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2025/05/08 コラム

【今すぐ相談!】ストーカー規制法で警察に動いてもらうには?証拠・告訴・弁護士対応の流れも解説

「なんとなく気味が悪い」「しつこいLINEが続いている」──ストーカー被害は、最初は些細な違和感から始まります。しかし、それを放置するとエスカレートし、殺人事件など深刻な事件へと発展することも少なくありません。ストーカー規制法や警察の対応、さらには裁判での手続きについて知っておくことで、いざというときに自分や大切な人を守ることができます。

この記事では、警察が実際に動いてくれるために必要なポイント、ストーカー規制法の内容、弁護士に依頼すべきケースなどをわかりやすく解説します。

【ストーカー規制法とは?】

ストーカー規制法(正式名称:ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、2000年に制定された法律で、悪質なしつこい付きまとい行為から被害者を守ることを目的としています。

この法律は、特定の相手に対して、継続的に「つきまとい」などの嫌がらせ行為を行うことを禁止し、刑事罰の対象とすることで、被害者の安全と平穏を守ろうとするものです。

▶ 法律の対象となる「つきまとい等」の行為

ストーカー規制法では、次のような行為が「つきまとい等」として規制の対象になります。これらの行為が繰り返し行われる場合、ストーカー行為とみなされ、警察や裁判所が介入します。

  • つきまとい・待ち伏せ・うろつきなど
      • 自宅・職場・学校など、相手の行動範囲に現れて監視する

      • 帰宅途中に後をつける

      • 自宅周辺をうろつく、または突然訪問する

  • 監視していると告げる行為
      • 「昨日◯◯にいたね」「服装がかわってたね」など、相手の行動を把握していると示す

      • 直接・SNS・メールなどで「見ている」「知っている」と伝える行為

  • 面会や交際の要求
      • 拒否されているのに会おうとする

      • 交際や復縁を求める

      • 繰り返しプレゼントを送りつける、受け取るように強いる

  • 乱暴な言動
      • 大声で怒鳴る、暴力的な言葉で責める

      • 自宅の前でクラクションを鳴らす

      • 粗暴なメールやDMを送りつける

  • 無言電話、連続した電話・メール等
      • 無言電話や、1日に何十件もの着信

      • LINEやSNSでブロックされても別アカウントで連絡してくる

  • 汚物等の送付
      • 汚物、動物の死体、気味の悪い物を送ることで精神的苦痛を与える

  • 名誉を傷つける
      • SNSなどで中傷する

      • 「浮気していた」「借金がある」など、虚偽の噂を広める

  • 性的羞恥心の侵害
      • わいせつな写真を送りつける
      • 電話や手紙で卑わいな言葉を言う

 

  • GPS機器等を用いた位置情報の取得
      • 承諾なくスマートフォン等の位置情報を取得する
      • 車両にGPS機器を取り付け位置情報を受信する
  • GPS機器等の取り付け行為
      • 承諾なく自動車やカバン等にGPS機器を取り付ける

 

▶ 法改正により対象が拡大

もともとストーカー規制法は、恋愛感情や好意のもつれが前提でした。しかし、2021年の法改正で、「恨み」「逆恨み」「執着」など恋愛以外の感情によるつきまといも規制対象になりました。

たとえば、

  • 友人関係のもつれ

  • SNSでのトラブル

  • 仕事関係での嫌がらせ
    なども、ストーカー規制の対象になり得ます。

ストーカー規制法 警視庁

【警察への相談の流れ】

ストーカー被害に遭ったら、まず「ひとりで悩まず警察に相談すること」が大切です。ただし、相談の仕方によって警察の反応や対応のスピードは大きく変わります。

警察相談専用ダイヤル☎(全国共通:#9110)

  • 緊急性はないが困っている場合

  • ストーカーかどうか分からないが、相談したいとき

▶ 相談内容に応じて専門の相談窓口につなげてくれます。

相談ホットラインのご案内 警視庁

110番📞(緊急時)

  • 命の危険を感じるとき(つけられている・家に押しかけられた 等)

  • 現在進行形で不審な人物が近くにいるとき

即時対応。パトカーが来ることもあります。

 最寄りの交番・警察署で生活安全課に繋いでもらう🏢

ストーカー被害は、警察署の中でも「生活安全課(生活安全部)」が担当です。
交番や電話で最初に相談した際には、必ずこう伝えてください

「ストーカー被害の相談で、生活安全課の担当の方にお話したいです」

これを言うことで、適切な部署に繋がりやすくなり、対応も真剣になります。

生活安全課での面談・事情聴取

警察署に出向いた場合、生活安全課の担当者と以下のような流れで話を進めます。

 面談の流れ📋

  1. 被害状況のヒアリング(いつから、何をされたか)

  2. 加害者に心当たりがあるかどうか

  3. 物理的証拠(LINE・録音・写真・監視映像など)があるか確認

  4. 緊急性や危険性の判断

被害の深刻さ・証拠の有無・加害者の特定の可否によって、今後の対応が変わります。

【警察に動いてもらうために必要なこと】

「相談したけど、動いてくれなかった…」という声も少なくありません。警察に確実に動いてもらうには、以下の点が非常に重要です。

✅ 1.証拠をできるだけ集める

警察は証拠がないと動けないことが多いです。

  • SNS・LINEのスクショ(日時・相手が分かるように)

