コラム

2025/10/04 コラム

【弁護士解説】飲酒運転は初犯でも逮捕?刑罰・前科・再犯の違いとは?

飲酒運転は、たとえ初犯であっても逮捕され、前科がつく可能性が非常に高い行為です。道路交通法の改正により、飲酒運転に対する社会的・法的な制裁は年々厳格化しており、「一度だけだから大丈夫」という言い訳は通用しません。

この記事で伝えたいこと

初犯でも逮捕・前科がつく可能性あり

警察の飲酒検問や事故を起こした際にアルコールが検出されれば、現行犯逮捕されるケースが多く、結果として「前科」が残る可能性が高いです。前科は、単に刑罰を受けることにとどまらず、その後の人生にも長期的な影響を及ぼします。

刑罰は罰金刑から懲役刑まで幅広い

飲酒運転の刑罰は状況によって大きく変わります。

  • 酒気帯び運転(呼気1リットル中0.15mg以上のアルコール)であれば罰金刑や免許停止が中心

  • 酒酔い運転(正常な運転ができない状態)では懲役刑や免許取消の可能性も高い

  • 事故を伴った場合には危険運転致死傷罪など、さらに重い刑罰が科される

つまり、飲酒運転は「運が悪かった」では済まされない、重大な刑事事件となり得ます。

(参考:警視庁|飲酒運転の罰則等)」

前科による社会的影響

前科がつくと、以下のように社会生活に大きな支障をきたします。

  • 就職活動への影響:前科があると企業の採用で不利になる可能性

  • 資格制限:医師・弁護士・教員など、特定の国家資格の登録や更新に制限がかかることがある

  • 社会的信用の低下:家族・職場・周囲からの信頼喪失

このように、飲酒運転は一度の過ちであっても「前科」として一生ついて回り、人生全体に深刻な影響を与えるリスクがあるのです。

当事務所では、飲酒運転に関する法律相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

飲酒運転の種類と刑罰(酒気帯び・酒酔いの違い)

飲酒運転の分類と罰則(比較表)

区分 定義(どういう状態?) 刑事罰(裁判での刑) ポイント
酒酔い運転 アルコールの影響で正常な運転ができない状態(数値は関係なし) 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金 最も重い処罰。警察官の判断や事故状況で立証される。
酒気帯び運転 呼気アルコール濃度が 0.15mg/L以上(または血中0.3mg/mL以上) 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 数値基準で判断。初犯でも逮捕・前科の可能性あり。

酒酔い運転とは?

酒酔い運転は、アルコールの影響で正常な運転ができない状態を指します。

  • 明確な数値基準はない
  • ふらつき運転や事故 が典型例
  • 警察官が「泥酔状態」と判断すれば適用

 

  • 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金
  • 違反点数:35点
  • 免許取消(欠格期間3年)

酒気帯び運転とは?

酒気帯び運転とは、呼気1リットル中に 0.15mg以上 のアルコールが検出された場合に成立します。

  • 例:ビール中ジョッキ1杯、ワイン2杯、日本酒1合程度でも基準を超える可能性あり
  • 警察の飲酒検問や交通違反の取り締まり での発覚が多い
  • 「軽い違反」と思われがちですが、免許停止・罰金刑に加え、前科がつく可能性が十分にあります。

 

  • 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
  • 0.15〜0.25mg/L未満:13点 → 免停90日
  • 0.25mg/L以上:25点 → 免許取消(欠格期間2年)

事故を起こした場合:危険運転致死傷罪

アルコールの影響で 正常な運転が困難な状態(酒酔い状態) で自動車を運転し、人を死傷させた場合に成立します。単なる基準値超過では足りず、運転能力の著しい低下がポイントです。

罰則

  • 致傷(負傷させた場合):15年以下の拘禁刑
  • 致死(死亡させた場合):1年以上の有期拘禁刑

適用判断の基準

  • 酩酊の程度(会話・歩行・反応の様子、検査数値)
  • 運転態様(蛇行・逆走・信号無視・速度超過など)
  • 事故の態様(重大性・被害結果)
  • 供述・映像・実況見分の内容

