コラム

2025/03/29 コラム

【当たってないのにひき逃げ?】非接触事故でも問われる3つの責任とは

「ひき逃げ」と聞くと、車で人をはねて、そのまま現場から逃げる――そんな悪質なケースを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし実は、「ひき逃げ」という言葉は法律上の正式な用語ではなく、道路交通法第72条で定められた『救護義務違反』『報告義務違反』に該当する行為を指します。

つまり、交通事故を起こした際に「相手のケガの有無を確認し、必要な救護を行い、速やかに警察に報告する」という義務を怠って現場を離れた場合、それだけで「ひき逃げ」と判断される可能性があるのです。

そして、ひき逃げと判断された場合には、刑事責任(罰則)だけでなく、民事責任(損害賠償)や行政責任(免許取消など)といった3つの法的責任が発生する可能性があることも、知っておく必要があります。

また典型的なひき逃げは「接触+逃走」ですが、実は以下のような意外なパターンでも“ひき逃げ”と見なされることがあります:

  • 相手に怪我がないと思い込んで立ち去った
     →実際には軽い打撲や精神的ショックがあり、後日被害申告されるケースも。

  • 事故原因が相手側にあると思ってそのまま離れた
     →自分に非がないと思っても、事故当事者としての報告義務は免れません。

  • 「ちょっと車を停めに行くだけ」とその場を離れたが、声かけや連絡をしなかった
     →一時的に現場を離れただけでも、第三者から見れば“逃げた”と誤解されることがあります。

このように、「逃げるつもりはなかった」や「ぶつかっていないから大丈夫」は通用しないのが現実です。事故の大小にかかわらず、現場ではすぐに停車し、相手の状況を確認し、警察に通報することが最も重要です。

【非接触でも刑事責任を問われる?】

「車が相手に当たっていないから、事故ではない」と思い込んでそのまま現場を立ち去ってしまう――。

たとえ物理的に接触していなくても、自車の動きによって他人が転倒したり、事故を回避しようとしてケガをしたりした場合、運転者がその事故を誘発したと認定されれば「事故当事者」とされます。つまり、事故に関係した当事者としての義務が発生するのです。

この状態で現場から立ち去れば、救護義務・報告義務に違反したことになり、「ひき逃げ」として刑事責任を問われる可能性があります

また、「相手に気づかなかった」「接触していないので事故だと思わなかった」場合は、救護義務違反は成立しません。しかし負傷させてしまった場合過失運転致死傷罪に問われます。

🚨【ひき逃げで問われる主な違反とその罰則】

違反の種類 内容 罰則

救護義務違反

負傷者を救助せずにその場を立ち去った場合 ①5年以下の懲役または50万円以下の罰金
②被害者の死傷が運転による場合は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金

報告義務違反

警察に通報・報告をせずに現場を離れた場合 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金

⚖️【人身事故を起こした場合に問われる刑事責任】

罪名 内容 罰則

過失運転致死傷罪

不注意(過失)により人を死亡もしくは負傷させた場合 7年以下の懲役または禁錮、または100万円以下の罰金

危険運転致死傷罪

飲酒・薬物など、正常な運転ができない状態で事故を起こした場合 【負傷させた場合】:15年以下の懲役
【死亡させた場合】:1年以上の有期懲役

【民事上の責任とは】

民法では、「故意または過失によって他人に損害を与えた者は、その損害を賠償する義務がある」と定められており、事故を起こした側に過失(注意義務違反)があると判断されれば、接触の有無にかかわらず損害賠償の対象になります。

たとえば以下のようなケースでも責任が問われます:

  • 車の接近に驚いた歩行者が転倒してケガをした

  • 自転車がよけようとして転倒し、ケガや物損が生じた

  • 高齢者や子どもが避けようとして負傷した など

これらの場合、加害者側が加入している任意保険や自賠責保険を使って賠償することが一般的です。ただし、自賠責保険は人身事故(ケガ・死亡)のみが対象で、物損は補償されません。任意保険に入っていない場合、加害者が自腹で賠償する必要があります

また、「当たっていないから払う必要はない」と言い張る加害者や、逆に被害者が過剰に請求してくるといった示談交渉のトラブルも少なくありませんこうした場合は、弁護士に相談して冷静に対処することが重要です。

【行政上の責任とは】

「ひき逃げ」と判断された場合、行政処分は非常に厳しくなります。道路交通法では、救護義務違反などが認定されると一発で違反点数35点が付加され、即座に免許取消処分となります。しかも、最短でも3年間は再取得ができない「欠格期間」が設定されることが多く、運転を必要とする仕事に就いている人にとっては、実質的に職を失うほどの大きな影響となることもあります。

注意すべきなのは、たとえ刑事事件としては不起訴や罰金だけで済んだ場合でも、行政処分は独立して行われるため、結果が異なることがあるという点です。「軽い事故だから大丈夫」と油断していると、思わぬ免許取消処分を受けることもあります。

【ひき逃げしてしまったときの対処法】

「パニックになって逃げてしまった」「その場を離れたけど、あとから不安になってきた」「あれは事故だった?」――そんなとき、まずやるべきことは、弁護士に相談したうえで警察に自首することです。警察に出頭する際には、言い訳をせず、誠実な態度で正直に事情を説明することが重要です。「気づかなかった」「悪気はなかった」と言っても、事実関係が確認されれば言い逃れは通用しません。

事前に弁護士に相談しておくことで、今後の対応に大きな差が出ます。たとえば、被害者との示談交渉を弁護士を通じて適切に進めることができれば、逮捕を免れたり、刑事処分(懲役・罰金)において情状酌量が認められる可能性もあります。また、早期に対応することで、警察・検察からの評価が変わることもあります。

実際に、自首をして誠実に対応したことで、執行猶予付き判決や不起訴処分になった例もあります。ひき逃げは重大な違反ですが、早めの対応と反省の姿勢が将来を左右します。一人で抱え込まず、すぐに弁護士に相談することを強くおすすめします。

一方で、「バレていないから黙っておこう」と放置するのは、最も危険な選択肢です。

最近では、ドライブレコーダー、通行人の証言、防犯カメラの映像などで“立ち去り行為”がはっきり証拠化される時代です。

よくある言い訳として、「コンビニに車を停めに行こうと思った」「家に連絡するために一度離れただけ」などがありますが、相手に声をかけずにその場を離れた場合は、“逃げた”と見なされる可能性が高いので注意が必要です。

【まとめ】

ひき逃げは「接触して逃げた場合」に限らず、非接触事故や一時的な離脱でも成立する可能性があります。現場での対応を誤れば、刑事・民事・行政の3つの責任を問われる重大な問題に発展します。「逃げるつもりはなかった」は通用しない時代です。事故の大小にかかわらず、すぐに停車して通報し、弁護士に相談することが自分を守る第一歩となります。冷静な対応と早めの行動が、将来を左右します。

当事務所では、交通事故に関する法律相談を受け付けております。

初回相談無料です。お気軽にお電話またはLINEにてお問い合わせください。

交通事故で刑事責任を問われるのはどんな時?刑事処分の流れも解説します!
弁護士がいないと損する?交通事故の損害賠償を最大化するために知るべき3つの基準と請求術

© 須賀法律事務所