  • 着信・通話履歴、メール内容

  • 監視カメラ映像・録音音声

  • 加害者の車両番号や顔写真

  • 送られてきた物の写真や現物

「被害の内容」「継続性」「加害者の特定」の3点セットが大切

✅ 2.「恐怖」「継続性」を明確に伝える

ストーカー規制法では、「同じ人からのつきまといが繰り返されること」が前提です。
そのため、警察には以下のように具体的に伝えましょう:

  • 「1週間で10件以上の連絡が来ている」

  • 「職場の前に毎日来ている」

  • 「夜になると家の前に車を止めて見張っている」

曖昧ではなく、回数・日付・場所を具体的に言うことが重要!

✅ 3.「命の危険がある」「追い詰められている」とはっきり言う

「ただのケンカ」や「恋愛のもつれ」と思われると、優先順位が下がります。
相談のときは、精神的な状態や生活への影響も必ず伝えてください:

  • 「眠れず、仕事も手につかない」

  • 「外出が怖くて引きこもっている」

  • 「命の危険を感じている」

✅ 4.過去の相談記録を残しておく

一度目の相談では動いてもらえなくても、2回目・3回目の相談時に「前回も相談した」と言えることが重要です。

  • いつ・どの署で・誰に相談したか

  • どんな返答があったか

を記録しておきましょう。

 

警察への相談は、「命を守るための第一歩」です。
ですが、動いてもらうためには「証拠」「恐怖の具体性」「継続性」の3つがカギになります。

被害を我慢せず、「証拠を持って」「生活安全課」にしっかりと相談することが、次の段階への一歩になります。

警察が行う対応の流れ

ストーカー被害にあったとき、警察はどのように動いてくれるのでしょうか?
ここでは、警察が行う対応の流れと、それぞれの段階での措置内容について詳しく解説します。

▶ 警察対応の全体の流れ

ストーカー規制法では、警察が「つきまとい等」に該当すると判断した場合、以下のような段階的な措置が取られます。

【STEP①】警告(行政指導)

警察署長名で加害者に対して「つきまとい行為をやめるように」と警告を出します。これはいわゆる行政指導であり、罰則はありませんが、公式な記録として残ります

警告のポイント:

  • 被害者の申告と証拠に基づいて行われる

  • 書面または面談形式で加害者に通知される

  • 1回目から強制力はないが、違反時には次のステップへ進みやすくなる

【STEP②】禁止命令(公安委員会による命令)

警告にもかかわらず行為が続く、または悪質性が高い場合は、都道府県公安委員会が「禁止命令」を出すことができます

禁止命令とは:

  • 法的拘束力がある命令

  • 命令に違反すると、刑事罰の対象になります

  • 内容は、被害者への接近禁止、連絡の禁止、待ち伏せ行為の禁止などが含まれる

【STEP③】刑事処罰(違反時の罰則)

加害者が禁止命令を無視して行為を続けた場合、以下のような刑事罰が科されることがあります。

主な刑罰:

  • 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(ストーカー規制法違反)

  • 特に悪質な場合や再犯の場合には、逮捕・勾留される可能性もある

▶ その他:状況に応じた警察の支援

加害者の行動がエスカレートしていたり、被害者の恐怖心が強い場合には、以下のような追加的な支援策が取られることもあります。

✅ パトロールの強化

  • 被害者の自宅や職場の周辺を巡回して警戒

✅ 見回りや自宅への同行支援

  • 被害者が帰宅する際に警察官が付き添う

  • 危険がある時間帯に自宅周辺の監視を強化

✅ 一時的な避難場所の案内

  • 必要に応じて、民間シェルターや支援団体と連携し、避難のサポート

警察は、被害状況に応じて「警告」→「禁止命令」→「刑事罰」と段階的に加害者への対応を強めていきます
ただし、対応を受けるためには、被害の具体性・証拠・恐怖の明示が必要です。

「警察に相談しても動いてくれない」と感じたら、弁護士に相談して対応を加速させる方法もあります。

【警察がストーカー被害で対応できないパターン】

以下は、実際によくある「対応されにくい」または「動きが鈍い」パターンです。

❌【1】一度きりの行為で、継続性がない場合

ストーカー規制法では、反復して行われる行為が前提です。

▶ 例:

  • 一度だけLINEが来た

  • 一度だけ家の前にいた

  • 一度だけ無言電話があった

一度だけでは「つきまとい等」と認定されず、警察は動けない場合が多いです。

❌【2】加害者が特定できていない場合

「誰がやっているのかわからない」という状況では、警告も禁止命令も出せません

▶ 例:

  • SNSの捨てアカウントからDMが来る

  • 自宅に無言電話や物が届くが、相手が不明

  • GPSで追跡されている気がするが証拠がない

警察も「加害者不明」では事実確認や処分ができません。

❌【3】恋愛感情も恨みもなさそうなケース(対象外行為)

