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2025/06/23 コラム

【被害者向け】示談の提案が来たらまず確認!損をしないために必要な知識と準備とは?

事件に巻き込まれた被害者にとって、加害者側からの「示談の申し入れ」は突然やってくることが多いものです。たとえば、まだ警察や検察による捜査が続いている段階でも、加害者やその弁護士から連絡が入り、「早く解決したい」と示談を持ちかけられることがあります。

しかし、焦って応じるのは危険です。

示談は一度成立すれば法的拘束力があり、原則として取り消すことができません。あとから「やっぱり納得いかない」と思っても、簡単には撤回できないため、慎重な判断が必要です。

示談を受け入れるかどうか判断するポイント

被害者として示談に応じるかどうかは、以下のような観点で検討しましょう。

  • 加害者に誠意ある謝罪・反省があるか
     → 謝罪文や直接謝罪、再発防止の姿勢などから判断。

  • 示談金の金額は妥当か
     → 損害の内容(治療費・精神的苦痛・仕事への影響など)に見合っているか。
     → 安易に金額だけで決めず、内容とのバランスを見ること。

  • 支払い方法・期限は明確か
     → 口頭ではなく書面で支払時期・方法(振込など)を取り決める。
     → 分割払いの場合は確実な履行方法があるかも確認。

  • 示談書の内容に不利な条件がないか
     → 「今後一切請求しない」「訴えない」という条項が含まれていないか。
     → 書面には、必ず署名と押印(または署名+本人確認書類)を求める。

 

示談提案が来たときは、すぐに「応じる/断る」を決める必要はありません。
大切なのは、冷静に内容を読み解き、納得できる形で交渉することです。

一人で判断が難しいときは、迷わず弁護士に相談しましょう。示談書の文面チェックだけでも、後悔を防ぐ大きな力になります。

そもそも示談とは?基本の仕組みを知っておこう

示談(じだん)とは、被害者と加害者が裁判などを使わず、お互いに話し合って事件を解決する合意のことです。法律用語では「民事上の和解」に近い位置づけで、特に刑事事件では重要な意味を持ちます。

示談がもたらす法的な効果とは?

刑事事件における示談の主な効果は次のとおりです:

  • 不起訴処分の可能性が高まる
     検察官は「加害者が被害者に謝罪し、損害を補償した」と評価すれば、起訴せずに処分を終える(不起訴)ことがあります。特に初犯や軽微な事件では大きな影響を持ちます。

  • 裁判になっても量刑が軽くなることがある
     起訴された場合でも、示談が成立していると「反省の意思あり」として、執行猶予がついたり罰金刑で済む可能性があります。

被害者にとっても示談には一定のメリットがあります

たとえば、

✅損害賠償や慰謝料が早期に支払われる
 裁判をせずに被害回復が図れるため、金銭的な負担や精神的なストレスを軽減できることがあります。

✅事件の早期解決につながる
 長期間にわたる捜査や裁判を避けることで、生活の平穏を早く取り戻せる可能性があります。

✅加害者の反省や謝罪を直接確認できる
 真摯な対応を見て、被害者自身の気持ちに整理がつくケースもあります。

ただし、これらのメリットが得られるのは「納得できる示談内容」の場合のみです。強引な提案や不十分な補償に応じてしまうと、結果的に損をすることにもなりかねません。

そのため、被害者側も冷静に判断し、必要に応じて弁護士のサポートを受けることが重要です

 示談書に必ず入れておきたい基本項目とは?🖊

「示談した=もう安心」と思っていませんか?
実は、その安心感を“形”にしておかないと、あとから不安やトラブルが襲ってくることもあります。
だからこそ必要なのが、きちんと作成された「示談書」です。

以下は、どんな事件でも最低限入れておくべき内容です:

  • 当事者の情報:氏名・住所・連絡先(“誰と誰の約束なのか”を明確に)

  • 事件の概要:いつ・どこで・何が起きたのか(「本件」として一意に特定)

