2025/06/13 コラム
突然の呼び出し!在宅事件で警察に事情聴取される流れと注意点とは?
在宅事件とは?
「警察から呼び出されたけど、逮捕されたわけじゃない…これは一体何?」
そんなとき、考えられるのが在宅事件です。
在宅事件とは、
容疑者が逮捕・勾留されることなく、通常の生活を続けながら捜査を受ける刑事事件
のことをいいます。
警察や検察による取調べには出頭しなければなりませんが、自宅で生活できる点が大きな特徴です。
ただし、「逮捕されていない=軽い事件」というわけではありません。
在宅事件でも、後に起訴されて刑事処分を受けたり、場合によっては途中で逮捕される可能性もあるため、慎重な対応が必要です。
在宅事件と身柄事件の違い
刑事事件には大きく分けて「在宅事件」と「身柄事件」の2つがあります。
違いは一言で言えば、容疑者が自由か拘束されているかです。
●身柄事件とは
身柄事件は、容疑者が逮捕されて警察署などに拘束された状態で進む捜査のことです。
現行犯逮捕や逮捕状による通常逮捕のほか、勾留(最大20日間)を経て取り調べが続くこともあります。
外部との接触が制限され、連日の取調べで心身ともに大きな負担を強いられます。
●比較表:在宅事件と身柄事件の違い
項目 | 在宅事件 | 身柄事件 |
---|---|---|
被疑者の状態 | 自由(逮捕なし) | 拘束(逮捕・勾留中) |
取調べ | 呼び出しに応じて出頭 | 拘束下で連日実施 |
精神的負担 | 比較的軽い | 非常に重い |
社会生活 | 継続可能 | 一時的に不可 |
在宅事件であれば、仕事や学業を続けながら取調べに応じることが可能です。
一方、身柄事件では生活が止まり、社会的ダメージも大きくなりがちです。
◆在宅事件になるかどうかは誰が決める?
「逮捕されるか」「在宅のままにするか」の判断は、警察や検察が次のような要素をもとに総合的に決定します:
-
逃亡のおそれがあるか
-
証拠隠滅の可能性
-
犯罪の重大性・悪質性
-
被疑者の反省態度や示談の有無
はじめは在宅事件として扱われていても、捜査の進展次第で逮捕に切り替わることもあります。
◆警察からの呼び出しはどう届く?
在宅事件では、警察からの呼び出しは以下のような形で行われます:
-
電話連絡:「○○署の者ですが、お話を聞きたいことがある」といった形で突然かかってくることがあります。
-
書面通知:「出頭要請書」や「任意同行のお願い」といった文書が自宅に届くこともあります。
どちらの場合も、呼び出しにどう対応するかが今後の捜査結果に影響する可能性があります。
「軽い話だから大丈夫」と自己判断せず、早めに弁護士に相談することが自分を守る第一歩です。
事情聴取の当日の流れとは?
警察から呼び出されたら、指定された日時に警察署の取調室や応接室に出向くことになります。服装や持ち物など、ちょっとした準備が心の余裕につながります。ここでは、当日の流れを時系列でご紹介します。
【1】受付~案内
到着したら、まずは警察署の受付で名前と用件(呼び出しを受けたこと)を伝えます。係の警察官に案内され、取調室や応接スペースに通されます。事件の内容や警察署の設備によっては、一般的なデスク席や個室の会議室などが使われることもあります。
【2】事情聴取の内容
聴取では、次のようなことを聞かれるのが一般的です:
-
事件発生当時の状況(いつ、どこで、何をしたか)
-
被害者との関係性
-
自分の言い分(認める・否定する)
供述調書が作成される場合、内容にサインを求められることもあります。納得できない内容に署名する必要はありません。不安な場合は「弁護士に相談してから」と伝えましょう。
所要時間は1時間〜数時間とケースによってまちまちです。長引く場合は何度か呼び出されることもあります。
【3】持ち物と服装の注意点
持ち物で特別に必要なものはありませんが、身分証(運転免許証など)は念のため持参しておきましょう。スマートフォンを確認される可能性もあるので、ロックを外すよう求められることがあります。
服装は自由ですが、あまりにラフすぎたり、逆にスーツで緊張感を与えすぎる必要もありません。清潔感のある普段着でOKです。
関連コラム:取り調べで不利にならないために!弁護士が教える供述のコツとNG行動 |
聴取後どうなる?在宅事件の今後の流れ
警察での事情聴取が終わっても、それで事件が終わるわけではありません。在宅事件では、聴取内容をもとに、その後の処分が決まっていきます。
聴取の回数と期間はどれくらい?
