コラム

2025/02/25 コラム

書類送検されるとどうなる?その後の流れや前科がつくのか、弁護士の役割を解説



示談が成立したからと言って、書類送検が取り下げられるわけではありません
多くの人が示談を成立させると、加害者が刑事罰を免れると考えがちですが、実際にはそう簡単ではありません。

なぜ、示談が成立しても書類送検が取り下げられないのでしょうか?また、その後、書類送検された場合にはどのような影響があるのでしょうか?今回は、示談成立後でも書類送検が行われる理由と、その後の流れや加害者にとっての影響について、法律的な観点から詳しく解説します。

書類送検とは?

書類送検とは、警察が捜査を終えた段階で、事件に関する証拠や調査結果をまとめ、検察に送る手続きです。この段階で、警察は加害者が犯罪を犯したと認定し、捜査が完了したと判断します。この段階で、警察は被疑者が犯罪を犯したと認定し、捜査が一段落したと判断します。法律上は「送致」と呼ばれるこの手続きは、刑事事件における重要なプロセスの一つです。多くの方が「書類送検=有罪確定」と誤解しがちですが、実際はあくまで捜査機関から司法機関へのバトンタッチに過ぎません。

警察は事件の捜査権を持っていますが、起訴するかどうかの決定権は持っていないため、検察に判断を委ねる形となります。書類送検された場合でも、検察官による精査を経て、起訴か不起訴かが決まり、起訴されて初めて刑事裁判の手続きが始まります。つまり、書類送検はあくまでも捜査の一過程であり、この時点ではまだ裁判が始まるわけではなく、検察が起訴・不起訴を決定します。 

示談成立後でも書類送検される理由

示談が成立すると、被害者と加害者が和解し、刑事罰を回避できるケースも多いですが、書類送検が取り下げられる理由にはなりません。なぜなら、示談によって加害者が刑事罰を免れるかどうかは、警察や検察の判断に基づくものであり、単に被害者と加害者の間で和解しただけでは、すべての状況が解決するわけではないからです。刑事事件は基本的に「国家対個人」の構図であり、示談は被害者と加害者の「民事上の和解」に過ぎないという点が重要です。

警察や検察は社会的正義の観点から判断を行うため、被害者が処罰を望まなくなったとしても、事件の重大性や悪質性、社会的影響などを考慮して送検を進めることがあります。特に人身事故や暴行事件など社会的影響が大きい案件では、示談が成立していても書類送検されるケースが少なくありません。ただし、示談の成立は検察の起訴・不起訴判断や、裁判での量刑に有利に働くことが多いのも事実です。

書類送検されるとどうなる?流れを解説

「書類送検されるとその後どうなるのか」多くの方が不安に思われることでしょう。書類送検はあくまでも捜査過程の一つの段階であり、これが即座に有罪や前科に直結するわけではありません。

ここでは、書類送検後に実際にどのような流れで手続きが進むのか、具体的に解説していきます。

書類送検の流れ

書類送検から最終的な処分までには、いくつかの段階があります。まず警察による捜査が行われ、書類送検の決定がなされます。その後、検察による取り調べを経て、起訴か不起訴かの判断が下されます

それぞれの段階で何が行われるのか、詳しく見ていきましょう。

警察の取り調べが行われる

書類送検される前には、まず警察による取り調べが行われます。この段階では、事件の状況や証拠について詳しく聴取されます。取り調べでは事実関係の確認が行われ、供述調書が作成されることになります。

この供述調書の内容が後の処分に大きく影響するため、取り調べの際には慎重に対応することが重要です。

書類送検される

警察の捜査が一段落すると、集められた証拠や調書などの資料がまとめられ、検察庁へと送られます。これが「書類送検」と呼ばれる手続きです。書類送検の時点では、警察は容疑者が罪を犯したと判断していることになりますが、まだ罪が確定したわけではありません。

検察官による精査を経て、次の段階へと進みます。

検察から呼び出しと取り調べが行われる

書類が検察に送られると、次は検察官による取り調べが行われます。検察官から呼び出しを受け、再度事件内容について聴取されることになります。この段階でも供述調書が作成され、事件の全容を明らかにするための調査が継続されます。

検察官は警察の捜査結果を踏まえつつ、独自の視点で事件を精査します。

起訴・不起訴が決定する

検察による取り調べや資料の精査が終わると、検察官は「起訴」か「不起訴」かの判断を下します。起訴とは、検察官が裁判所に対して刑事裁判を求める手続きであり、これにより正式に裁判が始まります。一方、不起訴とは裁判を行わないという判断であり、この場合は手続きがここで終了します。

不起訴になる理由としては、証拠不十分や犯罪の軽微さ、示談の成立などが考慮されます。

起訴後は裁判に出席する

起訴された場合は、刑事裁判の手続きが始まります。裁判では、検察側が証拠を提示して被告人の有罪を立証しようとし、一方で弁護側は無罪を主張したり、情状酌量の余地を訴えたりします。裁判の回数や期間は事件の複雑さによって異なりますが、最終的には判決が下され、有罪の場合は刑罰が決定します。

裁判で有罪判決を受けた場合にのみ、正式に「前科」として記録されることになります。示談が成立していれば、それが量刑判断において考慮され、刑が軽減される可能性もあります。また、初犯で罪が軽い場合は、執行猶予が付くケースも少なくありません。

書類送検をされると前科がつく?

