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2025/03/11 コラム

嫌と言われてすぐやめたのに逮捕?不同意わいせつ罪の成立条件と注意点を解説!

「嫌と言われてすぐやめたのに逮捕されるなんて…」と驚く方も多いでしょう。しかし、不同意わいせつ罪は「嫌と言われた後の行動」や「その場の状況」によって成立する可能性があります。2023年の刑法改正により、この罪はより厳格に適用されるようになりました。特に、相手の同意がないままの身体接触や性的な言動は、たとえ短時間であっても問題視されます。
例えば、職場や飲み会での軽いボディタッチや冗談がトラブルに発展するケースも増えています。このような状況で逮捕されると、その後の処罰や社会的な影響は避けられません。今回は、不同意わいせつ罪の成立条件や注意点について、具体的な事例や弁護士としてのアドバイスを交えながら解説します。

 

【不同意わいせつ罪とは?】


不同意わいせつ罪は、2023年の刑法改正で新たに加わった犯罪類型です。

例えば、体に触れる、キスをするなどの行為がこれに該当します。重要なのは、「一瞬でも同意がなかったかどうか」という点です。たとえ短時間でやめたとしても、その瞬間に同意がなければ罪に問われる可能性があります。

またこれまでの強制わいせつ罪とは異なり、「暴行や脅迫」がなくても成立するのが特徴です。簡単に言うと、相手の同意がないまま性的な接触を行った場合、それが短時間であっても不同意わいせつ罪に該当する可能性があります。罰金刑や執行猶予は認められず、必ず6か月以上10年未満の拘禁刑になります。このため、「軽い気持ち」や「冗談」のつもりでも、成立すると後戻りが難しくなります。

 

成立要件 具体的な行為の例 法律上のポイント

暴行・脅迫を用いた場合

抵抗する相手を押さえつけて無理やりキスや身体を触る 暴力や脅しで相手に恐怖を与え、拒否できない状態にすれば、不同意わいせつ罪が成立します​。

心身の障害で抵抗が難しい場合

知的障がいがあり拒否の意思を示せない人につけこんで体を触る 被害者が障害のため抵抗・拒絶できない場合、同意のない行為とみなされ不同意わいせつ罪に問われます​。

酒や薬で正常な判断ができない場合

お酒を飲み過ぎて意識が朦朧とした人にキスや抱きつきをする 泥酔や薬物の影響で「嫌だ」と判断・表明できない相手にわいせつ行為をすると、不同意わいせつ罪に問われます​。

睡眠中や意識を失っている場合

眠っている人の身体に無断で触れる 寝ていたり気絶している人は抵抗できないため、その隙に行われた性的行為は不同意わいせつ罪に当たります​。

不意打ちで拒む時間がない場合

電車内で後ろから急に体を触る(痴漢行為) 相手が「嫌」と伝える時間もないような突然のわいせつ行為も、同意のない行為として罪になります​。

予想外の事態に直面し恐怖や驚きで動けない場合

知人に突然抱きつかれ、ショックで体が固まって抵抗できない 被害者が予想外の出来事にショックを受け「頭が真っ白」になるなど、恐怖で抵抗できなかった場合も罪が成立します​。

虐待の影響で逆らえない場合

家庭内暴力を受けて萎縮している相手に、無理やりわいせつな行為をする 被害者が虐待の恐怖で萎縮し逆らえない心理状態の場合、たとえ抵抗していなくても同意とは認められず罪になります​。

地位や立場を利用して相手が拒めない場合

上司が「逆らうと不利益がある」と部下に思わせて無理に抱きつく 職場や家庭などで、地位・立場の強い者に「拒めば不利益がある」と思わされている場合も、同意がないものとされ罪に問われます。

わいせつ行為だと悟らせないよう欺いた場合(誤信・人違い)

医療行為だと偽って患者の体を性的に触る 相手が性的な行為と気づいていなくても、欺かれて行われた行為は同意があったとは言えず罪になります。

被害者が16歳未満の場合

成人が小学生の子どもにわいせつな行為をする 13歳未満であれば性的行為をすれば無条件で不同意わいせつ罪が成立します。さらに13歳以上16歳未満でも、行為者が5歳以上年上の場合も、同意の有無にかかわらず罪に問われます​

 

各項目とも、被害者が自分の意思で「拒否したい」「嫌だ」という気持ちを示すことが困難な状況で行われた性的行為である点がポイントです​。このような状況下で相手の同意なくわいせつな行為をすれば、最新の法律では不同意わいせつ罪として処罰されることになります。さらに、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられたため、年齢の低い子ども相手の性的行為も原則として同意の有無に関係なく罪に問われるようになりました​。法律は被害者の性的自由を守るため、これらのケースを網羅的にカバーしています。各自、日常生活でも相手の同意を尊重し、違法行為とならないよう注意が必要です。

【成立条件と注意点】

不同意わいせつ罪が成立するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。特に被害者の証言が有力な証拠となるため、注意が必要です。ここでは、具体的な成立条件と注意点について解説します。