在宅事件の取調べは事件の性質や捜査の進行状況によって、2〜3回程度行われるのが一般的です。間隔も数日後〜数週間後とばらつきがあります。
1回あたりの聴取時間はおおむね3〜4時間前後。警察段階での捜査期間は1〜2か月、さらに検察での処理にも1〜2か月程度かかるのが平均的です。
複雑な事件や関係者が多い場合は、半年以上かかることも珍しくありません。
警察での聴取後、検察からも呼び出される
警察での捜査が終わると、事件は検察に送致(書類送検)されます。
その後、検察官があらためて被疑者本人を呼び出し、聴取を行うことがあります。これが「検察庁での事情聴取」です。
検察官は以下のような点を確認します:
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犯行を認めているかどうか
-
被害者との示談の進み具合
-
社会的な反省の有無、生活状況
この聴取は起訴・不起訴を判断する重要な材料になります。
呼び出しは郵送または電話で通知され、所要時間は30分~1時間程度。警察より穏やかな雰囲気で進むことが多いですが、ここでの発言も処分に大きく影響します。
事前に弁護士へ相談すれば、質問への備えや発言内容の整理ができるため、リスクを最小限に抑えることができます。
書類送検されるか、それとも「微罪処分」で終わるか
警察での聴取の結果、犯罪の疑いがあると判断されれば、事件は書類送検という形で検察に送られます。
これは、逮捕されていない被疑者に関する調書や証拠資料を、検察に引き継ぐ手続きです。
ただし、この時点で有罪や前科が決まるわけではありません。送検とはあくまで、「判断のバトンを検察に渡す」段階にすぎません。
一方で、ごく例外的に、事件が「微罪処分」として警察段階で終了するケースもあります。
これは、犯罪の成立が疑われつつも、被害の程度が極めて軽微で、社会的な影響も少ないと判断された場合に限られる特例的な扱いです。
たとえば、次のような事案が一部該当することがあります:
-
少額の万引きで弁償・謝罪が済んでいる
-
軽いトラブルで被害届が出されていない
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初犯で深く反省しており、再犯の可能性が極めて低い
このようなケースでは、事件は検察に送られることなく、警察内部で処理が完結し、「おとがめなし」に近い形で終わります。
ただし、この微罪処分は極めてまれであり、以下のような注意点があります:
-
処分の記録は警察内部に残る
-
適用されるケースはごく限られた例外にすぎず、明確な基準もない
-
警察の裁量が非常に大きく、予測や誘導は難しい
つまり、「送検されずに済むかもしれない」という期待は基本的に持つべきではありません。
どちらの判断が下されても冷静に対応できるよう、早い段階で弁護士に相談し、リスクと備えを明確にしておくことが重要です。
最終的な処分は検察官が決定
警察から書類送検された事件について、最終的な処分を決めるのは検察官です。
検察は、警察の捜査資料や供述内容、示談の有無などを総合的に判断し、次のいずれかの処分を選びます:
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起訴:刑事裁判に進み、有罪・無罪が法廷で争われる
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略式起訴:罰金刑が郵送で確定し、出廷なしで終結(前科はつきます)
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不起訴:刑事手続きが終了し、前科もつきません
不起訴処分には3つの種類があります:
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嫌疑なし:そもそも犯罪がなかった
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嫌疑不十分:証拠が足りない
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起訴猶予:犯罪は成立するが、反省や社会的影響の小ささから起訴を見送る
なお、在宅事件の場合は身柄事件と違い、処分期限が法律で定められていないため、処分の決定に数ヶ月かかることもあります。
さらに、不起訴処分が出ても、本人に書面で通知されないことも珍しくありません。
そのため、処分結果が気になる場合は、1か月に1回程度を目安に、担当検察官へ電話で問い合わせるのが現実的です。
「現在も捜査中です」といった回答が返ってくることも多く、こちらから確認しない限り状況が分からないまま時間だけが過ぎることもあります。
在宅事件では、こうした「処分待ちの期間」も精神的負担になるため、弁護士に経過確認や対応を任せておくことも有効です。
よくある勘違いと不安:Q&A形式で徹底解説!