  • 示談金の金額と支払い条件:一括か分割か、いつまでに払うか

  • 宥恕(ゆうじょ)条項:「刑事処罰を望みません」という意思表示。刑事処分に影響大。

  • 清算条項:「本件に関して、今後一切請求しません」という最終合意。これがないと、後から「まだ責任あるよね?」と言われかねません。

    📌 この5つが抜けていると、「約束したのに通じなかった」なんてことも。
    被害者にとっての示談書は、“未来の自分を守る書類”でもあるのです。

    清算条項・宥恕条項の意味を理解しておく

    • 清算条項:今後この事件に関してはお互いに請求しません、という約束

    • 宥恕(ゆうじょ)条項:「加害者を許します(刑事責任を問わない)」という意思表示

    これらを入れると、後から追加請求や刑事告訴ができなくなります。

    ✒ 希望に応じて追加される「心のセーフティネット」

    事件の内容や被害者の気持ちによっては、より安全と安心を確保するための条項も加えられます。

    🔹【接触禁止】

    「もう関わりたくない」──そんな気持ちを、“法的な約束”という形にするのがこの条項。
    加害者からの連絡や接触を一切禁止します。

    🔹【行動制限】

    事件が電車や学校、職場など特定の場所で起きた場合、加害者の行動範囲を制限することで再接触のリスクを防ぎます。
    「同じ電車に乗らない」「学校に近づかない」など、被害者の安心を守る現実的な工夫です。

    🔹【口外禁止】

    「このことを他人に話さないで」という約束。
    事件や示談の内容を第三者に話されることで、二次被害やプライバシー侵害につながることも。
    お互いの名誉や生活を守るため、しっかり取り決めておきましょう。

    🔹【違約金】

    万一、加害者が上記の約束を破ったときの“けじめ”として定める金額”です。
    たとえ実際に請求することがなくても、「破ったら責任を取る」という
    プレッシャーの効果は絶大です。

    示談書はただの“紙”ではありません。
    きちんと内容を詰めておくことで、「これでもう終わったんだ」と気持ちを整理しやすくなるのです。

    少しでも不安があるなら、弁護士に相談して“あなたの気持ちに合った形”にしてもらうのが一番確実です。

    安心できる未来のために、言葉と気持ちを、書面という形に残しましょう。

    示談で終わらない?被害者が知っておくべき「起訴」の現実

    「示談が成立した」「被害届を取り下げた」──
    だからといって、事件が必ず終了するとは限りません。

    刑事事件では、起訴・不起訴を決めるのは警察や検察であり、被害者の意思だけで判断が覆るとは限らないのが現実です。

    ✅ 示談しても起訴される場合がある

    • 事件が重大(暴力・性犯罪・未成年被害など)

    • 加害者が再犯・常習犯である

    • 示談に誠意や宥恕(処罰を望まないという意思)の記載がない

    • 社会的影響が大きく、見過ごせないと判断される場合

    このようなケースでは、示談しても検察が「起訴すべき」と判断し、裁判に進むことがあります。

    ✅ 被害届の取り下げにも注意点がある

    • 法律上は「期限なし」ですが、起訴前でないと意味が薄れることもあります。

    • 捜査が進んでいるタイミングや、すでに起訴された後では、取り下げても事件の流れを止められない可能性があります。

    • 親告罪(名誉毀損・強制わいせつなど)では、告訴の取り下げが「起訴前」であることが絶対条件です。起訴後に告訴を取り下げても、もう取り下げの効果はなく、裁判はそのまま続きます。

    関連コラム:「被害者が許せば無罪?」示談成立でも起訴されてしまうケースとは

    示談金の金額はどう決まる?相場と注意点

    示談金とは、加害者が被害者に対して支払う「損害の補償金」であり、慰謝料や治療費、物的損害などを含みます。
    この金額に明確な「法律上の定価」はないため、事案の内容や被害の程度、加害者の誠意などをもとに話し合いで決められます

    事案別・おおよその示談金相場(あくまで目安)

    • 傷害事件:10〜100万円(治療期間や後遺症の有無で大きく変動)

    • 暴行事件(ケガなし):5〜30万円

    • 名誉毀損・侮辱:10〜50万円(SNS投稿などの場合は高額化も)

    • 器物損壊:損害実費+慰謝料で10万円前後〜

    • 迷惑行為(盗撮・痴漢等):50〜150万円(被害内容・性質により幅広い)

      ※上記は実務上の参考例であり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。

      ⚠️ 注意したいポイント|金額の妥当性と支払い方法には要注意!