これらを踏まえ、危険運転致死傷罪か、より軽い 過失運転致死傷罪かが判断されます。

情状で重視される事情

  • 被害者との示談・弁償
  • 反省の態度
  • アルコール依存治療、再発防止計画
  • 職場や家族による監督体制

結果が重大で酩酊度が高いほど、実刑判決となる可能性が高まります。

運転者以外への罰則もある

飲酒運転は運転者本人だけでなく、車を貸した人・酒を勧めた人・同乗者にも罰則が科されます。これは「飲酒運転を社会全体で防止する」という趣旨によるものです

関与者 酒酔い運転の場合 酒気帯び運転の場合 典型例
車両の提供者 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 飲酒を知りながら車を貸す
酒類の提供者・勧酒者 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 2年以下の懲役 または 30万円以下の罰金 運転する人に酒を飲ませる
同乗者(知情同乗) 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 2年以下の懲役 または 30万円以下の罰金 酔っている運転者と知りつつ同乗

👉 つまり、「運転しないから関係ない」では済まされず、飲酒運転に関わった人全員が処罰対象となるのです。

呼気検査の拒否は「別罪」

飲酒のおそれがある場合、警察官は運転者に対して呼気の検査(アルコール検知)を求めることができます。この検査自体に応じない・妨害する行為は、実際に飲酒していたかどうかに関係なく独立の犯罪(検査拒否罪)として処罰対象です。

 

典型例

  • 「忙しいから後にして」と職務質問の場から離れる/測定器具に息を吹き込まない
  • わずかに息を吹くなど、明らかに測定不能な態様を繰り返す
  • 測定器具を押しのける、検査場所から立ち去る

罰則

懲役または罰金が規定されています。不起訴・罰金で済む場合もありますが、本件自体で前科が付き得る点に注意してください。

「正当な理由」になり得る場面の例

  • 呼吸器疾患等により、医師の指示で強い呼気が出せない
  • 事故直後で救急搬送が優先される
    → いずれも客観資料(診断書・救急記録)で裏づける必要があります。単なる不快感・恥ずかしさは正当理由になりません。

実務の流れ

1) 職務質問 → 2) 簡易スクリーニング → 3) 呼気検査の正式実施。検査を拒むほど、逮捕・身柄拘束の可能性が高まります。後日の採血検査の検討や、弁護士への速やかな相談が重要です。

Q&A(よくある誤解)
Q. 基準未満なら検査に応じなくてもいい?

A. 不可。検査に応じる義務は、基準値の結果とは独立しています。
Q. 一口だけ息を吹けば義務を果たしたことになる?

A. 不十分。機器が測定可能な 適切な方法・回数で協力しなければ、拒否・妨害と評価され得ます。

逮捕に至る典型的なケース

  • 飲酒検問での 数値超過
  • 蛇行・信号無視 等の不自然走行による職務質問・測定
  • 物損・人身事故(軽微でも測定される)
  • 通報(同乗者・第三者・防犯通報アプリなど)

いずれのケースでも、警察がアルコール反応を確認すれば、その場で現行犯逮捕される可能性が高いです。

初犯と再犯での処分の違い 

飲酒運転に対する処分は、刑事罰(罰金・懲役刑など)行政処分(免許停止・取消)の二重構造になっています。ここでは、初犯と再犯の違いや、執行猶予の可能性などを整理します。

初犯と再犯のポイント整理

  • 初犯:酒気帯びで事故なしなら罰金(略式)で終わることが多い。示談や反省が評価されれば執行猶予の可能性も。
  • 再犯:既往歴があると 懲役刑選択の可能性が高い。酒酔い・事故では実刑も珍しくない。

罰金刑・懲役刑・執行猶予の可能性

  • 罰金刑 軽度なら数十万円で済む場合あり。ただし前科として残る点に注意。
  • 懲役刑 酒酔い・事故では懲役1〜5年の可能性。
  • 執行猶予 初犯で情状により付くことがある。再犯では実刑リスクが高い。

免許停止・免許取消との関係

  • 酒気帯び:0.15〜0.25mg/L → 免停90日 / 0.25mg/L以上 → 取消(欠格2年)
  • 酒酔い:原則 取消(欠格3年)
  • 再犯:欠格期間が延長、最長で10年近く免許取得不可のことも

