2025/03/11 コラム
逮捕令状のオンライン化で捜査がスピードアップ!刑事訴訟法改正案のポイントを解説
近年、捜査や裁判の手続きがどんどんデジタル化され、政府は刑事裁判に関する法律の改正に向けた動きを活発に進めています。これにより、逮捕や捜索のための許可を出す手続きが紙からオンラインに変わり、警察の捜査がより早く、効率的になることが期待されています。事件が起こってから逮捕や証拠の確保までの時間が短くなることで、逃亡や証拠の隠滅といったリスクが減る可能性があります。
内閣で決定された今回の法律改正案は、国会に提出され議員が改正案の内容を十分に検討・審議し、議論のうえで可決されると法案が成立します。成立した法案は公布され、順次施行される予定です。具体的には、2026年度までに段階的に新しいシステムを導入し、2027年3月までには本格的に運用が開始される見通しです。
【改正の主なポイント】
オンラインでの申請
これまでは、警察官が紙の書類を持って裁判所に行かなければならず、時間がかかっていましたが、今後はネットを使って申請できるようになります。たとえば、飲酒運転の疑いがある場合、現場からすぐに必要な書類や証拠を送ることができ、迅速な対応が可能となります。
証拠のデジタル管理
証拠のデータが電子的に管理されることで、裁判官は過去の事例や資料をすぐに確認でき、より正確な判断を下しやすくなります。
遠隔での出廷可能に
被告人や遺族、証人などが病気などで裁判に出るのが難しい場合、ビデオ通話を使って遠隔で裁判に参加できる仕組みが導入されます。
デジタルデータの提出命令
通信履歴などのデジタル情報も、迅速に提出を求める新しい命令形態が取り入れられ、従来の紙による手続きよりも早く証拠が集められます。
【現在の逮捕許可の流れ】
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警察の判断
警察官が逮捕の必要があると判断し、紙の書類を持って裁判所へ向かいます。 -
裁判所での審査
裁判官が書類を確認し、逮捕が正当かどうかを慎重に判断します。 -
令状の発行
裁判官が書類にサインをして、逮捕の許可書(令状)が発行されます。 -
逮捕の実行
警察はその許可書に基づいて逮捕を実行します。
特に、夜間や休日、または警察署から裁判所が遠い地域では、書類のやりとりに時間がかかり、急を要する対応が難しいことがありました。この遅れが、逃亡や証拠の散逸といった問題を引き起こすリスクとなっていました。
【オンライン化による変化】
オンラインシステムの導入で、以下のような効果が期待されています。
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迅速な対応が可能に
現場から直接必要な書類や証拠を送信できるため、警察がすぐに動け、証拠を取り逃がすリスクが減ります。 -
効率的な捜査の実現
たとえば、覚醒剤事件では、検査のタイミングが非常に大切です。オンライン申請により、必要な許可が速やかに取得できるため、証拠の取りこぼしや改ざんのリスクが大幅に減少します。 -
現場での負担軽減
警察官が書類の作成や移動にかける時間が短縮され、その分、現場での捜査や証拠確保に専念できるようになります。
【注意すべき点】
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情報の安全管理
オンラインシステムにより情報がデジタルで管理されるため、ハッキングや情報漏えいのリスクに対して、万全のセキュリティ対策が必要です。 -
適切な審査の維持
迅速な手続きと引き換えに、誤った判断が行われないよう、しっかりとしたチェック体制の整備が求められます。 -
システムトラブルへの対応
万が一システム障害が発生した場合、令状の発行が遅れる可能性があるため、バックアップや緊急対応策の準備が不可欠です。
【まとめ】
逮捕許可のオンライン化は、これまでの紙ベースの手続きによる時間のロスを解消し、警察が迅速に捜査を行える環境を整える大きな改革です。緊急性の高い事件では、現場で迅速に必要な許可が出されることで、証拠の確保が容易になり、事件解決に直結する効果が期待されます。ただし、オンラインシステムの安全性、審査の正確さ、システム障害への対策など、解決すべき課題も残っているため、これらに対する十分な準備が求められます。
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