      示談においては、提案された金額が妥当かどうかを冷静に見極めることが非常に重要です。

      • 「とりあえず気持ちだけ」といった相場より明らかに低額な提案は、被害回復として不十分な可能性があります。

      • 加害者が「お金がない」と主張しても、単なる言い訳にすぎないケースも多く、被害の大きさや精神的ダメージに見合った金額を基準に判断すべきです。

      分割払いに潜む「回収リスク」に注意💰

      「まとまったお金がすぐに用意できない」として、分割払いを提案されることもあります。
      しかし、この場合、以下のようなリスクがあることを理解しておきましょう。

      ① 分割払いで示談成立
      ② それを理由に刑事処分が軽くなる
      ③ その後、加害者が支払いをやめてしまう…

      このように、加害者が“刑を軽くするためだけに示談した”という態度だった場合、処分が済んだ後に支払い意欲が下がることも。残念ながら、実際に起きているトラブルです。

      また、示談で合意した金額は、加害者が払わなくなっても、すぐに差押えなどの強制執行ができるわけではありません。
      強制執行を行うには、改めて裁判を起こす必要があり、被害者の負担が大きくなります。

      こうしたトラブルを防ぐためには:

      • 一括払いを求める

      • 公正証書を作成する

      • 保証人をつけさせる

      といった工夫が有効です。分割を受け入れるなら、しっかりした備えを忘れずに。

      👩‍⚖️ 弁護士に相談することで守れることとは?

      「示談に応じるか迷っている」「条件が適切かわからない」「相手と直接やり取りしたくない」——そんなときこそ、弁護士の力を借りるべきタイミングです。

      弁護士に相談することで、次のようなメリットがあります。

      損をしないための適切なアドバイスが受けられる

      示談金の金額が妥当か、清算条項や宥恕条項に問題がないか、そもそも示談に応じるべきかどうか…。
      弁護士は法的なリスクと利益を総合的に判断し、あなたにとって最善の対応を提案してくれます。

      相手と直接交渉せずに済む精神的なメリット

      加害者やその代理人と直接話すのは、被害者にとって大きな負担です。
      弁護士に依頼すれば、一切の連絡や交渉を弁護士が代行してくれます。相手と顔を合わせたり、ストレスを感じるやり取りをしなくて済むのは、心の安定にもつながります。

      示談書の内容チェックだけでも相談する価値あり

      「もう示談書は渡されているけど、本当にこの内容でサインしていいの?」というときも、弁護士のチェックを受けてからの判断が安心です。

      以下のような点をプロがしっかり確認します:

      • 曖昧な文言や抜け漏れはないか

      • 清算条項や宥恕条項が過剰な内容になっていないか

      • 被害者に一方的に不利な条件になっていないか

      → 弁護士による内容証明の送付や修正提案も可能です。

      示談は「納得」してからでOK!不安なら専門家に相談を

      示談の提案があっても、必ず応じなければならないわけではありません。
      金額や条件に納得できない、反省の色が見えない、書面の内容が不安…そんなときは、「一度立ち止まる」ことが大切です。

      示談は、被害者が「心から納得できるかどうか」が何よりも重要です。
      焦ってサインしてしまい、後から後悔する人も少なくありません。

      不安なことがあるなら、当事務所や法テラスの無料相談を利用して、冷静に状況を整理しましょう。

      あなた自身が納得し、前を向ける解決を目指しましょう。

       

      © 須賀法律事務所