👉 一度の違反でも「前科+免許取消」の二重リスク。再犯では実刑+長期欠格現実的になります。

飲酒運転で逮捕された後の流れ

飲酒運転で逮捕されると、その後は刑事手続きに沿った流れで進みます。初犯か再犯か、事故の有無などによって処分は変わりますが、一般的な流れは以下のとおりです。

現行犯逮捕・任意同行の可能性

  • 飲酒検問や交通事故の現場でアルコールが検出されれば、現行犯逮捕となるケースが多いです。

  • 軽微な違反や事故がなかった場合でも、任意同行として警察署に呼ばれることがあります。

  • ただし「任意同行」と言いつつ、実質的に長時間の取調べが行われることもあるため、黙秘権や弁護士依頼の権利を意識しておくことが重要です。

取調べ・勾留の流れ

  • 逮捕後は警察署に留置され、取調べが行われます。

  • 逮捕から最長72時間は警察・検察による身柄拘束が可能です。

  • その後、裁判官が認めれば勾留(最長20日間)される可能性があります。

  • 勾留中は自宅や職場に戻れず、社会的信用や仕事に大きな影響が及ぶため、弁護士を通じて早期釈放を求めることが重要です。

合わせて読みたい取り調べで不利にならないために!弁護士が教える供述のコツとNG行動

起訴・略式起訴の可能性

  • 検察官は取調べや証拠を踏まえ、起訴するか否かを決定します。

  • 初犯で事故がなく反省が見られる場合は、略式起訴(罰金刑)で終わるケースもあります。

  • 一方で、事故を伴った場合や再犯の場合には、正式起訴されて裁判に進み、懲役刑を求刑される可能性があります。

👉 この流れからも分かるように、飲酒運転は「ただの交通違反」ではなく、刑事事件としての手続きが進められる重大な事案です。

飲酒運転で前科がつくとどうなる?

飲酒運転は「交通違反」ではなく「刑事事件」として扱われるため、罰金刑であっても前科が残ります。前科は一度つくと社会生活にさまざまな影響を及ぼし、再犯時には重罰化のリスクも高まります。

前歴と前科の違い

  • 前歴

    • 逮捕や取調べを受けたが、不起訴処分となった場合

    • 警察や検察の内部記録には残るが、法的には「前科」ではない

  • 前科

    • 裁判で有罪判決を受け、刑罰(罰金刑・懲役刑など)が確定した場合

    • 罰金刑でも前科として扱われる点に注意

つまり「罰金だけで済んだから安心」ではなく、罰金刑も立派な前科です。

前科についてはこちらの記事も✅

 

前科による社会的デメリット

  • 就職への影響

    • 公務員試験や一部の企業では「欠格事由」とされることがある

    • 面接や身辺調査で前科が判明し、不採用につながる可能性あり

  • 資格制限

    • 弁護士、公認会計士、警備員、宅建業など一部の資格は前科があると一定期間取得不可

    • 運輸業(タクシー・バス・運送業)でも前科があると採用に不利

  • 社会的信用の低下

    • 周囲への噂、近隣や職場での信用失墜

    • ローンや賃貸契約での不利

再犯時の重罰化リスク

  • 前科がある場合、再犯は情状が極めて悪いと判断されやすい

  • 初犯なら罰金刑で済む行為でも、再犯は懲役刑の実刑となることが多い

  • 執行猶予中の再犯であれば、前の刑罰も併せて実刑となり、刑務所に収監されるリスクが高い

👉 飲酒運転は「一度のミス」で終わらず、将来の就職・資格・生活基盤にまで深刻な影響を及ぼします。

弁護士に相談するメリット

飲酒運転で逮捕された場合、本人や家族が動揺して正しい対応を取れないことが少なくありません。早期に刑事事件に強い弁護士へ相談することで、以下のようなメリットがあります。

逮捕前からの相談でリスクを回避できる

  • 「飲酒運転をしてしまったがまだ警察に発覚していない」など、逮捕前の段階でも弁護士に相談することが可能です。

  • 自首や任意出頭の方法を誤ると、かえって処分が重くなるリスクがあります。

  • 弁護士が同席・助言することで、適切な出頭対応や取調べへの備えができ、逮捕回避や不起訴処分の可能性が高まります。

早期釈放・不起訴の可能性を高められる

  • 弁護士は逮捕直後から接見(面会)し、取り調べへの対応を指導します。

  • 不要な自白や誤解を避けることで、勾留を回避したり早期釈放につなげる可能性があります。

  • 初犯や事故なしのケースでは、弁護士の働きかけにより不起訴処分となる事例もあります。

量刑軽減や示談交渉のサポート

  • 弁護士が被害者との間に立ち、示談交渉を進めることで処分が軽くなる可能性があります。

  • 示談が成立すれば、検察官や裁判所も情状を考慮し、執行猶予や罰金刑で済む可能性が高まります。

  • 量刑相場や過去の判例を踏まえた弁護活動により、懲役刑から執行猶予付き判決への切替を実現するケースもあります。

社会復帰への影響を最小化

  • 前科は就職・資格・社会的信用に影響しますが、弁護士の関与により社会的ダメージを最小限に抑える戦略がとれます。

  • たとえば会社への対応文書作成や、裁判所へ提出する反省文・誓約書のサポートも可能です。

  • 「前科がついても社会復帰できる」ための具体的なロードマップを一緒に考えてもらえる点も大きなメリットです。

👉 飲酒運転は一度の違反でも逮捕・前科につながる重大な事件です。逮捕前からの相談でも対応可能であり、弁護士に依頼することで早期解決や量刑の軽減につながる可能性があります。

よくある質問(FAQ)

Q.初犯でも会社から懲戒・退職金不支給になることはありますか?