ストーカー規制法の適用には、「恋愛感情や恨み・執着などの感情に基づく行為」が前提とされています(2021年改正後も)。
単なる業務トラブル、近隣トラブル、通りすがりの嫌がらせ等は、別の法律(迷惑防止条例など)の適用になります。

▶ 例:

  • 近隣住民からの嫌がらせ

  • 会社の元同僚からの一度きりの電話

  • 通行人からの暴言

→ ストーカー規制法の範囲外になりやすい。

❌【4】証拠がない・内容が曖昧

▶ 例:

  • 「なんとなく見られてる気がする」

  • 「気配がするけど録音も録画もない」

  • 「無言電話が多いけど、履歴を消してしまった」

証拠がないと警察は動けません。相談自体はできますが、証拠があれば次のステップに進める可能性が上がります。

❌【5】被害者が対応をためらっている場合

警察が「加害者に連絡してもいいですか?」と確認したとき、被害者が「やっぱり怖いからやめてほしい」と断ると、それ以上の措置に進めなくなることがあります。

被害者の同意がないと、警告や禁止命令には基本的に進めません。

✅補足:でも対応できる場合もある!

ストーカー規制法に該当しない場合でも、以下のような別の法律で対応できることがあります

  • 迷惑防止条例違反(公共の場でのつきまとい)

  • 脅迫罪・名誉毀損罪(SNS投稿や暴言)

  • 軽犯罪法違反(深夜のうろつきなど)

  • 不法侵入・器物損壊(敷地に入り込んだり物を壊した場合)

▶ 法的な視点で広く見れば、ストーカー規制法以外のルートで対応できるケースもあるということです。

警察がストーカー被害にすぐ動かない主な理由は以下の5つ

  1. 行為が一度きりで「反復性」がない

  2. 加害者が特定できない

  3. 恋愛や恨みの感情に基づく行為でない

  4. 証拠がない・曖昧

  5. 被害者の同意がない(警告・告訴をためらう)

 

【警察が対応できないとき、弁護士ができること】

 

▶ 1.内容証明郵便で「やめろ」と正式に警告

加害者が誰か分かっている場合、弁護士が「これ以上の接触をやめなければ法的措置を取る」という内容証明を送ることができます。

  • 弁護士の名前入りで送られることで心理的な威圧効果がある

  • 今後裁判になったときに「警告を無視していた」という証拠にもなる

警察ができない「法的根拠に基づく警告」ができるのが強み

▶ 2.加害者に対する民事請求(慰謝料・接近禁止)

  • つきまといや嫌がらせ行為が続いて精神的苦痛を受けたら、慰謝料請求

  • 自宅や職場に近づかないようにする仮処分(接近禁止命令)の申立てもできる

➡ 法律上の手続きを使って「近づくと違法になる」状態を作れる。

▶ 3.刑事告訴のサポート

  • 警察が被害届を受理してくれない場合、弁護士が告訴状を代理で作成・提出することで、受理されやすくなる

  • 加害者の行為が名誉毀損、脅迫、ストーカー規制法違反に該当するかどうか、法的に判断して整理してくれる

「ただのトラブル」ではなく「犯罪だ」と見なされるよう働きかけできる

参考コラム:

刑事告訴とは何か?被害届との違いはあるの?刑事告訴について徹底解説! 

▶ 4.証拠の整理・保全

  • あなたが持っている証拠(LINE、録音、監視映像など)法的に有効な形にまとめて保存・提出してくれる

  • 弁護士が間に入ることで、「警察や裁判所が受け取りやすい証拠」に変わることもある

▶ 5.警察に対して働きかけ

実は、弁護士が警察に連絡して「こういう被害があります」と伝えると、警察の対応が変わることがあります

  • 法的視点で被害状況を整理して伝えられる

  • 弁護士からの「お願い」は、一般人よりも重く受け取られることが多い

✅【弁護士に相談すべきタイミング】

  • 警察が相談に乗ってくれない/「対応できない」と言われた

  • 証拠はあるのに、加害者がしつこくつきまとう

  • 相手の連絡先や住所が分かっていて、何かしらの対処をしたい

  • SNSやネット上での嫌がらせが続いている

  • 心身に支障が出てきて、生活が限界に感じる

弁護士は「警察ができないこと」をできるプロ。
証拠の整理から加害者への警告、損害賠償請求、裁判手続きまで全部対応できるし、あなたに代わって戦ってくれる味方です。

【ストーカー被害は一人で抱え込まないで】

ストーカー行為は、日常の安心や自由を奪う深刻な問題です。ストーカー規制法によって、警察や裁判所は対応できる仕組みを整えています。しかし、実際に動いてもらうためには、証拠の確保や法的知識が必要です。

警察に相談することから始め、必要に応じて弁護士の力を借りることで、より強力な法的保護を受けることができます。一人で悩まず、まずは信頼できる窓口に相談することが、被害から身を守る第一歩です。

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