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2025/03/12 コラム

「少年法で守られない?」少年法の流れと特定少年・逆送を徹底解説

少年事件とは、20歳未満の者(少年)が起こした刑事事件を指し、成人の刑事事件とは異なる扱いを受けます。日本の少年法では、「少年の更生」を重視し、厳罰ではなく教育や再生の機会を与えることを目的としています。そのため、成人の刑事裁判とは異なり、原則として家庭裁判所が事件を審理し、保護処分(少年院送致・保護観察など)を決定するのが特徴です。

しかし、2022年の少年法改正により、18歳・19歳の「特定少年」に対しては、従来の少年事件とは異なる厳格な対応がとられるようになりました。特定少年は、重大犯罪を犯した場合には「逆送」(家庭裁判所から検察官へ送致)され、成人と同様の刑事裁判を受ける可能性が高くなります。 また、殺人や強盗致死傷などの事件では、実名報道も可能となり、少年事件における従来の「匿名保護」の考え方が変化しています。

このように、少年事件は「更生の機会を与える」ことを基本としながらも、特定少年に対しては「厳罰化」の流れが強まっています。本記事では、特定少年とは何か、逆送の仕組み、少年事件の流れについて詳しく解説していきます。

少年事件の基本的な流れ

少年事件は、一般的な刑事事件とは異なる流れで進みます。特に特定少年の場合、成人と同じ刑事裁判に進む可能性があり、その手続きの違いを理解することが重要です。ここでは、逮捕から最終的な処分までの流れをわかりやすく解説します。

① 逮捕

警察が事件を捜査し、犯罪の疑いがある特定少年を逮捕します。
逮捕後、警察署に連行されて取り調べを受けることになります。
48時間以内に、事件は検察庁へ送致されるか釈放されるかどうかが決定されます。

② 送致

逮捕された少年は、警察から検察へ事件が送られます。
少年事件では原則としてすべての事件を起訴しなければならないとされています。


家庭裁判所に送致 → 少年事件は家庭裁判所で審判されます。

③ 家庭裁判所での審理

家庭裁判所では、調査官が少年の生活環境や更生の可能性を調査します。事件の内容だけでなく、少年の成長環境や反省の有無なども考慮されます。

審理の間の身柄は以下のパターンがあります、

✅在宅事件→自宅で日常生活を送ることが可能です。

✅観護措置→少年鑑別所に収容されます。少年院送致の可能性がある事案や性非行の場合鑑別の必要性が高いとみられるケースが多いです。

④ 少年審判

少年審判は、成人の刑事裁判とは異なり、少年の更生を重視した手続きです。
家庭裁判所の裁判官が審理し、少年に適した処分を決めます。

ただし、特定少年は成人に近い扱いを受けるため、重大事件では家庭裁判所から地方裁判所へ逆送されるケースが増えています。

⑤ 処分決定

審判の結果、以下のような処分が下されます。

📌 不処分 → 問題なしと判断され、処分なしで終了。
📌 保護観察 → 自宅に戻れるが、保護司に定期的に指導を受ける必要あり。
📌 少年院送致 → 社会復帰のための教育を受けるため、少年院に収容。

📌児童自立支援施設等送致→非行性の進んでいない少年が送致される。
📌 逆送(刑事裁判へ移行) → 重大事件の場合、検察官に事件を戻し刑事裁判に移行。成人と同じ処分を受けます。

逆送の対象となる罪

・16歳以上の少年の時犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪

・18歳以上の少年(特定少年)の時犯した1年以上の懲役・禁錮にあたる罪

強盗罪・強制性交等罪・組織的詐欺罪など

特定少年とは?

「特定少年」とは、2022年4月に施行された少年法改正によって新たに設けられた区分で、事件当時に18歳と19歳の少年が対象です。興味深いことに、同じ2022年には民法の改正によって「成人年齢」が20歳から18歳に引き下げられましたが、少年法では依然として20歳未満が「少年」として扱われています。

成人年齢は18歳、でも少年法は20歳のまま?その理由とは

 

2022年の民法改正で、成人年齢が18歳に引き下げられた結果、18歳からは親の同意なしに契約を結んだり、クレジットカードを作ったりできるようになりました。選挙権も18歳から行使できます。しかし、少年法においては20歳未満は依然として「少年」として扱われます。
では、なぜ民法と少年法で扱いが異なるのでしょうか?