  1. 被害者の同意がなかったこと
    同意がない状態でのわいせつ行為は、成立要件の一つです。仮に、行為の途中で被害者が「嫌だ」と言った場合、その時点で同意がなくなったと見なされます。

  2. 行為がわいせつと認められること
    法律上の「わいせつ行為」は、一般的な道徳感情を著しく害する行為と定義されています。たとえば、キスをする・胸やお尻を触る・抱きしめるなどの行為などが該当します。

  3. 被害者の証言が有力な証拠となる
    わいせつ罪の立証では、被害者の証言が大きなウェイトを占めます。仮に目撃者がいなくても、被害者の一貫した証言があれば、それだけで逮捕や起訴の可能性が出てきます。

被害者が嫌がった瞬間にすぐやめた場合でも、被害者の証言次第では逮捕されるリスクがあります。裁判になった場合「同意を得ずに行為をしたわけではない」という主張をすることも可能ですが、証言の信用性が争点になります。

【逮捕前・逮捕された時の対応法】

もし不同意わいせつ罪で逮捕された場合、適切な対処が求められます。この罪は、被害者の証言が非常に強力な証拠となるため、対応を誤ると不利な状況に追い込まれかねません。ここでは、逮捕後に取るべき具体的な行動について解説します。

1. すぐに弁護士に相談する

不同意わいせつ罪で逮捕された場合、まず最初に行うべきは弁護士への相談です。警察の取り調べは非常に早い段階で行われ、ここでの供述がその後の処分に大きく影響します。
弁護士に相談することで、黙秘権の行使や証拠の確認など、適切な対応が可能になります。特に、被害者の証言に矛盾がある場合や、「嫌と言われてすぐやめた」という事実がある場合は、それを証明するためのアドバイスを受けられます。

可能であれば逮捕される前に弁護士に相談しておくことが理想です。逮捕を防ぐように動くことも可能ですし、仮に逮捕されてもすぐその弁護士を呼んで対応してもらうことができます。

2. 証拠を確保する

自身に有利な証拠がある場合、早急に確保しましょう。逮捕後だと携帯触れない可能性が高いので逮捕前に行うことが理想です。

  • LINEやメールのやりとり
    被害者との間で合意があったことを示すメッセージは、有力な反証になります。
  • 目撃者の証言
    行為の状況や雰囲気を証明できる第三者の証言は、非常に効果的です。
  • 通話の録音データ
    相手が明確に同意していたり、同意の有無に関するやり取りが録音されている場合は、裁判での重要な証拠になります。

これらの証拠は、弁護士に渡して精査してもらうことで、不起訴や無罪を主張するための材料となります。

3. 示談交渉を検討する

不同意わいせつ罪では、示談が成立すれば不起訴になる可能性が高まります。被害者が「許した」と証言すれば、検察も起訴を見送るケースが少なくありません。

示談の際は、弁護士を通じて行うのが基本です。直接交渉すると、被害者への接触禁止命令に抵触したり、脅迫とみなされる恐れがあります。
また、示談金の相場や適切な謝罪の方法についても、弁護士に相談することでスムーズに進められます。

4. 誠実な反省の態度を示す

もし事実を認める場合は、誠実に反省の態度を示すことが重要です。
一方で、事実に反する供述を強要されたり、冤罪の可能性がある場合は、むやみに謝罪せず、弁護士の指示に従いましょう。

5. 身内への対応

逮捕された場合、職場や家族への影響も無視できません。特に、報道されたり噂が広まると社会生活に深刻なダメージが及びます。
弁護士に相談し、身内への説明方法や、逮捕後の生活の立て直し方についてもアドバイスを受けましょう。

【弁護士の役割】

不同意わいせつ罪で逮捕された場合、弁護士の役割は非常に重要です。

1.証拠の精査と反論
まず、被害者の証言やその他の証拠に矛盾がないかを確認し、反論材料を探します。特に、同意があった可能性や「嫌と言われてすぐやめた」ことを証明するための証拠を集めます。

2.示談交渉のサポート
被害者との示談が成立すれば、不起訴や刑の減軽が見込めます。弁護士は、適切なタイミングと方法で示談交渉を進めます。

3.不起訴に向けた活動
警察や検察に対して、起訴しないように働きかけることも弁護士の重要な役割です。逮捕後すぐに弁護士を呼び、適切な対策を取ることで、不起訴や早期の釈放が期待できます。

 

【まとめ】

不同意わいせつ罪は、相手が嫌だと感じた時点で成立する可能性があります。そのため、「すぐにやめたから大丈夫」という油断は禁物です。被害者の証言は非常に強力な証拠となり得るため、被害届をされる可能性のある場合はすぐに弁護士に相談し、適切な対応をとりましょう。証拠の確保や示談交渉を迅速に進めることで、不起訴や刑の軽減が期待できます。不同意わいせつ罪は、相手の同意を尊重することが基本です。トラブルを未然に防ぐためにも、相手の気持ちや意思表示を尊重し、適切に行動しましょう。

 

 

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