A.あります。最高裁令和5年6月27日判決は、教員の酒気帯び運転に対し懲戒免職と退職金全額不支給を適法と判断しました(処分庁の裁量を広く認める趣旨)。

Q.自転車の飲酒運転は?

A.2024年11月の法改正により、自転車の飲酒運転も厳しく処罰されるようになりました。酒気帯び運転は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、酒酔い運転は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます。

Q.企業(白ナンバー)にもアルコールチェック義務はありますか?対象は?

A.あります。2022年改正で、白ナンバーでも「乗車定員11人以上を1台以上」または「その他の自動車5台以上」の事業所は運転前後のチェックと記録・1年保存が義務化されました。気帯びは数値(0.15mg/L以上)、酒酔いは数値に限らず正常運転が困難な状態がポイント。後者は懲役・取消の可能性が高いです。

Q.基準未満でも飲酒運転で処罰されることはありますか?

A.あります。挙動・言動・事故態様などから酒酔い運転が認定され得ます。呼気検査拒否はそれ自体が別罪です。

Q.事故を起こしたら、危険運転致死傷罪がすぐ適用されますか?

A.「悪質・危険な行為への厳罰化」を目的に自動車運転死傷処罰法が2014年5月20日施行。適用可否は酩酊度・運転態様・結果など総合判断で、必ずしも一律ではありません。査拒否罪の対象です。飲酒の有無に関係なく、正当理由なく協力しないと処罰され得ます。

Q.飲酒運転で逮捕された後の流れはどうなりますか?

A.逮捕→取調べ→送致(最大72時間)→勾留(最長20日)の可能性→起訴判断。初犯・事故なしは略式罰金のことも。

Q.免許停止と免許取消は何が違いますか?基準は?

A.酒気帯び:13点(免停90日)/25点(取消・欠格2年)、酒酔い:35点(取消・欠格3年)が目安。前歴で加重されます。

Q.執行猶予を得るには、どんな情状・立証が効果的ですか?

A.実務例では、車両売却や贖罪寄付、被害弁償・示談資料提出、家族の情状証言など多面的立証で「懲役6月・求刑→懲役6月執行猶予3年」の判決に至った事例があります。

Q.アルコール・インターロックはコンプライアンス上有効ですか?

A.有効です。装置が運転可否を物理的に制御するため、企業のコンプライアンス強化策として注目されています。

Q.会社員の場合、企業にはどんな義務やリスクがありますか?

A.一定規模の白ナンバー事業所でも検知器による確認・記録・1年保存が義務化。体制不備は是正・処分・罰金のリスク。車両提供者として刑事責任を問われ得ます。

まとめ

飲酒運転は「一度だけだから大丈夫」というものではなく、初犯であっても逮捕・前科がつく可能性が高い重大な犯罪行為です。
酒気帯び運転・酒酔い運転・危険運転致死傷罪など、状況に応じて科される刑罰は罰金刑から懲役刑まで幅広く、行政処分(免許停止・取消)と併せて大きな影響を及ぼします。

さらに、前科がつけば就職や資格制限、社会的信用の低下といった不利益が一生ついて回ることになります。
また、飲酒運転に関わった運転者本人だけでなく、車を貸した人・酒を勧めた人・同乗者も処罰対象となる点にも注意が必要です。

万が一、飲酒運転で逮捕されてしまった場合、できるだけ早期に弁護士へ相談し、示談交渉や再発防止策を整えることが刑事処分を軽減するために重要です。

須賀法律事務所では、飲酒運転に関する刑事事件について、逮捕直後の初動対応から示談交渉、裁判対応まで幅広くサポートしています。
「初犯でも前科がつくのか不安」「できるだけ軽い処分で済ませたい」といったご相談も承っております。

 飲酒運転で逮捕された場合、対応の早さが今後の処分に直結します。
まずはお気軽に当事務所までご相談ください。

 

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