その理由のひとつは、少年法の目的が「更生と再教育」にあるためです。少年法は、犯罪を犯した少年に対して厳罰よりも教育や更生の機会を提供することを重視しています。成人年齢を18歳に引き下げても、精神的・社会的に未成熟な18歳・19歳の若者に対しては、更生の余地を残したいという立法趣旨があるのです。

また、凶悪犯罪の低年齢化や再犯率の高さを背景に、18歳・19歳の少年を「特定少年」として厳罰化する必要があったため、少年法の年齢は20歳未満のままとされています。特定少年に対しては、「逆走」によって成人と同様に厳しく処罰されるケースが増えているのも特徴です。

従来の少年法との違い: 厳罰化の背景と目的

 

少年法は本来、「少年の更生」を目的とし、刑罰よりも教育や保護処分を優先しています。しかし、特定少年に対しては、厳罰化の流れが強まっているのが現状です。
その背景には、次のような社会的な問題があります。

  1. 重大事件の低年齢化: 強盗や殺人などの重大犯罪を犯す少年の年齢が低下している。
  2. 再犯率の増加: 少年院を出た後に再び犯罪を犯す率が上昇している。
  3. 被害者の声: 少年だからといって軽い処罰では納得できないという被害者や遺族の声が強い。

これらの問題に対応するため、特定少年に対しては「刑罰の適用」と「社会的な制裁」を強化する方向にシフトしています。

特定少年に適用される厳罰化のポイント

特定少年に対しては、次のような厳罰化が進んでいます。

  1. 実名報道の解禁
    重大犯罪(殺人や強盗致死傷など)を犯した場合、マスコミによる実名や顔写真の報道が可能。
    これにより、社会的な制裁が強まり、更生の機会が奪われるのではないかという批判もあります。

  2. 刑事裁判での審理
    特定少年は一定の条件下で家庭裁判所から検察官に事件が戻され(逆走)され、成人と同様の刑事裁判で審理されます。
    これにより、懲役刑などの重い刑罰が科される可能性が高まります。

  3. 刑の長期化:
    少年法では通常、少年院での収容期間が限られていますが、特定少年に関しては刑の長期化や懲役刑の可能性が拡大されています。
    これにより、再犯防止を図る狙いがありますが、更生支援の体制が不十分だとの指摘も。

特定少年と成人の処遇の違い: 実はこれだけある!

特定少年は成人とほぼ同様の処遇を受けますが、実は完全に同じわけではありません。
たとえば、次のような違いがあります。

  • 執行猶予の扱い:
    特定少年には、成人と比べて執行猶予が付きやすい傾向があります。これには、未成熟な年齢を考慮して再更生の機会を与えようとする意図があります。

  • 収容施設:
    特定少年は、原則として少年院に収容されますが、逆走の場合は刑務所への収容も検討されます。
    ただし、刑務所内でも特別区分で扱われ、教育や更生プログラムが提供されることが多いです。

  • 記録の扱い:
    成人の場合、前科は一生消えませんが、特定少年は条件を満たせば一定期間後に記録が消去されます。
    これにより、社会復帰への配慮がされていますが、再犯した場合は当然その限りではありません。

 

特定少年は成人と同様に厳しい処遇を受けることになりました。
しかし、全く「守られていない」というわけではなく、一定の保護や更生のための措置も残されています。

【まとめ】

2022年には民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられましたが、少年法では依然として20歳未満が「少年」として扱われています。この違いは、「更生の機会を与えるべきか、それとも厳罰化すべきか」という議論の中で生まれたものです。

特定少年に対する最大の変化は、「逆送」の適用範囲が広がったことです。従来、少年事件は家庭裁判所で審理され、保護処分(少年院送致や保護観察など)が主な処分でした。しかし、重大犯罪(殺人・強盗致死傷など)を犯した場合、家庭裁判所から検察官へ逆送され、成人と同じ刑事裁判を受けることになります

このような厳罰化の背景には、少年犯罪の低年齢化や再犯率の増加、被害者の権利意識の高まりがあります。しかし、厳罰化が進む一方で、特定少年の更生支援の仕組みが十分に整っていないという課題も指摘されています。今後の少年法改正の議論では、厳罰と更生のバランスをどう取るべきかが大きなテーマとなるでしょう。

「お子さんの未来を守るために」取り調べには弁護士の同行を!

警察や検察の取り調べには弁護士を同行させることをお勧めします。

取り調べの際の証言はその後の処分にも影響を及ぼすため、取り調べの発言や態度、悩みや不安などについても寄り添い、不処分を目指す必要があります。

また、調査官や裁判官に対し意見書などを提出し、早期釈放や処分について交渉することもできます。

少年事件では弁護士の動き方によって処分が変わる可能性があり、また少年の今後の更生や社会復帰に関わる重要な問題ですので、少年事件に精通した弁護士を選びましょう。

 

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