書類送検されると「前科がついてしまうのではないか」と心配される方は多いでしょう。キャリアや将来への影響を考えると、当然の不安です。結論から言えば、書類送検されただけでは前科はつきません。

前科になるまでには、いくつかの重要なステップが必要です。では、実際に書類送検と前科の関係について詳しく見ていきましょう。

書類送検をされただけでは前科はつかない

書類送検は、警察が集めた証拠や調書を検察庁に送付する手続きです。この段階では、まだ罪が確定したわけではありません

前科とは刑事裁判で有罪判決を受け、その判決が確定した場合に初めて記録されるものです。つまり、書類送検された後、検察官が起訴を決定し、裁判で有罪判決が下され、さらにその判決が確定して初めて前科となります。

したがって、書類送検されただけで自動的に前科がつくわけではないということを理解しておく必要があります

前科はつかないが前歴が残る

書類送検されただけでは前科はつきませんが、「前歴」として記録が残ることになります。前歴とは、警察や検察が事件として取り扱った記録であり、警察庁のデータベースに保管されます。この前歴は、再び事件を起こした際の捜査や処分判断の参考資料として使用されることがあります。

つまり、今後何らかの事件で警察のお世話になった場合、過去に書類送検された経歴が確認され、それが処分に影響する可能性があるのです。

ただし、前歴は前科と違い、一般企業などが通常の方法で確認することはできず、就職活動などに直接影響することは少ないと言えます。しかし、公務員採用試験や一部の資格試験では、身辺調査によって前歴が明らかになる場合もあるため、注意が必要です。

書類送検をされると会社にバレる?

書類送検されると「会社に知られてしまうのではないか」という不安を抱える方も多いでしょう。書類送検自体は原則として公開情報ではないため、警察や検察から積極的に会社に連絡が行くことはありません

しかし、状況によっては会社に情報が伝わる可能性もあります。例えば、職場で事件が発生した場合や、捜査の過程で勤務先への照会が必要になった場合は、会社に知られる可能性が高くなります。また、メディアで報道された場合も、情報が広まりやすくなります。

逮捕され勾留された場合は、長期間の不在により会社に事情を説明する必要が生じることもあるでしょう。在宅での捜査で書類送検された場合は、比較的知られにくいと言えますが、完全に秘密にできるとは限りません。このような状況に備えて、早い段階から弁護士に相談し、適切な対応策を考えることが重要です。

特に、職場への説明が必要になった場合、弁護士から助言を受けることで、不必要な情報の開示を避け、適切な対応ができるようになります。

示談成立における弁護士の役割

示談成立後でも書類送検が行われることを理解した上で、弁護士は加害者にとって重要な役割を果たします。弁護士は、示談交渉を通じて、被害者との和解を促進し、さらに検察に対して不起訴処分を求める活動を行います具体的には、示談成立の経緯や被害者の意向を記した上申書を作成し、検察に提出することで不起訴処分への道を開きます。専門的な法律知識を持つ弁護士は、どのような要素が検察の判断に影響するかを熟知しており、効果的な主張を行うことができます。

また、起訴された場合でも、弁護士は裁判において被告人の立場を守り、有罪判決を避けるために証拠や証人を提出するなどの活動を行います。情状酌量の余地を最大限に主張し、刑罰の軽減や執行猶予を獲得するための戦略を練ります。示談後に書類送検される場合でも、弁護士のサポートがなければ、最良の結果を引き出すことは難しいことが多いです。刑事手続きの各段階で適切な対応を行うためにも、早期の弁護士相談が重要となります。

書類送検の心配がある方は須賀法律事務所へ

須賀法律事務所は、刑事事件に強い法律事務所として、書類送検をはじめとする刑事手続きでお悩みの方々をサポートしています。経験豊富な弁護士が、示談交渉から不起訴を目指した活動、裁判での弁護まで一貫してサポート。初期段階での適切な対応が最終的な結果を大きく左右するため、早めのご相談をおすすめします。

個々の状況に合わせた丁寧な対応と、依頼者様の未来を守る法的サポートを提供いたします。書類送検に関するお悩みは、ぜひ須賀法律事務所にご相談ください。初回相談から親身に対応し、最適な解決策をご提案いたします。

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