛で家庭崩壊や退学に至るケースも
これらのケースでは、精神的・経済的に追い詰められた女性が、自ら命を絶つに至った例も報道されており、社会的な非難が強まりました。
売春強要・性的搾取の温床に
一部のホストは、「売掛を返すなら風俗で働け」「体を使って稼げば返せる」といった発言で、事実上売春を強要するケースも確認されています。
なかには、店舗側が特定の風俗店や撮影業者とつながっており、組織的に女性を斡旋していた実態が明るみに出た事例もあります。
こうした行為は、労働者保護の観点からも重大な人権侵害であり、警察・自治体・国会でも取り上げられるようになりました。
このような背景を受けて、2025年の改正では、単なる営業ルールの見直しではなく、
-
「恋愛感情を利用した営業行為の禁止」(色恋営業の規制)
-
「誇大広告・煽動的表現の禁止」(広告規制の強化)
-
「無許可営業や不適格者の排除」(欠格事由の拡大)
といった、実態に踏み込んだ実効性のある法規制が導入されました。
今回の改正は、ホスト業界全体の構造的な問題に切り込み、被害の再発防止を目指すものです。加えて、国の法律だけでなく、自治体による条例によって独自に広告規制を強化する動きも進んでいます。単なる「営業手法のルール変更」ではなく、「業界の健全化と社会的責任を問う姿勢の転換点」といえるでしょう。
2025年の風営法改正で何が変わった?
2025年の風営法改正では、風俗営業に関する広告・人材確保・営業資格の3つの面で、大きな見直しが行われました。とくにホストクラブをはじめとする接待業界に直接関わる変更が多く、現場にも強い影響を与えています。
▷ 広告規制の強化
まず注目されたのは、店頭広告に使える表現の明文化です。
これまではグレーとされていた誇張表現や煽り文句について、具体的な禁止例が示されました。以下のような表現が、店頭広告・看板などでは使用できなくなっています。
-
「No.1」
-
「神」「レジェンド」
-
「〇億円売上」
-
「推せ」「○○に溺れろ」などの感情を煽る言葉
ただし、SNSやLINEでの個別メッセージ等については、現時点では規制の対象外とされています。とはいえ、今後の実態次第では見直しの可能性も否定できません。
▷ 性風俗関連事業者のスカウト報酬禁止
これまで一部で常態化していた「スカウトバック(紹介料)」の支払いについても、明確に禁止されました。
スカウト行為そのものが違法になるわけではありませんが、紹介に対する報酬のやり取りが、違法な人材斡旋や労働トラブルの温床として問題視されたことから、法的に規制されることとなりました。
-
性風俗関連事業者がスカウトに報酬を支払う行為 → 違法
-
違反時は、行政処分や刑事責任の対象になる可能性も
▷ 無許可営業・不適格者の排除
さらに、風俗営業を行ううえでの資格要件の厳格化も進められました。
具体的には、以下のような内容が含まれています。
-
無許可で営業している店舗の摘発強化
-
過去に処分歴や犯罪歴のある人物の営業関与を禁止
違反があった場合は、営業停止・罰金などの行政処分が科されます
これにより、業界全体の透明性と安全性を高めることが目的とされています。
色恋営業禁止!新設された18条の3とは?
2025年の風営法改正で新たに加わったのが、第18条の3です。
この条文では、いわゆる「本営(本命営業)」=色恋営業を用いた過剰な販売行為が、明確に規制対象となりました。
「本営」とは、ホストやキャストがあたかも本気の恋愛感情を抱いているかのように振る舞い、その信頼関係を利用してお客に高額注文を促す営業手法です。
これまでは暗黙の了解として黙認されてきた側面もありますが、今回の改正により、恋愛感情を利用して無理な注文を取る行為は“違法”とされました。
【言ってはいけない言葉一覧】
※以下のような発言は、風営法第18条の3の規制対象となる可能性があります。
うその料金説明(誤認させる料金案内)
-
「このシャンパン、3万円くらいだよ(※実際は15万円)」
-
「今日の会計は1人分だけでいいから」
-
「このコース、こっちで割引にしとくから安心して」
-
「サービスだからお金は後でいいよ(※売掛になる)」
-
「全部で5万くらいだよ(※実際は税・サービス料含め10万超)」
好意に漬け込む営業(恋愛感情を装って経済的負担を誘導)
-
「ほんとに好きだから、お願い」
-
「他の子には言ってないけど、君は特別」
-
「彼女として支えてほしい」
-
「俺と付き合ってるって思ってるの、君だけだからね」
-
「付き合ってるんだから、少しくらいお願い聞いてよ」
-
「もう少し頑張ってくれたら、ちゃんと将来考えるよ」
-
「結婚も考えてる。だから今日は売上お願い」
-
「俺にとっての一番は君なんだよ」
-
「本気で付き合ってるつもりだから、信じて任せてほしい」
-
「頼れるのは君しかいない」
-
「俺のためにここまでしてくれる子って、君だけだよ」
※一見甘い言葉に聞こえますが、信頼・愛情を利用して注文を迫る行為は明確に規制対象です。
勝手な注文(同意なく高額注文をする)
-
「これ、もう入れといたから。ありがとう!」
-
「お祝いで出しといたよ」
-
「誕生日だから特別に開けたよ」
