2025/04/08 コラム
【時効の停止ってどういうこと?】刑事と民事の時効制度の違いをわかりやすく解説します!
【時効とは?刑事事件と民事事件で何が違う?】
「時効」という言葉はニュースなどでよく聞きますが、実は刑事事件と民事事件では意味も目的もまったく異なります。
それぞれの違いを、わかりやすく見ていきましょう。
🕵♂️ 刑事事件における時効(公訴時効)
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「国が犯人を起訴して裁くことができる期間」のこと。
-
たとえば、窃盗や暴行などを犯しても、一定期間が過ぎると裁判を起こせなくなります。
🔍 なぜあるの?
→ 証拠が失われたり、記憶が曖昧になることで公平な裁判が難しくなるためです。
⚠️ 例外あり!
殺人などの重大犯罪では、現在は時効が廃止されているものもあります。
📄 民事事件における時効(消滅時効)
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「誰かに権利を主張できる期間の制限」です。
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たとえば、
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💰 貸したお金の返済請求
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🏥 ケガに対する損害賠償
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→ これらも一定期間を過ぎると請求できなくなります。
⚖ 刑事と民事の違いまとめ
比較項目 | 🕵刑事事件 | 📄民事事件 |
---|---|---|
誰が動く? | 国家(検察) | 個人(被害者) |
意味 | 処罰のリミット | 請求のリミット |
時効成立の条件 | 自動で成立 | 相手の主張(援用)が必要 |
【刑事事件の時効は何年?罪によって異なる時効期間】
「刑事事件って、何年経てば時効になるの?」
そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
刑事事件では、罪の重さ(=法定刑の上限)によって時効期間が異なります。
📚 公訴時効の基本ルール(抜粋)
法定刑の上限 | 公訴時効の期間 |
---|---|
死刑 | 時効なし(廃止) |
無期懲役・禁錮 | 25年 |
有期懲役・禁錮(15年以上) | 20年 |
有期懲役・禁錮(10年以上15年未満) | 15年 |
有期懲役・禁錮(10年未満) | 10年・7年・5年など |
拘留・科料(軽微な罪) | 1年 |
⚖ 代表的な犯罪と時効期間(2023年対応)
犯罪の種類 | 公訴時効 | 法定刑の上限 |
---|---|---|
🔪 殺人 | なし | 死刑 |
🦹♂️ 強盗致死 | なし | 死刑または無期懲役 |
🚫 不同意性交 | 10年 | 5年以上の有期懲役 |
🚫 準不同意性交 | 7年 | 6か月以上10年以下の懲役 |
🤕 傷害 | 7年 | 15年以下の懲役・禁錮 |
💳 詐欺 | 7年 | 10年以下の懲役 |
🏠 窃盗 | 5年 | 10年以下の懲役・50万円以下の罰金 |
🚪 住居侵入 | 3年 | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
🚽 軽犯罪法違反 | 1年 | 拘留または科料 |
重大犯罪は「いつまでも捕まる」時代へ
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DNA鑑定など捜査技術の発展により、2022年法改正で以下の罪は時効が撤廃されました:
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殺人
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強盗致死
-
不同意性交致死など
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は時間が経っても裁かれる可能性が残ります。
【時効の停止とは?】
「時効って、年数が過ぎたら自動的に成立するんじゃないの?」
と思っていませんか?
実は、ある条件を満たすと時効のカウントが一時的に止まる=「時効の停止」が適用されます。
🔍 刑事事件で時効が停止する主なケース
① 📄 起訴された場合
→ 犯罪の容疑者として正式に起訴されると、その事件についての公訴時効は一時停止します。
起訴中に裁判が進行できない状態(被告が逃亡など)であれば、停止状態が継続します。
② 👥 共犯者が起訴された場合
→ 共犯者のうち誰かが起訴されると、他の共犯者についても一時的に時効が停止することがあります。共犯者の裁判が確定した時点で時効は再び進行します。
③ 🌍 国外に逃亡している場合
→ 犯人が海外に逃亡し、捜査・逮捕ができない状態になると、その期間中は時効の進行が停止します。
帰国などにより再び捜査可能な状態になれば、残りの時効期間から再開されます。
④ 📬 起訴状や略式命令が本人に届かない場合
→ 起訴されたとしても、本人に起訴状や略式命令が送達されなければ裁判を進行できないため、
その間は公訴時効が進行しません。これは特に被告人が所在不明な場合に問題となります。
こうしたケースでは、「一定期間が経てば必ず時効が成立する」とは限らないという点が重要です。
逃げる、連絡が取れない、という状況は、むしろ「時効を止める」きっかけになる場合が多いのです。
▶️ 停止は一時的!再び動き出す
たとえば、海外逃亡していた犯人が帰国したり、所在不明だった人が発見された場合、
その時点から残りの時効期間が再スタートします。
【民事事件ではどうなる?刑事との違い】
民事事件の時効は、「お金や損害賠償などの請求権」に対する期限です。
刑事とは違い、個人間の権利関係の整理が目的です。
代表的な民事の時効期間(2020年の改正民法後)
内容 | 時効期間 |
---|---|
💰 貸金債権(お金を貸した) | 原則5年 |
🏥 不法行為の損害賠償 | 原則3年(被害を知った時から)/最長20年 |
🧾 売掛金など | 原則5年(職種による例外あり) |
🏠 地代・家賃などの請求 | 原則5年(改正前は2年) |
⛔ 時効を止めたりリセットする要素
-
⏸ 完成猶予(停止):
未成年や交渉中、災害などで請求できない状態など正当な理由があれば一時的に時効のカウントが止まります。 -
🔁 更新(リセット):
裁判や内容証明郵便などで時効をリセットされます。 -
💬 時効の援用:
相手が「時効だから払わない」と主張してはじめて成立します。
⚖ 刑事事件との違いまとめ
比較項目 | 刑事事件 🕵 | 民事事件 📄 |
---|---|---|
誰が動く? | 検察(国家) | 被害者(個人) |
時効の意味 | 処罰できる期間 | 権利を主張できる期間 |
時効の成立 | 自動で成立 | 相手の「援用」が必要 |
時効の長さ | 1年〜無期限 | 原則5年(例外あり) |
時効は逃げ道ではありません。今こそ冷静な判断を
時効という制度は、証拠や記憶の劣化を防ぎ、公平な裁判を行うために設けられたものです。
しかし現在では、DNA鑑定や防犯カメラ、デジタルデータなど、時が経っても有効な証拠が残る時代です。たとえ事件から年数が経過していても、時効が完成する前に逮捕・起訴される可能性は十分にあります。
また、逃亡や所在不明といった状況にあると、かえって時効が停止してしまうことも。
もし「罪を犯してしまったが、まだ警察から連絡がない」という状況にあるなら、時効をただ待ち続けるのではなく、自首もふまえて冷静に今後の対応を考えることが重要です。
不安を抱えたまま過ごすのではなく、まずは刑事事件に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。あなたにとって最善の選択肢が見つかるかもしれません。