2025/03/19 コラム
正当防衛はどこまで許される?逮捕されないために知っておきたい防衛行為の限界
突然、あなたが道を歩いていたところ、見知らぬ相手に絡まれて暴力を振るわれそうになったとします。恐怖心からとっさに相手を押し倒し、逃げようとした――ところが後日、「傷害罪」であなたが警察に逮捕された…。
これは、実際に起こり得る話です。自分の身を守るために行動したつもりでも、「正当防衛」として認められなければ、逆に「過剰防衛」や「傷害罪」として処罰の対象になることもあるのです。
では、正当防衛が認められる行為の「限界」はどこにあるのでしょうか?
本記事では、正当防衛が成立する条件や、過剰防衛・誤想防衛との違い、さらには防衛行為が原因で逮捕されるリスクや傷害罪との関係について、弁護士がわかりやすく解説します。トラブルに巻き込まれた際、あなた自身を守るためにも、正確な知識を身につけておきましょう。
【正当防衛のルールは法律で決まっている】
日本の刑法では、「正当防衛」をこのように決めています。
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。 というルールです。
つまり、ただのケンカや仕返しはダメですが、本当に危ない状況で「仕方なく反撃した」ときには、罪に問われないことがあるのです。
正当防衛が認められる3つの条件 ✅
では、どんなときに「正当防衛」として認められるのでしょうか?法律では、次の3つの条件がすべてそろっていることが必要です。
① 急に不正な攻撃を受けたこと(急迫不正の侵害)
相手から突然、暴力をふるわれそうになったり、盗もうとしてきたときなど、「すぐに身に危険が迫っている」ことが必要です。まだ攻撃されていないときや、すでに攻撃が終わったあとに反撃した場合は正当防衛になりません。
② 身を守る気持ちで行動したこと(防衛の意思)
仕返しや怒りに任せた反撃はダメです。あくまで「自分や他人を守るために反撃した」ことが大切です。
③ やりすぎていないこと(相当な方法)
反撃するときも、相手の攻撃に見合った行動でなければなりません。たとえば、ちょっと押されたくらいで相手を強く殴ってしまったら、「やりすぎ」と判断されるかもしれません。
正当防衛が認められた事例🔍
ある日、男性が歩道を歩いていたところ、突然後ろから押され、転びそうになりました。とっさに振り向いて、押してきた人を押し返して距離を取った結果、相手はバランスを崩して軽くケガをしました。
この場合、「急に押された」という危険な状況に対して、「とっさに身を守る行動」をとっただけなので、正当防衛として認められる可能性が高いです。
しかし、相手が転んだあとにさらに蹴ったり、殴ったりしたら、正当防衛ではなく「過剰防衛」や「傷害罪」に問われるおそれもあります⚠️
【過剰防衛・誤想防衛・自招防衛の違い】
過剰防衛とは?【行き過ぎた反撃】
「自分や誰かを守るための正当な反撃がやりすぎてしまった状態」を指します。
法律では、守る行為がやりすぎてしまった場合でも、状況に応じて刑罰が軽くなったり、場合によっては罰せられなかったりすることがあります。ただし、相手への影響が大きかった場合は責任が問われることもあります。
誤想防衛とは?【勘違いの防衛】
誤想防衛は、実は危険ではなかったのに、危ないと勘違いして反撃してしまったケースです。
たとえば、友達がふざけて手を上げたのを「襲われる!」と思って殴り返した場合などです。
この場合、「急迫不正の侵害」がなかったので正当防衛は成立しません。つまり、ただの暴行・傷害になってしまいます
自招防衛とは?【自ら招いたトラブルへの反撃】
自招防衛(じしょうぼうえい)とは、自分からトラブルを仕掛けたり、危険な状況を作った人が、反撃をしても正当防衛として認められないことをいいます。
・相手をわざと挑発してケンカをふっかけた
・危険な場所に相手を連れ出し、自ら危険を生んだ
これらのケースでは、「自分で招いたトラブルだから正当防衛にはならない」とされ、ただの暴行や傷害罪として処罰されるリスクがあります。
実際にあった事例🔍
■ 過剰防衛の事例:
道で突然、男性が殴られそうになり、とっさに相手を押し返した。その後も攻撃が止まらないと思い、相手を殴り続けた結果、相手が大けがをした。
→ 押し返すまでは正当防衛、しかし殴り続けたことで「過剰防衛」と判断され、傷害罪で有罪に。ただし刑は軽くなった。
■ 誤想防衛の事例:
夜道で人が近づいてきたため、「襲われる」と思い込み、相手を突き飛ばしてケガをさせた。しかし相手はただ道を尋ねようとしていただけだった。
→ 「危険はなかった」と判断され、正当防衛は認められず傷害罪が成立。
■ 自招防衛の事例:
お酒の席で相手をしつこく挑発し、相手が手を出してきたのをきっかけに殴り返した。
→「自招防衛」と判断され、正当防衛は否定され、傷害罪で有罪に。
緊急避難とは?⛑️
緊急避難は、火事・地震・事故などの危険から、自分や他人を守るために他人の権利を侵害してしまったときに認められる行動です。
法律ではこう書かれています。
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 |
たとえば、火事の現場から逃げるために他人の家の窓を壊して避難した場合、これは「緊急避難」として罪に問われません。
正当防衛との違い⚖️
正当防衛は、人から攻撃されたときの反撃です。一方で緊急避難は、自然災害や事故など「人ではないもの」から身を守る行動に使われます。
こんなときに緊急避難が認められる💡
・洪水から逃げるために他人の車を動かした
・落下物から人を守るためにガラスを割った
これらは「仕方なかった」と判断され、緊急避難として処罰されない可能性が高いです。ただし、「本当にやむを得なかったか」がしっかり判断されるため、不必要な行動はNG⚠️
【正当防衛が認められないと「罪」に?】
相手に対して反撃し、ケガをさせたり暴力をふるった場合でも、それが正当防衛の条件を満たしていれば罪にはなりません。
しかし、行きすぎた反撃(過剰防衛)や、正当防衛が成立しない状況での反撃は、「傷害罪」または「暴行罪」になるリスクがあるのです。
■ 傷害罪(刑法204条)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 |
👉 例:殴って相手がケガをした、押し倒して骨折させた
→ ケガをさせた場合に適用される重い罪です。
■ 暴行罪(刑法208条)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する |
👉 例:軽く押した、つかんだ、殴ったがケガなし
→ ケガがなければ暴行罪。軽い行為でも罪になる可能性があります。
過剰防衛なら「情状酌量」で刑が軽くなる可能性も⚖️
正当防衛のつもりだったけど「行きすぎ」と判断された場合、過剰防衛として「情状酌量(事情を考慮して軽くなる)」されることもあります。
ただし、それでも逮捕や前科のリスクはゼロではありません。裁判で「反撃はやむを得なかった」と証明する責任は、自分にあるのです。
自分を守ったつもりが“加害者”に…😨
冷静さを失って過剰に反撃すると、「自分を守っただけ」と思っていても、警察や裁判所では「暴力をふるった」と見なされることがあります。
防衛行為が原因で逮捕・傷害罪の有罪判決を受ける可能性は、決して低くありません。
防衛行為には限界があります。「やりすぎ」や「勘違い」での反撃は、自分の人生を大きく左右する結果につながるかもしれません。
少しでも不安を感じたら、早めに弁護士に相談することでリスクを回避できます。トラブルに巻き込まれる前に、正しい法律知識を持って備えましょう✨