2025/05/19 コラム
【事例解説】文化財への落書きで400万円の賠償!? 若者が直面した驚きの代償とは
「落書きくらい、たいしたことじゃない」──そう思っていませんか?
2025年3月、新潟市で実際に起きた事件では、わずか19歳の若者2人が文化財に落書きをしたとして逮捕され、最終的に400万円以上の賠償請求を受けることになりました。
しかも対象となったのは、新潟市の象徴とも言える国の重要文化財・萬代橋(ばんだいばし)。足場を組んでの消去作業や通行規制まで行われ、多額の費用が発生したのです。
この事件は、「軽い気持ち」「ノリ」だけで済まされない現実を突きつけました。
落書きは単なるイタズラではなく、器物損壊罪や文化財保護法違反に問われる重大な犯罪です。
この記事では、事件の詳細や法律的なリスク、逮捕や賠償の流れ、そして若者がやりがちな「ちょっとした行為」の裏にある重大な代償について、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
落書きは何罪?
「落書きくらい、ただのイタズラでしょ?」と思っていたら要注意。
落書きは立派な犯罪行為です。描いた対象や状況によっては、逮捕・送致・高額な賠償請求まで受ける可能性があります。
器物損壊罪
落書きが最も多く該当するのが「器物損壊罪」です。
他人の物を壊したり、汚したり、価値を下げるような行為が対象になります。
(器物損壊等) 第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 |
自転車、看板、シャッター、家の壁などに描いても器物損壊罪になります。
器物損壊罪は「親告罪」
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親告罪とは、「被害者が訴えて初めて処罰できる犯罪」のこと。
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落書きをされた建物やモノの所有者が被害届や告訴を出さなければ、原則として起訴できません。
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ただし例外として、現行犯であれば被害届がなくても逮捕されることがあります。
実際、「ガードレールに落書きしているところを現行犯で逮捕」や、「ビルに落書きをしているところを防犯カメラの映像から身元が特定され、後日逮捕された」というニュースもあります。
公共物・文化財への落書きは重罪
個人の家や塀への落書きでももちろん罪になりますが、
特に重く扱われるのが、公共物や文化財への落書きです。
文化財保護法 195条 重要文化財を損壊し、毀棄し、又は隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。 196条 史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、毀損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。 |
文化財への落書きは、単なる器物損壊ではなく、文化財の価値を損なう行為として厳しく罰せられます。特に観光地などでの落書きは問題視されることが多いです。
刑事で不起訴でも民事で賠償を求められるケースも
落書き事件では、たとえ刑事事件として不起訴になったとしても、損害賠償を求められることがあります。これは、刑事事件と民事事件がまったく別の手続きだからです。
刑事と民事の違いは?
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刑事事件:国(検察)が加害者を処罰するために起こす手続き。証拠が不十分であれば「不起訴」となります。
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民事事件:被害者が「損害を補償してほしい」と加害者に請求する手続き。こちらはたとえ不起訴になっていても、損害の事実があれば成立する可能性があります。
なぜ賠償を求められるの?
例えば、文化財や公共物に落書きをしてしまった場合──
警察が証拠不十分と判断し、刑事事件として不起訴となったとしても、
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萬代橋の落書き事件のように、修復に数百万円の費用が発生した
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所有者(国・自治体など)が損害回復を求める意思を持っている
という状況であれば、民事で損害賠償請求が行われることがあります。
民事では何が重視される?
民事では「合理的な疑いを超える証明」までは求められません。
次のような要素があれば、損害賠償が認められることもあります。
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防犯カメラ映像や目撃証言
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SNSへの投稿や行動履歴
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過失や落書きをした痕跡(スプレー缶の所持など)
落書き事件では、たとえ不起訴となっても「賠償請求」は現実にあり得ます。
消去費用や修復費が何十万〜数百万円にのぼるケースもあり、若年層やその家族にとって大きな経済的負担となりかねません。
「ちょっとしたイタズラ」では済まない現実があることを、しっかりと理解しておく必要があります。
落書きは決して軽い行為ではなく、刑事罰+民事での損害賠償という重い責任が伴うことを、ぜひ知っておきましょう。
落書きで逮捕されたらどうする?まずは弁護士に相談を
落書きで現行犯逮捕された、あるいは防犯カメラの映像やSNS投稿などから後日逮捕された──そんなとき、最も重要なのが早期に弁護士へ相談することです。
逮捕後に起こる流れとは?
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警察による取調べ(任意・または勾留付き)
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検察への送致・勾留請求
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起訴 or 不起訴の判断
この一連の流れは非常にスピーディーに進み、本人や家族だけで正しい対応を取るのは困難です。
詳しくはこちら:刑事事件の流れ |
弁護士ができること
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早期釈放のための交渉・準備
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被害者との示談交渉のサポート
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文化財保護法や器物損壊罪の理解と対策
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起訴を回避するための弁護活動
特に落書きが文化財や公共物であった場合、罪が重くなる可能性があるため、専門的な対応が不可欠です。
未成年の場合も弁護士が重要
家庭裁判所への送致や少年審判となる場合でも、弁護士が早期から介入することで、
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処分の軽減
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保護観察での終了
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将来への影響を最小限に抑える
といった結果を導ける可能性があります。
詳しくはこちら:「少年法で守られない?」少年法の流れと特定少年・逆送を徹底解説 |
まとめ:落書きの代償は大きい!
「ほんのイタズラのつもりだった」「SNS映えを狙っただけ」──そんな軽い気持ちが、逮捕・前科・高額な賠償請求という深刻な事態につながることがあります。たった1回の行動が、進学・就職・信用・人生そのものに影響を及ぼすこともあるのです。
とくに文化財や公共物への落書きは、器物損壊罪や文化財保護法違反として重く扱われ、親告罪であっても現行犯や証拠があれば逮捕・送致される可能性があります。
未成年であっても例外ではなく、家庭裁判所での審判や損害賠償請求に発展することも。
今後同じ過ちを繰り返さないためにも、早期の法的相談と、社会全体での啓発・教育の強化が重要です。
問題が起きたときは「慌てず、まず弁護士に相談する」──これが、人生を守る第一歩です
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