Q:「呼び出しに応じないと逮捕される?」
A:すぐに逮捕されるわけではありませんが、リスクは高まります。
在宅事件での呼び出しは「任意」ですが、正当な理由なく無視を続けると、逃亡や証拠隠滅の可能性ありと判断され、逮捕に切り替えられる場合があります。
やむを得ない事情がある場合は、事前に弁護士を通じて説明することが重要です。
Q:「その場で自白したらもう有罪?」
A:いいえ、自白しただけでは有罪にはなりません。
刑事手続きでは、自白以外にも客観的証拠の裏付けが必要です。
ただし、曖昧な説明や誤解を招く発言が記録されてしまうと、不利に働くおそれがあります。
取調べの前に弁護士と相談し、冷静に対応することが大切です。
Q:「被害者と示談すれば終わる?」
A:示談は重要な要素ですが、それだけで事件が終了するとは限りません。
たとえ被害者と示談が成立していても、事件の内容や社会的影響が大きい場合には、起訴されることもあります。
また、被害者が示談を拒否している場合や連絡が取れない場合には、示談そのものが成立しないこともあります。
ただし、示談が成立していることは、不起訴や起訴猶予に大きく影響する可能性があるため、早めに弁護士に依頼して対応を進めるのが得策です。
Q:「弁護士はいつ依頼すればいいの?」
A:できるだけ早い段階での相談がベストです。
警察から呼び出しがあった時点で、既に捜査はかなり進んでいると考えるべきです。
不利な発言を避け、示談の進め方や対応の方針を立てるためにも、聴取前の相談が非常に重要です。
在宅事件だからといって油断せず、初動で弁護士を入れることで結果が大きく変わることもあります。
Q:「在宅事件でも前科がつくことはある?」
A:はい、起訴されて有罪判決を受ければ、たとえ逮捕されていなくても前科はつきます。
在宅事件=軽い、というわけではなく、重い処分につながるケースもあります。
略式起訴による罰金刑でも前科は記録されるため、処分の見通しを早めに知ることが大切です。
呼び出しが来たら焦らず弁護士に相談を
一人で判断しないことが、後悔を防ぐ第一歩
警察や検察から突然の呼び出しを受けると、多くの人が動揺し、自己判断で対応してしまいがちです。
しかし、取調べでの何気ない一言が、不起訴のチャンスを失わせたり、処分を重くしてしまうこともあります。
在宅事件は、たとえ逮捕されていなくても、刑事処分につながる重大な局面です。
そのため、「自分は大丈夫」「話せば誤解は解ける」という思い込みは非常に危険です。
早めの対応が、不起訴や軽微な処分につながることも
早い段階で弁護士に相談すれば、以下のような対応が可能になります:
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取調べで不利な発言をしないための事前準備
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示談交渉の戦略と実務対応
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処分の見通しやリスクの客観的な説明
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警察や検察との適切なやりとりの仲介
こうした準備が整っていれば、不起訴や起訴猶予、略式罰金といった軽い処分で済む可能性も高まります。
まずは、焦らず一呼吸。弁護士に相談することから始めましょう。
呼び出しを受けたときこそ、冷静に、そして確実に自分を守る行動が必要です。
一人で抱え込まず、まずは専門家に相談することが、将来の不安を大きく減らす第一歩です。