-
「これは営業上必要だから、君の名前で入れといた」
-
「もう会計に入っちゃってるから、キャンセルできない」
※注文はあくまで客の明確な同意が必要です。
支払いに際し不安にさせる言動(焦らせる・罪悪感を与える)
-
「今日払えないと店に立てなくなる」
-
「今月ヤバくて…最後のお願い」
-
「払ってくれないと自分が罰金払うことになる」
-
「今日売上ないとクビになっちゃう」
-
「信用してたのに、助けてくれないんだ」
-
「支払い止まったら、もう関係終わりかもね」
※プレッシャーや罪悪感を利用して支払わせる行為は、強要的営業と判断されるリスクがあります。
売春の要求・示唆
-
「体で返すって選択もあるよね?」
-
「正直、1日風俗行けば返せる額でしょ」
-
「体で稼げば、すぐチャラになるって」
-
「ホテル行ってくれたら帳消しにしてあげる」
-
「このままだと、店が紹介する仕事に行ってもらうよ」
※売春の強要・誘導は刑事罰の対象にもなり得る重大違反です。
性風俗勤務の要求・あっせん
-
「〇〇店ならすぐ雇ってくれるよ。紹介しようか?」
-
「1日だけヘルス入れば全部返せる」
-
「うちの系列の風俗店で働けば即解決」
-
「俺の担当してる嬢もそこで働いてるから大丈夫」
-
「そういう子のための“安全な店”あるから心配ない」
※紹介やあっせん行為は、風営法だけでなく職業安定法・売春防止法違反の可能性もあります。
これらの発言は一見すると日常的な会話に見えるかもしれませんが、恋愛感情を利用して顧客に経済的負担を強いる行為として、法律上問題視される可能性があります。
たとえ本人に悪意がなかったとしても、発言が“圧力”と受け取られれば、違法と判断されるリスクがあります。特に、未成年者や精神的に不安定な顧客に対して行われるケースが多く、依存やトラブルの温床となっていた点が、今回の法改正の大きな背景です。
今回の新たな規定により、ホストやキャスト個人だけでなく、店舗側にも監督責任が課されることになりました。経営者がそのリスクを把握し、適切な管理体制を整えることが求められています。
違反するとどうなる?ペナルティの流れ
風営法に違反した場合、店舗や運営者には段階的に重い処分が科される可能性があります。とくに今回の改正で導入された広告・営業方法の規制については、違反が確認されれば迅速に行政処分の対象となります。
▼ 第1段階:指示処分(改善命令)
初回の違反や軽微なケースでは、まず行政からの「指示処分」=改善命令が出されます。これは、問題のある営業行為や広告表現を即座に是正するよう求めるものです。命令に従わない場合は、次の段階に進みます。
▼ 第2段階:営業停止命令(最大6か月)
違反が悪質または継続的と判断されると、営業停止処分が科されます。期間は内容によって異なりますが、最長で6か月におよぶ可能性があります。経営上のダメージは非常に大きく、事実上の閉店に追い込まれるケースもあります。
▼ 第3段階:許可取消し・再取得の制限
さらに重大な違反、または改善命令に従わなかった場合は、営業許可の取消しとなります。許可を失うと、以後5年間は全国どこでも風俗営業の許可を取得できなくなるという、極めて厳しい措置です。
しかも、この制限は単に会社名を変える・グループ会社を通すといった抜け道では回避できません。実質的な経営関与があれば、それも追跡・規制の対象となります。
改正風営法は、これまで曖昧だった部分に明確な線引きを設け、実効性のあるペナルティを用意することで、業界の健全化を強く求めています。
店舗経営者にとっては、もはや「知らなかった」では済まされない時代に入ったと言えるでしょう。
2025年11月施行の追加ルールにも注意!
風営法改正の本番は、2025年11月に施行される追加ルールにもあります。とくに注目されているのが、「不適格者の排除」を目的とした欠格事由の拡大です。
不適格者の排除(欠格事由の拡大)
従来、営業許可の可否は申請者本人やその会社の過去の経歴に限られていましたが、改正により、「関係会社」や「グループ全体」まで審査の対象が広がります。
具体的には:
-
過去に風営法違反で許可を取り消された会社の
→ 親会社・子会社・兄弟会社も新たな許可取得ができなくなる -
立入検査を拒否・逃避した場合や、暴力団関係者による実質的支配の疑いがある場合も許可不可
これにより、いわゆる“名義替え”や“別会社を使った出店”などの逃げ道は封じられ、実態に即した厳格な審査が行われるようになります。
まとめ
2025年の風営法改正では、ホストクラブなどの接待業界における売掛金トラブルや売春強要といった深刻な問題を背景に、広告規制や営業手法の見直しが実施されました。特に「No.1」「推せ」といった誇大表現の看板は禁止され、恋愛感情を利用した「色恋営業」も新設された第18条の3で明確に違法とされました。また、スカウトへの報酬支払いや無許可営業への対応も強化され、違反時には営業停止や許可取消といった厳しい処分が科されます。さらに2025年11月には、過去に処分歴のあるグループ会社全体への許可制限といった追加ルールも施行予定。今後は、経営者・従業員ともに、法令を正しく理解し、適切な営業体制を構築することが不可欠です。